【映画】エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

ネタバレしまくってます。

すごい。すごい映画でした。ていう、間抜けな言葉しか出てこない。

前情報ほぼ入れずに行きました。
映画のサイトじゃなく映画館のサイトで、経営難のコインランドリーのオーナー女性が、メタバース世界で宇宙の危機を救う話、というのを読んだだけ。
あとポスターも見てなくて、同サイトで主人公の女性がカンフーポーズ取ってるカット見ただけ。
いや意味わからん。正直に言いますと、申し訳ないけど、積極的に見たいと思わない内容。映画自体あまり見ないし香港の映画って更に見ないので、興味持てたのはそこだけ。
なんも考えず見れる系かなーと思って行ったら、もう、全然。終わったら号泣してた。すごかった。

映像がずっと面白い。
オープニングの丸い鏡。今?過去?未来?わからん。笑ってる家族の姿。これが、ストーリが進むとめちゃくちゃ効きました。丸 の中に 家族の姿。

服装も人物もアイテムも、変なのばっかりでてくる。
主人公のエブリンはめちゃくちゃ冴えないかんじの服だけど、娘のジョイが覚醒した後は渡辺直美ばりの奇抜ファッション。体型も似てるし。顔にビーズは基本装備ですね。かわいい。
豚ちゃん連れて出てきたのと、派手柄ダウンジャケットの肩に同柄のくまちゃん着いてるのと、絶賛宇宙侵略中の緑の服超かっこよかった。
エブリンは、よくわからん柄のシャツに赤いダウンベストみたいなの。おばあちゃんかよ、もっと綺麗にできるやろと言いたくなる。主人公なのに。娘と対比的。あと、旦那さん。THEなんの才能もない人。見るからに頼りない。どんな服かも印象なさすぎて思い出せない。でも、配偶者を本当に不満に思ってるのはエブリンじゃなくてこの旦那さんの方で、実は離婚を切り出そうとしてる、ってのもなかなか。
エブリンが、実父やら国税庁やらに気を取られて旦那さんの素振りに全然気づいてないせいで、アルファ旦那さんに乗っ取られた結果誤解漫才になってて面白かった。離婚届の裏のメモに必死で書類の表になかなか気づかないの、めっちゃ皮肉。
旦那さん、アルファ旦那さんになった時の動きと表情が違いすぎる。メガネを外してポケットに直すところだけで明らかな別人だとわかる。話し方も声のトーンも違う。すごい。同じ顔なのに、キリッとした顔とヘニャヘニャの顔。カンフーも、はーいワイヤーでぇす!!じゃなくて轟速キレッキレのやつ。旦那さんに戻ったときのヘタレっぷりとの落差。机重いね。指もね、痛いね。

人格が変わるのがあまりに唐突で、最初は は!?どこで文脈見失った!?でした。本当にわけがわからない。左右の靴を変えろとか。ほんっとに序盤、は???の連続。いや中盤、、最後までそうかも。展開予測つかない。答えの様なものが提示されても、気持ち良さはないし、ついていけない。見終わった今ではその辺しっかり理解しなくても大丈夫だと思ってる、たぶんそういうジェットコースター感を楽しむ時間だった。なんとな〜くしかわからんけど、それくらいの認識で最終的には十分。めっちゃ面白かったけど、本質的に感動したのはそこじゃないし。

ベーグルとか最高に意味がわからんけど、
何となく、カオスであるとか、闇堕ちとか、諦めの象徴だったような。

それから指がソーセージになったり、アニメ絵になったり、子供の落書きになったり、バッドエンドフェイントかましたり。要介護認定な父親が突然マルチバース世界の上司っぽくなったり。車椅子めっちゃかっこよくなってるし。
各種様々のびっくり演出が詰め込まれてて、わー忙しいと思ったら最終的に岩になるエブリンとジョイ。岩!!どゆこと!!

