こんなん書いてましてん(薄桜鬼短篇 斎藤 千鶴)『はらはら舞う雪の中で』

「一さん、またそんな薄着をして、風邪ひいちゃいますよ。」


千鶴が家の外で雪の降り続く中立っている、元新選組三番組組長であった斎藤一に心配して声をかける。


「千鶴か。」


「私以外に一さんを名前で呼ぶ方でもいるんですか。」


拗ねたような口調で千鶴は斎藤に問う。


「あっ、いやっ、そうではない。すまぬ、いらぬ心配をするな。俺は…そのっ…お、お前以外に…。」


斎藤が慌て弁解する姿に千鶴はおかしくなって笑いだす。


「ふふふっ…。」


斎藤はその笑いに不機嫌そう訪ねる。


「何故、笑う。俺は真剣にお前にあやまろうとしていたと言うのに。」


千鶴は笑いを堪えて斎藤に謝る。


「ごめんなさい。一さんがあまりにもしどろもどろで言うものですから。いいんですよ、一さん。わかってますから。一さんの優しさは充分に私にはつたわってます。無理に言葉にしなくても。」


「だが、お前は拗ねていたのではないのか?」


千鶴は首を横にふり言う。

「一さんがあまりにも雪にばかり目をやるので意地悪をしてみたくなったんです。」


千鶴の言葉の意味を斎藤は気がついたのか、顔を少し赤らめた。


「お前にもちゃんと目を向けている。雪に焼きもちをやかせるほど俺は雪を眺めていたか?」


「はい。というか、何か悲しそうな目をしているようにも見えました。」


千鶴の言葉に斎藤は一度目を伏せて軽く微笑むと千鶴に一度目を向けてからもう一度雪が舞い降りてくる空を眺めて言う。


「雪が舞い散るさまが桜の舞い散るさまににていると思った。そうしたら、仲間たちのことを思いだした。」


新選組の仲間。散りゆく桜のように凛として散っていった仲間。


「一さん、この雪がやめば、春がきます。そうしたら二人でお花見にいきましょう。そして、みなさんのお話を沢山しましょう。」


千鶴が微笑みながら斎藤に言うと斎藤は千鶴に視線を向けて優しく微笑むと短く。


「ああ。」と答えた。


「一さん、さぁ、中にはいりましょう。体が冷えきってしまってますよ。火の側で暖まっていてください。暖かいお茶をいれますから。」


「ああ、わかった。」


そう言って斎藤は千鶴の後ろ姿に聞こえるか聞こえないくらいの声で。


「ありがとう、千鶴。」

と、呟いたのだった。


END

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