デブでブスの令嬢は英雄に求愛される 第5話
彼女は自身をレーゼルバールに住む貴族の内の一つアイルーン家の娘、アレッタ・アイルーンと名乗った。
「どうしてこんな場所にいたの?」
その問いに彼女は俯いた。それにジュリアはため息をつく。
しっとりとしめって地面に腰を落とし、俯く姿は可憐だ。けれどその態度は頑なで、ありふれた言葉を掛けてもその固い口を開いてくれるとは思えなかった。
(さて、どうしたものか……)
ジュリアは周囲を見渡す。
辺りには彼女が逃げ出す際に投げ出してしまったと思しき小さなバッグが転がってい