その日は突然やってきた~私のバンド履歴書①

高校一年の春、僕は空手部に入り桜並木をウキウキした気分で歩いていた。ポカポカとした陽気は陰鬱だった中学時代を消毒してくれているようで、何でもできる気がしていた。実際、僕が入学した高校はいわゆる「高校デビュー」という言葉を体現している生徒が多く、皆思い思いのオシャレを始めていた。

 部活動が本格化する直前の日曜日、僕は小学時代からの友達、“まっさん”の家にいた。彼は高校には行かない事にしたようだった。TVゲームをしたり、よもや話をしたり…、瞬く間に時間は過ぎて行った。話が一段落した時、突然まっさんが「3ミーって小学校の時にギター弾いてたよな」と話し出した。確かに僕は小学校の時からBOΦWYに憧れ、布袋さんよろしくギターを弾いていた。けれどその時はすでにもう随分と衰えていた。

 「なぁ、バンドやろうや」。一気呵成に攻めてくるまっさんの勧誘についつい「良いよ」と言ってしまった。「よっしゃー!」とまっさんのテンションは一気に上がり、「俺、ギターやりたいねん!3ミーもギターやんな!?」と喜んでいた。布袋の雄姿を思い出した僕は、「おう」と応えた。

 まずはバンドメンバーを集めなければ。僕はライブする自分の姿を想像して帰路についた。

(当然つづく) 

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