ベースマン、ゆーき登場~私のバンド履歴書②

   

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    とにかく、メンバーを集めなければ…。僕たちは翌週に再度集まり、腕組みをしながら考えていた。そしてある致命的な僕らの共通点に気が付いた。「友達が少ない」。そう、少ないのである。やっぱりバンドをやる上で、テクニックどうこうよりも「気が合うか」を重視したい。人とコミュニケーションを取る上で「しんどがり」な僕らの選択肢はそうとう狭められていた。「○○は?」「えー、俺苦手」、「△△は?」「誰それ?」みたいなやり取りがしばらく続いた後、ふと、卓球部時代に友達だった丸刈り坊主のことが頭に浮かんだ。「ゆーきは?」「おぉ!俺そういや中学3年間ずっと一緒やった!」と意外にまっさんも乗り気になった。

 ゆーきか…。その時のイメージでは極度の人見知りで、無愛想で、超力持ちで丸坊主…けれどそれが認められる不思議な存在感のある奴、というものだった。今は潰れてもうない「桃太郎」というゲームショップですれ違った時に交わした「何してん?」「シャズナのアルバム探してんねん」という会話を思い出した。「シャズナな!俺好きやわ!」とまっさんはますます乗り気になっていった。

 さっそくと言うか、「お前がやれや!」とかなり擦り付け合った後に僕が誘いの電話をすることとなった。当時は二人とも携帯電話を持っておらず、クラス名簿を見て家にかけた。「はい、ピーです」。おかんが出た。「ピー」というところには苗字が入るはずだが混線したのか、本当に「ピー」と入った。笑いを全身の力でこらえながら、「あの、ゆーき君いますか?」と何とか絞り出した。

 「もしもし?」。普段通り不機嫌な様子でゆーきが電話に出た。久しぶり、と挨拶もそこそこに、「バンドやらへん?」と誘った。「良いよ」とあっさり受けた。「えぇ!?ほんま!!」「て言うか今からいこか?」

 程なくしてゆーきが現れた。久々で少しテレもあったが、何とか打ち解けることができた。「バンドとか前から興味あってん」などなど会話しつつ、パート決めの話になった。「今ギター2人いるからベースやってくれへん?」「良いよ」。この時にゆーきが10年以上経った今でもベースを続けているなんて予想もできなかった。僕がベースを選び、彼にギターを依頼していたら?などなどたまに考えて楽しくなることもある。そもそも僕がベースを選んでいたら、彼を呼ぶこともなかったかも知れない。バンドはそうした偶然と必然が絡まりあっているものなのだ(解散したけど)。

 次はドラムとボーカルだ!とりあえずゆーきはベースを買いなさい!

 (まだまだつづく)

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