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時間泥棒の独白、或いは幻影世界の舞台裏―あとがきと記録を兼ねたもの

――Music:?

やあ、また会ったね。こんな所まで、わざわざ来てくれてありがとう。ひとひらの幻の世界、少しでもお楽しみ頂けただろうか?
そう、「ただここにいるだけの存在」というのは嘘、とまでは言わないにしても正確ではないんだ。あの幻の世界において、現の者であるところの私が上がる舞台はないので、ただあの場にいただけではあるのだけれどね。あの幻の世界を、創ったのは私。訪れた人を幻の世界に一時閉じ込めては現に放り出す時間泥棒ってわけさ。

ここにはそんな私と貴方だけ。
ここから先で語るのはどこまでも現の話だ。物語も幻覚もない、単なる記録として綴っていく。
それでもいい?

……ありがとう。では私も、この役を降りるとしよう。端役だけど、楽しかったよ。記録の方が長くなるかも知れないが、気の向く限りお付き合い頂けたら幸いだ。


さて、そんなわけでこんばんは。りるです。

拙著、「千夜一夜と一葉の幻」をお手に取って頂き、誠にありがとうございます。手元に来たときはあまりのコンパクトさに(これに500円とるのか…………?)と思っておりましたが、たくさんの方に読んで頂けて、素直に嬉しいです。感想もたくさん頂き、見かけてはいいねとブクマして何度も読んで反芻して溶けています。本当にありがとうございます。

ここからは、この本ができるまでのよもやま話をつらつらと書き残していこうと思います。こういうの読むの好きな諸兄はどうぞお付き合いください。

*そもそもの、というかはじまりの話

そもそも、で言うと20年の6月頃に唐突にTwitterで遊び始めた#私のたまてばこの中身 SSです。何故これを始めたのか、はもう覚えていません。きっと何かのタイミングでたまてばこの楽曲を聴いた際に幻覚が見えたんだと思います。このはりねずみそういういきものなのだ。これを数作分続けてみてはハッシュタグで投げて(たまに本人に見つかって喚いたり)、をしていたわけです。つまりこのタグで検索すると修正前のがあります。見ても見なくてもいいよ。で、それはそれとして、昨年の19の煌き……以前から書店の常連で仲良くさせてもらっているフォロワーさん(以下人外)から、ねえねえりるさん本書かないの~???されていたのもあり、4つくらい溜まった頃からもう少し頑張ったらうまいことまとまんないかなあとはぼんやり思っていました。その時点で脳内にはOkinawaとall you have loved×Alisiaで書きたい構想の種はあったので。

決定打は、2つ。
ゆうりさんの異類婚姻譚イベ大勝利と、人外合同誌が実現に向けてにわかに動き出したことです。

前者でイベントを懸命に走っているゆうりさんを見て私もなんか頑張りたいなあと思ったし、後者の勢いと、私は限界感情は持ち合わせていないな、と思った時に、やるか。と思ったわけです。
ただ私はこれを自分の中だけで決めるとどこかで気力や精神が死んだときに平気で(もないけど、きっとそれすら誰にも言わず)無かったことにするだろうということは容易に想定できたのでツイートしました。
それがこれ

なんも決まってないけどやるよ!!!!!!!しました。
そう。このタイミングでもうサークル申請の1次受付が始まっていて(なんなら終わりかけてた)、りかいさんが合同誌の音頭をとってミレイちゃんと合同サークル申請して「やるよ!」ってしてたんです。なので、本出したら置いてくれますかって聞いて秒で快諾してもらって、退路を絶った次第です。そうして、やっと動き出したのでした。

*主題や装丁の話

本の形にするのであれば、決めねばならぬことがたくさんあるのだ……。

(そんなノリはあんまり無かった)

ハイ。中身の前に外側の話をしますね。
今回「千夜一夜と一葉の幻」というタイトルをつけましたが、最初は「一葉の幻」だけでした。
この「一葉」という言葉もちょっと探した記憶があります。「一片」でも良かったんですけどゆうりさんがMusicVketで限定頒布していた「一片のほほえみ」という楽曲とかなり雰囲気が似てしまうのでボツにしました。(その楽曲に寄せたいわけではなかったので)
で、このフレーズは固定。副題として「うたたね書店二次創作掌編集」みたいなのを書こうとしてたんですけどなんか収まり悪くて。それで考えていた時に、ふとしたタイミングで「千夜一夜」の存在を思い出しました。これも明確なきっかけは覚えていません。この時期に配信でもあったんじゃないかな。ハッシュタグつけてツイートしてたら繋がった可能性はありますね。そんな訳で、「千夜一夜と一葉の幻」というタイトルに落ち着きました。読み方はお任せします。そこにも解釈が宿ると思うので。(とはいえ「ひとひら」、「ひとは」あたりじゃないかなとは思う)

そして、表紙や裏表紙等々ですが、このはりねずみマジでセンスがないのであちこち探し回りました。最初Camvaでそれっぽいの作ろうとしたんですけど死ぬほどダサくてスマホを投げそうになり、おもむろにpixivで同人誌素材と検索したら今回の神であるてんばる様のページに行き着いたのです。

