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尊は、自分からはほとんどキスをしなかった。 仕事で唇を酷使しているから常に痛いと言って、プライベートではあまりしてくれない。 尊のキスは、視界が揺らいで、とろけて、腰が粉々になってしまう。 愛されている、と勘違いさせるキス。 愛してくれる、と期待させるキス。 全身がゾワゾワとして声が抑えられない、眉間に皺が寄ってしまう、そんなキス。やらかく、優しくて、相手の体を啄む。トロトロになって、気持ちよくて、何も考えられなくなった。 相手のことが本当に好きだったら、身体中を愛
≪ 17.蛇男 尊(ハル/海)|女風で出会った私のパートナー。 シンジ|乱交パーティーの主催者。作曲家。 ツユリ|全身タトゥー、スプリットタンの蛇男。尊の知り合い。 昔から緊縛ショーや見せ物小屋に関わってもいたから、こういう雰囲気は好きだった。緊縛は美しいし、ツユリも美しい。 二人とも、かなり酒を飲んでいたと思う。 尊にもっと私を見て欲しくて、私とツユリはどんどんエスカレートしていった。長く伸ばした髪が、汗ばんだ肌にぴったりと纏わりつく。 縄がいくら肉体に食い込んで
≪ 16. 人は人を捨てられないのに。 初めてハプニングバーに行ったのは、遅い夏の終わりだった。 その頃私は、もうほとんどの時間を新宿で過ごしていたと思う。もう何度も尊の部屋に泊まって、一緒にテレビを見て、私が夕飯を作ったりした。 尊は、若い頃からハプバー通いが激しかったらしい。パートナーがいたつい最近まで、よく足を運んでいたと言う。クローズドパーティの仲間にも、そういう場所で出会ったようだった。 行きつけだった場所でハロウィンパーティのイベントがあって、それが私のハ