あと棒を尻に指すな尻に。モザイク出てきてもうてる。
いろんなエブリンが物凄い速さで再生されるところとか、スローで見せてくれ。

でも岩になってからは急に泣けてきて、ショーシャンクばりに号泣でした。ずっと泣いてたな。

家族の関係が生々しくてもう。

エブリンは経営難なコインランドリーにいて、たくさんのつまらないことに囲まれて生きている。洗濯の仕事、納税、よくわからん方向にひねくれた上、ガールフレンドがいる娘。古い考えの、父親のゴンゴン。冴えない旦那さんに猛プッシュされて駆け落ちしたけど、行き着いたのはそんな所。

最初は幸せだったかもしれないけど、旦那さんは天井にペンキを塗ることもできないし、お客さんの洗濯物は勝手に動かすし、目玉シール貼るし、邪魔ばっかりしてきて役に立たない。
アルファ旦那さんになった時、最初はドン引きパニックだったけど、強くて助けてくれてなんでもできる姿にだんだんときめいていったの、そりゃそうなるわ。同じ顔なのに本来のほうはガッカリだね。

さらっとしか経緯がなかったと思うけど、父親のゴンゴンは年老いたので仕方なく引き取った?かな。エブリンは駆け落ち同然でゴンゴンの元を去ったようで、この親子の関係もオープンで親密とは言えなさそう。
小さい頃からエブリンに対して何もやりとげないとか意思がないとか、けっこうズシッとくる言葉を吐いてる。毒親ってやつか。
でも見捨てることは出来なくて引き取った。どんな親でも、子供のほうが親を諦められないと思う。居なかったとしてもどんな人かは気になるだろうし、誰だって自分の親を毒親だと思いたくないし、はっきり自覚してても、もっとこうだったら良かったのにっていう期待は捨てられないと思う。関係切るのに苦労するはず。無関心ではいられない。
ジョイも家出しててエブリンとはもちろん、ゴンゴンとも長いこと会ってなかった様子。元は中国語話者だったけど家出して、英語話者になって、白人のガールフレンドがいて、かけ離れた存在になってしまってるジョイとゴンゴンを会わせるのに、エブリンはとても神経を使ってた。この2人は話す言葉も英語と中国語に別れてしまってる。自分ですら、娘とうまくコミュニケーションできなくなってしまってるのに。
この父親だからこそ、ジョイは母に反発する娘になってしまったと思う。エブリンがそうさせた。受け止めなかったし、引き留めなかったから。そうなるように育てられたから。

旦那さんはジョイにもジョイのガールフレンドにも優しいしたぶん2人のことあまり気にせず受け止めてるようだったけど、エブリンやゴンゴンとの溝が深すぎて、ジョイを家に繋ぎ止めるほどではないという感じ。
4人それぞれの心の距離、お互いにめちゃくちゃ離れてる。
仲良しな家族でも、多少はこういう溝ってあると思う。他は、アライグマがどうしたとかありえなくて馬鹿馬鹿しい映像がほとんどだけど、ここだけが悲しいくらいリアルで、その乖離で余計泣けてしまった。なんなのよもう、さっきまで指ソーセージだったのに。

別次元の自分はもっと才能があって、旦那さんと駆け落ちしなかったら、父親に罵られることもなかったし、別の出会いがあって女優になって大成功していて、ほかの次元の自分もそれぞれにとんでもない特技がある。どの自分も、凄い特技があって、活躍していて、多分社会的には成功している。
コインランドリーのエブリンだけが何も得意なことがなく、何も最後までやり遂げられず、上手くいかないけど、その失敗の数だけ、他の世界のエブリンは成功してる。君は特異な存在だよ、と言われるところ、なんかとてもぐっときた。
そんなエブリンが唯一諦めなかったのが、ジョイなのよなぁ。
他のエブリンの次元では、ジョイ出てこないし、結婚してる描写もない。マルチバースシステム開発したエブリンの世界にはジョイがいたけど、追い詰めて宇宙破壊?する存在、ジョブ・トゥパキにしてしまった。
コインランドリーのエブリンは社会的な成功は得られてないけど、旦那さんと、娘がいるんよね。
自分といっしょに居てくれる存在がいる。
女優のエブリンでは、旦那さんを繋ぎ止めることは出来ていなかった。

