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POM

とても綺麗とは言えないオープンカーで首都高を走りながらこの東京を制した気持ちだった

風が心地よく精神を洗い流して過去へと振り返ることへの背中を押してくれた

思い返せばこのたった一年間で様々なことが起きて毎日穏やかではない日が続いた

この道で正しかったのか自問自答しながら目的の場所まで車を走らせる


少年編

多分一般的に言えば甘やかされて育ってきた
とは言え欲しいものがなんでも手に入るわけでもなく
どちらかといえば貧乏な家庭で友達の家に行くと楽しいおもちゃがあったり当たり前のようにお菓子が出てくることがうらやましいとすら思っていた

家ではお菓子なんてないし飲みものもジュースではなく麦茶も自分でポットに入れて沸かして飲むやつ

でもなぜかいつでも自分に自信があって近所の年が近いガキに慕われて大人に迷惑なことばっかりやってた

心情はこう

自分達が楽しければよくて刺激が欲しくて全く意味もない迷惑なことを最高の遊びだと思っていた

自己中心的なスキルがRPGにあったならカンストしてたんじゃないかとさえ思えるほどだ

いつも集まるのはどっちかというと陰キャっぽい兄弟と若干思考回路がはじけ飛んでいる年が一個下のSHINという人物

今日もいつも見たいに学校が終わってみんなで集まっていたんだ

そしたらSHINがこう言った

SHIN「川作らない?」

自「川?」

SHIN「そう川」

自「いいよ」

何が必要か考えた結果必要なものが周りにあるもので足りそうだったので早速用意して川作りに取り掛かった
川ができたから何かもらえるというわけでもないんだが僕たちは自分の名誉の為に川作りに全力を注いだ

取り掛かるわけなんだが早速問題が起きて
川って言ったら水が必要なんだけど肝心の水を家の蛇口から引っ張るはずがホースが全然足りない
でも川ってずっと水が流れている状態だから急いでホースを延長する方法を考える
考えた結果ビニール袋に入れて一時的に供給することにした
今考えるとえぐいぐらいの労力を使うけど仕方ない僕たちには今、川を作るという己の名誉にかけた一世一代の大工事をしているだから
ホースを限界まで伸ばし袋に水を入れてSHINがガンダッシュでこっちまで入れた水の半分を垂れ流しながら走ってきて川を流す予定の土の上に水を集める
まずはダムを作ることが最優先だった
僕たち現場監督の考えはこうだった
一旦土の上にダムを作り
流れる道を作ったところでダムの一部に穴を空け少量でもいいから水が流れるだけの容量を貯蓄しておくという事
また近くに竹があったので竹の上で水を走らせダムに供給するというミッションもあったがこれは竹を安定させることができなくて水という資源を無駄にしただけで失敗に終わった
またダムを作っているときの水も土に吸われて流れる道を作っている途中でたんまりあった水が水たまりぐらいの深さになった時点で
川を作るという壮大なプロジェクトを一旦停止して会議を行った
会議で現実離れした発言もあったが着地点はこうだ
ダムの強度を上げようという事
その辺に落ちていた葉っぱや木を敷き詰めたりして土に水が吸われていくのを阻止することを開始した
昼から始めたこの作業も気が付けば15時を過ぎていよいよ2時間も経てば夕日が出てくるころだ
本日中に川を完成させねばという何とも単細胞な僕たちはすごく焦っていた
運が味方したのか敷き詰め作戦は成功し無事にそれらしきダムを作ることができて夕方には陰キャ兄弟も合流し少し手伝ってもらえばダムから水が流れるのを披露することができるのではないかというところまできていた

理想の形としてはダムから流れた水が緩やかな傾斜で下のプールみたいなところにどんどん溜まっていってそこが溢れたらまた別のプールに流れていって最終的には二つのプールに水が溜まりそれで終了といったのが理想

ふと思い返すと川じゃなくてプールに水を貯めることにシフトチェンジしていたがその疑問に触れたらいけないとわかっていたのか現場監督に指示はしてこなかった
僕はこの時暗黙の了解の意味がなんとなく分かった気がしていた

夕日が出てきてオレンジジュースのような空になった時僕たちはダムの水を放出することを開始した

土で固められたダムを細い木という鍵を使いダムの水を放出させるための扉を開放した

ちょろちょろと水が流れだして2、3分だろうか川を見ることができた
それからプールが形成され僕たちの名誉の為のプロジェクトは大成功で幕を閉じた

夕日が映画の重要なシーンかのような雰囲気を演出してくれ僕たちの気持ちはまさにエンドロールに名前が載っているかのような達成感だった


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