(武士的台詞?)「後悔もねぇ…」
静かだ。
木々の間から月明かりがさしている。
もう、皆は北へ落ち延びただろうか…。
あの人も居るんだ…。
きっと…落ち延びたろうな…。
しんがりを引き受けて一人奮迅してみたが…。
唯ですむはずがねぇよな…。
おかしなもんだな…これだけの深傷を負ってるってのに…。
痛みも…感じねぇ。
きっと…死んじまうのは確かなんだろうが…こんなにも穏やかな気持ちになってるのは…あの人のお陰なんだろうな…。
昔の俺は…唯の荒くれ者に過ぎなかった…。
毎日、喧嘩に明け暮れて、気が付けば、誰からも相手にされなくなっちまってた…。
我ながら笑えない過去だな…。
そんなある日、あの人に出逢ったんだ。
今まで無敗だった俺が…あの人に初めて負けた…。
でも、あの人は負けた俺を足蹴にすることなく、自分の夢の為に自分に着いて来てくれないか…と言って手を差しのべてくれた…。
不思議と抵抗は無かった…。
何か、とてつもないもんをあの人に感じちまったんだ。
この人に着いていけば、自分の中の苛立ちが消えちまいそうにかんじたんだ。
武士は武士でも下級武士の子だった俺だが、剣術はそこらの奴等には負けねぇ、自信はあったしな…。
あの人に着いて行って…ここまであの人と共に来れた。
あの人の役に立てた…。
何の後悔もねぇ…。
ああ、月明かりが優しいなぁ…。
眠てぇなぁ…少し…休むとするか…ぁぁ…眠てぇ…。
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