冴えない旦那さんの戦い方は、話すこと、ハグをすること。相手を思っていると明示することが、結局どんな暴力より1番強いのかもしれない。そして、明らかに弱っちい旦那さんは、エブリンを打ち負かそうとする相手に、何にもできないけどそうやって立ちはだかった。いや強いやん。旦那さん。かっこいいやん。エブリンのこと好きやん。国税庁の呼び出しに応じなかった世界では、職員のおばさんの説得に成功してた。
目玉のシール、約立たずの旦那さんにあちこちに貼られて邪魔なものでしか無かったけど、かわいくて拍子抜けして思わず戦いが止まってしまう、平和の道具だったとはね。
娘とコミュニケーションとるのに必要だったのは、そういう旦那さんの戦い方。中盤まではカンフーとピザ看板回しと小指で、マルチバースの人たちギッタギタにしてたけど、旦那さんの戦い方を見てからは、優しい戦い方になった。相手を思いやった結果、S嬢役に回るという。あぁわけがわからん。でも良い。

ベーグルの中に入るとどうなるんだったか、ちょっとついていけなくなってたけど、たぶん入ってしまったらジョイはいなくなるんだろう。
母親に理解してもらうのを諦めて、ジョイはベーグルに入ろうとしたけど、エブリンは諦めなかった。引っ張り出して、やっとジョイのことをちゃんと見て、受け止めた。岩も飛び降りた。
旦那さんも、あの父親ですらジョイを繋ぎ止めようとした。
どんな話だったかと聞かれれば、途切れそうな縁をもう一度結びなおす話、だったと思う。

黒い空虚な円の中じゃなくて、冒頭の丸い鏡の中に、笑いあう家族の姿があったなぁ、とふと思い出した。

あと、国税庁のおばさんは、別次元ではエブリンの恋人みたいだったのが謎だけど、つまらない関係の人だって、人生のどこかで別の選択をしていたらそういうことになったのかもなぁ、と思ったり。
袖触れ合うも他生の縁というか。人の縁って、本当に不思議。
まぁどうやっても指ソーセージの人生は歩めなさそうやけど。
足器用のシーンで、本来世界とおなじギプスが手とおなじ側に嵌められてるの細かくて好き。

資産や地位があったり凄い特技を持った自分は、違う道を行けばあったかも知れないけど、それよりも、心が近い人がそばに居る日常ってのが、一番価値のあるもので、わかりやすく成功してる自分よりもある意味では成功しているのかもしれない。
私は仕事面ではちっとも成功しておらず、理想の自分と全然違ってて、あの時こうしたらどうだったんだろうとかしょっちゅう思うし、諦めずに挑戦して得た特技もないし、転職しよかなぁとかも週1で考えますが、幸い家族や友達には恵まれていて、それなりに幸せだよなぁなどと思っているので、ドンピシャで弱点を釘で打たれた気持ちでして、すごく響きました。

感じたテーマを言葉にするとちょっと陳腐になってしまうのでぜひ映画、見て欲しいです。わけわからん映像ジェットコースターに乗せられて岩の会話とか見せられるけど、アクションすごいし、ちょっとじわっとくるしで、面白いです。


タイトルのエブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
どういう意味やったんやろ。
字幕では、なんでも、いつでも、いっぺんに
(存在している)→何にでもなれる、何でも持っている?
(やってくる)→カオス!大変!まさにこの映画。
主人公の名前がエブリンてのは偶然?なんでもさん、ってコト???
だったら面白いな。

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