Diorama
「駆け込み乗車はお止めください」
アナウンスが駅構内に響く。そこまで急いでいなかった俺はゆっくりと構内を歩く。先程買った単三電池をカバンにしまい込み、目的の電車が来るまで待った。2,3分経った頃だろうか、メロディとともに到着のアナウンスが響く。
「黄色い線までお下がりください」
電車のドアが開く。
俺は迷わず乗った。
家に帰ったあと、自分の部屋に籠もった。目的はこれだ。
「ええっと、あとは電池を入れれば…」
買ってきた単三電池を輸送船のプラモデルに装着した。
「これで動くはずだ」
そして輸送船を海に当たる場所に置く。
俺の趣味はジオラマ作成。自分のいる街をジオラマとして作っていた。ただなにか足りないと感じていたため輸送船のプラモデルを買ったのだ。ただし電池が必要ということを失念していたので、買ってきて試してみよう、と思った次第である。
輸送船はゆっくりと海に当たる場所を動く。まるで本物のように。
「そういえば…」
こんな話を思い出した。
この世界はだれかのジオラマ、あるいは仮想空間であると。
「これもその類なのかもな」
輸送船はゆっくりと動く。
すると、輸送船は海を超え市街地方面に動き出した。
「うわあ、ちょっとこっちじゃないって!」
俺は輸送船を持ち上げて、海の場所へと戻した。
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「市街地に船が出現」
「大きな手のようなものが船を取っていった。あれはきっと神の手だ」
「被害状況は…」
これは同日のある都市のニュースである。
No.4219単三電池
No.4423輸送船
No.4290駆け込み乗車
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