「そうか、もう、君は居ないんだな…。」

春。

「ほら、川沿いの桜が満開だぞ。綺麗だなぁ。」

君は、微笑んで頷いた。

夏。

「ほら、蝉が鳴いている。聞こえてるかい?」

君は微笑んで頷いて、゛「とても元気に鳴いてるわね。生きてるんだって。」゛と言った。

秋。

「ほら、見てごらん、向こうの山の木々の葉が色付き始めたよ。」

君は微笑んで頷いて、゛「もうすぐ、真っ赤に染まりますね。」゛と言った。

冬。

「ほら、見てごらん、雪が降り始めたよ。初雪だな。」

君が居るはずの隣に目をやり話しかける。

だが、君は居ない。

お風呂だろうか?浴室へ向かう…居ない。

お手洗いだろうか?…向うが居ない。

部屋のあちこちを探すけど…居ない。

最後に、小さな仏間に向かう…居た。

小さな仏壇の棚に 君を見つけた。

優しい微笑みを称えた 君の遺影…。

「ああ、そうか、もう、君は居ないんだな…。」

僕の事が心配で、一年近くもこの世に居てくれたけど…期限が来たんだね。

ありがとう。

降っては消える、この沫雪のように君も消えてしまったんだね。

ありがとう、僕も前を向いていくよ。

優しい微笑みをありがとう。

僕の寂しさを受け止めてくれてありがとう。

これからは、ゆっくりとゆったりと天から僕を見つめてて。


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