リアリティショーにおけるマスメディア考

《序》

 初めに、女子プロレスラーであった木村花さんへ、心からのお悔やみを申し上げますとともに、傷つけられた周りのみなさまの心が、少しでも和らぎますことを、深くお祈りいたします(以下”花さん”と記述します)。
花さんの死をきっかけにして巷で「誹謗中傷」の文字が飛び交う今、改めてマスメディアのあり方・姿勢について考えを深めようと思います。

《わたしの立場》

 まず、わたしの立場をあらかじめ記しておきます。
花さんが出演していたドラマ「テラスハウス」は、タイトルを耳にする程度で、彼女のことも「リアリティショー」という言葉も今回初めて知りました。もちろんドラマも見ていません。
なので、この大騒ぎに「彼女は一体なにをしたの?」「そんなに酷いこと言われているの?」と純粋な疑問を持った次第です。

《テラスハウスとは》

番組の主人公は、“どこにでもいそう”だけど“手の届かない”男女6人。舞台は、今、若者の間で話題になっている「シェアハウス」。6人は、海辺にたたずむ一軒の家で、縁もゆかりもない同士で共同生活を始める。そのシェアハウスの様子を四六時中カメラで追いかけ、彼らの生活にあふれる、誰もが憧れるようなキラキラした青春・友情・恋愛・夢、そして、嫉妬・挫折といった、リアリティショーならではのさまざまなドラマを、すべて記録していく番組。フジテレビで毎週金曜23:00~23:30の間に放送中。

引用:テラスハウス オフィシャルサイト 
(ざっと文章を探しましたが、それらしい文が見当たりません)
NETFLIXで先行配信され、その後、フジテレビの地上波で放送する形態をとっています(現在休止中)。
5月27日、正式に2019-2020の制作が中止となった模様です。画像はテラスハウスTOKYO2019-2020のトップページです(画像クリックでサイトへ飛べます)。

画像1

(みなさん仰ってますが、2019-2020に関しましては…って…。しっかり検証をして然るべき対策をするといったコメントが見当たりません…。)

《リアリティショーとは》

事前の台本や演出のない、現実に起こっている予測不可能で困難な状況に、よく知られたプロの俳優などではない一般人出演者たち(無名の芸能人なども含む)が直面するありさまを、ドキュメンタリーやドラマのように楽しめると謳ったテレビ番組のジャンル。視聴者が参加する双方向番組の一種で、1990年代末以降、世界各地のテレビを席巻する人気を博している。

引用:ウィキペディア「リアリティ番組
自分で持っている紙の辞書は古すぎなので、ネットで検索してみました。goo辞書、weblio辞書どちらも上記のwikiを載せています。

 非常に個人的なことですが、このページを読んで、自分が苦手だなぁと思っていた番組の数々が、ひっくるめてリアリティショーという一つのジャンルだったことを改めて認識しました(単にバラエティ全般が苦手なだけかも…汗)。元から恋愛モノは観ませんし、wikiに挙げられていた作品全般、なんとなく触手が伸びていませんでした。
 (もちろんそれらが好きなみなさまを決して否定しません!
映画などと同じで、好きなジャンル、苦手なジャンルなど、本当に人それぞれに好みがあって、それぞれに楽しんでもらえばいいと思っています。
恋愛モノのドキドキ、ハラハラ、ハッピーエンドをなにより共感したい!と思う気持ちはありますものね♪)

 それとは別に、この世界に入ることを望んで磨いてきた玄人さんよりも、わたしたちと同じ世界にいる街の素人さん(や准素人さん?)のリアクションが、予想もできないほど楽しいものもあります。
日本テレビで放送される「月曜から夜ふかし」で有名になった桐谷広人さん(70)、テレビ東京の「YOUは何しに日本へ」に出た70年代のニューミュージック好きなスティーブさんなど。視聴者は、自転車で駆けずり回って優待券を使い果たそうとする桐谷さんに笑い、レアなレコードを買い漁るスティーブさんの達成感を共有し、感動しました。
そのときも「桐谷さん」とか「大貫妙子」といった言葉がトレンドになったことを覚えています。
 反面、負の連鎖が起きてしまったのが今回の一件でした。

《花さん命を絶たれる》

 女子プロレスラーであり上記の恋愛リアリティショー「テラスハウス」に出演していた木村花さん(22)が、5月23日未明、心肺停止状態で発見され、お亡くなりになりました。そのきっかけが、番組内での彼女に対するSNSでの誹謗中傷であったとされています。番組では、彼女はいわゆる「ヒール」(悪役)と取られる言動をとっていたようです。
 はじめに書いたとおり、わたしは彼女が何をしたのか知りませんでした。ネットを検索したものの、具体的なことが分からずじまいでした。
 それについて、同じnote内の crkrさん が「木村花さんの死去に関する報道およびテラスハウスの構造的問題、社会的反応に関する個人的感想」としてドラマの詳細とお考えを記して下さっています。ここで花さんがどんなことをした(言った)のかを知りました。(閲覧の際は、何卒ご配慮下さいますよう、お願いいたします。)