たぶんここ漁ればあらゆる素材が入手できるんじゃないかな? くらいまである。とりあえず今回の本を彩ってくださったのは全部こちらの素材たちです。有難い。表紙とかもう見つけた瞬間これ一択でした。色改変程度であれば全然OKとのことでしたので表紙と裏表紙、挿絵として使用している素材は色をいじっています。
あとタイトルデザイン素材。まじで助かった。夜って文字が飾り付きと飾りないので2パターンあるの。助かった。一葉の幻にかかってる方の飾りはぐるぐるして夜のそれにくっつけました。脳筋。タイトルの色味は真鍮と金の間っぽくしたかったのでなんかいろいろした(もう何も覚えていない)。もうちょいしっかりした本にできたら箔押しとかして遊びたさもあったなぁと後から思っていたりします。箔押し好きなんだ。
で、文庫本っぽくしたかったので扉絵もそれっぽい素材を借りました。レーベル名「人外文庫」はりかいさんから借りました。初出は昨年の「また夢で逢いましょう」なので。あのユーモア大好きだったしせっかくならとお願いしたらこちらも即OK頂けてありがたい限り。わーい!って入れています。
裏表紙が真っ白になるのは嫌だったので別の同人誌表紙素材から持ってきました。フィーリングでチョイスして、色味を表紙に合わせたくらいかな。目次にフレーム必要だったかなぁと思わなくもありませんでしたが、まあいいとしましょう。
外見の話はそんなところかな。本編の話を細々する前に、共通して言える話でもしましょうか。

*全体を通してざっくり言えること

見えている幻覚には、明確に骨子があります。
勿論音楽のイメージは言うまでもありませんが、アウトプットする上で組み立てたものを見るとタイトルが結構大きな要素を占めていて、あとはMVやFANBOXでの公開情報などが要素としてある感じ。なので、楽曲はもうマストで聴いてほしいし、出来ればMV等々も見てほしいのです。そうしてみんな千歳ゆうりさんの世界観に、うたたね書店にハマっていけばいいんだ。
…………もうハマってる? それは重畳。どうぞそのままどこまでも深みへ。

では、ここからは各編のお話を、できる範囲で。頭から行きましょう。
……そうだ、お話のタイトルですが、書いた後か、方向性が固まった後に決めています。これはどういうお話か、が決まらないとつけられないんですよね。
また、基本的に掲載順に作為はありません。大体書いた順。例外が、これだけ。

*avant. ―the thief

これ、元々は入れるつもりは愚か、書くつもりもありませんでした。
でも、久しぶりにたまてばこβの前身である木村牡丹sound best vol.1を聴いたときに、この曲の、短い中に詰められたわくわく感が楽しくなって。
アバンとして、幻の世界に入っていく前にちょっとした演出になればいいかなあと思って書きました。このnoteの「時間泥棒」はここから取っています。ノリで書いたものですが、折角物語の、幻の世界に誘うならここから線引きをしようと思ったので目次の前に入れています。素敵な扉の素材たすかる。
で、扉を開けていただけたら、いざ本編へ。

*黄昏前と非日常 ―Afternoon train

スタートがこれなのは、タイトルと楽曲の雰囲気でふわっと幻覚が見えたんだと思います。アルバムの最初の楽曲って印象に残るじゃないですか。多分そんな感じ。
twitterに投げた時と本とでは主人公というか「僕」の立ち位置が違いますね。最初はこの無人駅の利用者くらいの想定だったんだけど、じゃあ電車乗ってどこいくねんってなったので初めて来てもらいました。一人旅の最中くらいのイメージでいます。この駅の利用すら小さな非日常で、そこで出会うちょっと大きめな非日常、みたいな。タイトルとはAfternoonですが、午後ならええやろ!って言いながら夕刻にしました()夕暮れ、好きなんです。
一時いっしょの夕暮れを過ごした彼女は、いったいどこの誰で、どこから来て、どこへ帰るんでしょうね。

*千歳ゆうとの黙考 ―「寝ないの?  ゆうと」「……姉さんこそ」

これ、確か最初にタイトルつけた時は「達観」だったと思います。タイトルというかファイル名みたいな感覚でノリと雰囲気だけでつけた。

でも本にするってなった時に達観は違うよなあと思い、これも言葉を探しました。表舞台には滅多に出てこないけど、ゆうりさんのことをいつも見てくれているし気遣ってくれている。言葉にしなくても考えていることがたくさんあるイメージだったので「黙考」をチョイスしました。
これはちょっとした表現の変更以外そこまで修正をしていません。楽曲タイトルがここまで明確であったことと曲の雰囲気から見た、ゆうとくんの部屋で、ゆうとくんのすぐ近くで、ひたすら作曲をしているゆうりさん概念という幻覚です。「集中できない時はゆうとの部屋で作業する」みたいな話をたまにしている気がしたので書きました。
何があったかは分からないけど、姉の様子から何かがあったことは分かる。そんな時は口も手も出さないけど、見守ることはする。そんな幻覚をゆうとくんに見ています。そんな話。

