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繁盛の秘密

 俺は町工場で働くしがない中年だ。機械の使い方などはもうとっくに覚えており、今やルーティンワークとなっている。
 そんな俺でも趣味はある。サイクリングだ。知らない街までいって、そこの宿に泊まり、また帰るというのが一番の気晴らしだ。そして、今日はどのルートを通ろうかと考えながら自転車を漕ぐ。

 夕日が沈みかけたとき、ある民宿を見つけた。よし、ここに泊まろうと自転車を置いて民宿の玄関を開く。
 「すみません」 
 「いらっしゃいませ」
 女将と思しき老人は丁寧にお辞儀をした。
 「あの、今日泊まる部屋はありますか」
 「1部屋だけならありますが…」 
 「じゃあ、そこで」
 俺は、その部屋に泊まることにした。
 中は普通の民宿と変わらずテーブルと椅子、敷き布団があった。
 「なにかあればいつでもどうぞ」
 「分かりました」
 女将が戸を閉じたあと、荷物を置いてゆっくりと背伸びをした。
 「意外といいとこだな」
 部屋を見渡すと、ふと変なことに気がついた。
 部屋の隅になにか像が置いてあるのだ。
 「何だろう」
 気になって見てみると、それは和風の部屋には似つかわしくない銅像だった。調べてみるとファティマの聖母と呼ばれるものだった。
 「触っていいのか」
 その銅像に触れた瞬間、ある言葉が脳内に響いた。

 「…それが今日の⚫⚫重工の発展に繋がっているということですね」
 「はい、あれは神の啓示としか思えませんでした。言葉通りに行ったところ売上がのびて、今工場を新しく作っているところです」
 「ありがとうございました。今日のゲストは…」

 実はもう1つからくりがあるが、それを彼はまだ知らない。


No.9399ファティマの聖母
No.6525民宿
No.3460町工場

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