 作品全体のつくりを考えて、善悪や正誤を判断することは、わたしにはできません。言うこともできません。
でも、彼女のTwitterアカウントは昨日はまだ公開されていて、そこに書き込まれていたコメントを見て、目を覆ってしまいました。二十歳そこそこの若い女性がたった一人で受け止められるようなものではありません。
わたし自身、Twitterで一人でもきつい言葉を浴びせられただけで気持ちが凹んでしまいます。
彼女が受けた心の傷はいかばかりでありましょう。

《SNSだけ?》

 では、原因は「ネット」や「SNS」だけにあるのでしょうか。
今回は、どのニュースも口を揃えて「インターネット、SNSで誹謗中傷!」と、ことさらネットであることが強調されています。
はたして制作者側はどうでしょうか。
株式会社サイバーエージェント執行役員、AbemaTV編成制作本部制作局長である谷口達彦氏へのインタビュー記事を読んでみました。

「Z世代に向けたコンテンツに重要なのは、夢、友情、金、恋愛…など、若者たちの根底にある“欲”や“時流”の中心を的確に捉え、心をつかむような企画や、思わず口にしたくなる話題として昇華させていくことだと思います」
「これはONE MEDIAの明石ガクトさんが仰っていた言葉をお借りしているのですが、「鮮度と強度のハイブリッド」は非常に重要だと考えています。たとえば、AbemaTVの中で最も人気が高い『オオカミ』シリーズ。これは恋愛リアリティーショーですが、キャストの1人に“絶対に恋愛をしない嘘つき”を忍ばせています。何を狙ったかというと、SNS上で“オオカミは誰か”と考察が生まれ、感想を思わずつぶやきたくなること。そしてその話題を中心に議論が巻き起こる。ここが“強度”ですよね。そして配信がスタートしたその瞬間からまた新しい考察や読みがシェアされ、目まぐるしく展開していく。情報の“鮮度”もこういった形で生み出されているように思います」

AbemaTVが「オリジナルコンテンツ製作」で掴んだヒットの法則|AbemaTV 谷口達彦 Webページ キャリアハック 記事より一部引用

 谷口氏は、Abemaでヒット作を生み出すために、なにを念頭にコンテンツ制作を手掛けているのか答えておられます。
Z世代(おおよそ1990年後半~2000年生まれ)…ちょうど15~20歳くらいでしょうか。読んでいると、若者をターゲットに、彼らの心の底に隠れた感情を揺り動かし、ネットを巻き込んで「バズ」らせようとしているように感じます。

 「物語」は、フィクションであるなしに関わらず、それを見ている側が「誰か」や「何か」に多かれ少なかれ感情移入してしまうものです。そしてそれを表現することは、今に始まったことではありません。新聞・雑誌の読者投稿、映画館のレビューにブログetc...存在はしていました。
SNSはそれに加えて、スピードと拡散力が増した媒体といえます。もちろんそれだけに、与える衝撃も受ける衝撃も大きいと推測されます。

 そこで問題は、制作者側は発言ツールを持つ視聴者たちを意図的に煽らなかったか、盛り上げようと より過激な反応を起こさせなかったか、です。
番組内では、山里亮太さんの毒のあるツッコミや、YOUさんの辛口発言がみられたそうです。そういった「味付け」で、視聴者にハウスの住人それぞれに与えるイメージ操作をしてはいなかったかどうか。
 さらに言えば「炎上」で興味を持った人たちの検索での「アクセス稼ぎ」、動画の「再生回数上げ」をも狙っていたとすれば、一層悪質と言えるかもしれません。

《終わりに》

 先に書きましたが、2019-2020の制作は中止になりました。
しかし決して「なりました」で済ませてはなりません。
テレビ局、制作側は、改めて真摯に現実を受け止め、反省し、検証し、出演者のサポートを万全にした上で、正式に公表することを願います。
つぎを作るのは、そのあとの話です。

 1900年中期ごろから始まったと言われるリアリティショー。
その間に多くの事件を起こし、自殺者を生み出しても、時間が経てば再び制作される…それだけ作る側も観る側も惹きつける、魅力的なジャンルなのでしょう。今後も作られ続けると思います。
であれば、なお一層、出演に関わったキャストの心身の安全をしっかり確保しながら制作をしてほしく思います。

 これはフジテレビに限りません。
エンターテイメントに関わるすべての人たちが、常に考え、真剣に取り組む必要があるのではないでしょうか

最後に、改めて 木村花さんのご冥福を 心よりお祈り申し上げます。

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