*夢で現で、もしまた会えたら ―Slumber

Twitterで何曲か幻覚見れそうなの挙げて、ノリでアンケートとったうちの1つですね。オルゴール楽曲なので、オルゴールが大事なものになるような。穏やかだけど寂しさもあるような、そんな雰囲気で書いていました。夢の中で流れていた曲はこれじゃないかもしれないし、これかもしれない。そんな感じ。タイトルは多分本当に何も考えなかったんだろうなと言うくらい決定までのルートを覚えていません。ゆめでもしーあえーたらー、すてきなこーとねー♪のノリはあったかもしれないしそこに「夢と現の間」を噛ませたかったのかもしれない。雰囲気で決めています。

*真夜中の灯 ―TAROT

タイトルの読み方に好みが出るシリーズ(だと思ってる)みなさんなんて読んでました?私は「ともしび」ですがこれで固定をする必要はありません。お好みで。

これは最初に真夜中のタロット館に救われるという方向性だけ決めて、あとは肉付けをした……んですけど、ド頭が社畜すぎて社畜系人外の共感を呼んだり心配されたりとちょっとした問題作になりました(?)
これも、装丁上綺麗に収めるのとちょっとした表現の引っかかり以外、大きく修正はしていません。これ書いた後にゆうりさんがどこかの企画に出す音楽動画を作るのにお着替えして素敵な写真を撮っていらっしゃったTAROTのMVを見てはりねずみは死にました。公式からの供給。いやこっちのは誰だっていいんですけどね口元しか分からないので。
深夜に出会った灯りが、真っ暗に思えた先を照らす灯火になればいいな。という感じのお話です。

(ちょっと寄り道……ゆるっと南国一人旅 ―Okinawa1-4)

今回の書下ろし枠にして毛色が違いすぎて合同誌行きになったやつ。

Okinawa、4曲あるので4つ書けるなーと思っていて、これはここで、こっちはこれで……としていたのを組み合わせたら一人旅していました。
最初は日記にしようと思って「旅日記」としたんですけど音楽があることによる臨場感みたいなものを活かすとなるとその場で思ったことを書く方だな。と思ったので脳内だけうるさい旅人になっています。
沖縄、いつか行ってみたい。

*僕の、僕達の愛し方 ―3曲

(タイトルの読み方に好みが出るシリーズのひとつ。私は「ぼくら」派ですがみなさまいかがでしょう?)
今回の書き下ろし、というかこれを以て完成とする、くらいのやつ。

最初の段階でall you have lovedとArisiaのタッグはなんとなく決まっていて、どういうラストにしようかと考えていた時にthe way we lovedを思い出しました。楽曲タイトル的にもきれいかなあと。で、どっちがどっちを殺すかは最初迷っていて、結局こちらを採用したのはMVと被ってしまうからがひとつ、多分こっちの方が攻撃力高そうだなと思ったのがもう1つ。なので、視点は彼で固まりました。

(これは決めた時のめちゃくちゃ物騒なメモ垢ツイート)

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どこにも出していない分完成が見えなくて、普段書いたことない文字数に差し掛かった辺りでダレていやしないかとか、これ終わるんかなとかいろいろ考えてはボツりたい気分に度々なっていたので、自分を鼓舞するというか己の尻を叩くために殺意を上げていました。他の4編とはこれもこれでめちゃくちゃ毛色が違うけど、本出さないのとつついてくださりやがったお前らを、手に取ってくれた人たちを全員ぶん殴ってやるからな。くらいの気概じゃないと保たなかったんですよね。
なので、これ一編書くのにめちゃくちゃ時間がかかりました。一気には書き上げられなくて。まだまだですねえ私も。

内容に関しては、見ていた幻覚をそのまま書き起こしたので、特に語れることはありません。
でも、途中でイザナミが流れたのはあのシーンのことをぐるぐる(仕事中に)考えていたら降りてきたからです。さすがにファイトソングまで意図的に織り込むのはちょっと難しかったのであれですが、最期は花咲く箱庭で、だったかもしれませんね。
どうやって共に逝くかは、直感で。膝の上で眠る姉さんを血で汚すことはしないだろうなあと言う幻覚です。

the way we lovedに関しては、バトルシーンが始まるタイミングで曲が始まって、トドメを刺す前、それこそイザナミの前くらいで前奏が止まるイメージで書いていました。歌パートは、建物を出てから。歌詞を結構織り込んでいるので。
ページ数的に片方のページが空いていたので花を添えました。これだけでMV文脈つくだろうなという目論見だったので「MVのやつじゃん!」って感想でにこにこした

とまあ、そんな感じでしょうか。

*さいごに

こんな記録にもここまでお付き合い頂き、本当に、本当にありがとうございます。長々と書いておきながらアレですが、まだなんか話してないこと出てくるかもしれないので、何かあったらつついてください。

それでは。

*各種リンク

たまゆらとたまてばこ他たくさんの素敵なものが置いてあるうたたね書店のBOOTH

たまてばこの曲が聞ける1時間作業用BGM

all you have lovedのMV

花と骸と夢の跡~the way we lovedのMV