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中世犯罪博物館、罪、魔女狩り(私的閑話休題)

 タイトルが雑。(閑話休題という表現についてはおこられたら消す。)
 今回はドイツにある中世犯罪博物館を見ての感想と、そこから時代時代における「罪」とは何か、そして「魔女狩り」はなぜ起きたか、あたりをまとめてみようと考えている。タイトル通りインタラクティブにやりたいし、参考文献は載せるので、間違えていたら指摘してほしいし意見や感想も歓迎する。つまりはうたたね書店様の布教活動の一つ。

http://utatane.link/

 さて、目次は次の通り。

1.中世犯罪博物館を見ての感想

 美しいローテンブルクの街並みの中にある風変わりな博物館。物好きな日本人が多いのか、なぜか日本語の説明がある(ないものもある)。一応サイトも日本語対応。

ローテンブルク市庁からの風景。綺麗。

 全体としての感想は、ちゃんと博物館していたなあ、というもの。お前らこれを見に来たんだろ!とばかりに入ってすぐ見ることになる拷問器具が与えてくる最初の印象とは異なり、中世から近代にかけて「罪」や「法」がどのように変遷してきたかを考えさせてくれる。
 また、犯罪と言えば拷問、拷問と言えば魔女狩り、ということで魔女狩りについても色々展示があった。それを見て興味を持ったので調べてまとめてみることにした。では最初に罪について考えてみよう。

2.罪とはなにか

 いったい何が罪となる行為なのだろう。行為自体は時代の移り変わりとともに変遷していったが、根底には共通点がある。
 例えば、人々が村に住んでいた時代、村の外の人に対し危害を加えることは罪ではなかった。国ができてはじめて、村というコミュニティの外で人に危害を加えることが罪になった。また、中世において分をわきまえないことは罪であった。庶民が華美な装いをすることは禁じられていたし、職業を変えることもできなかった。妻が他人にふるった暴力で、夫が罰せられたりもした。妻の行動を支配できないことは、夫という役割を果たしていないので罪だったわけだ。
 罰の面からも考えてみよう。昔から、罰の一つに村八分があったし、教会に背くと破門された。噂話をしたものは化け物の大きな耳と口を持つマスクをかぶせられる名誉刑を受けた。罪に対する罰として、その社会に所属させないぞ、という意思が垣間見れる。
 これら罪の共通点とは、大なり小なり社会に対して不安定をもたらすものであり、人々はそれを罪と定義して生きてきたのである。次は、中世に猛威を振るった魔女狩りについて、なぜ魔女であることが罪と定義されたのかについて考えていこう。

3.魔女という罪

 よし、それではお待ちかね?魔女狩りの話をする。とはいえ、魔女が罪だとされた理由は単純だ。魔女を罪にしておいた方が権力者にとっても庶民にとっても都合が良かったからだ。言い換えよう。中世のヨーロッパでは、社会が魔女狩りを必要とした。
 魔女狩りが行われた時代、社会自体がガス抜きを必要としていたといわれている。ペストの流行、悪政や飢饉など度重なる社会情勢の不安が不満となった。その時に魔女という想像上の生き物はうってつけだった。国や教会は、社会への不満をこれ幸いと、他人への不寛容に押し付けたわけである。社会の一員たる自分と違うものは魔女にしてしまえ。こうしてお手軽に魔女は生まれ、そして狩られた。
 この辺の話を理解してもらうために、極端な話をしよう。
 ある意味最小の社会が自分と他人からなる関係である。それを鑑みるに、社会の不安定はすなわち自分の感じる不快であるともいえる。つまり自分が不快で、自分が間違っていないならば、相手の行為は罪である。極論だが。ところで最近よく見る炎上って、そんな極論がまかり通ってやしないか?
 閑話休題。

4.魔女狩りが成立した理由

 魔女であることはこうして罪にされてしまったわけだが、折角なのでこの辺の話もしておこう。なぜ、空想上の存在でしかないはずの魔女が、これほどまでに存在を確認され、罰せられたのか。その理由の一つが、上で述べたように、スケープゴートが必要だったというものである。あと二つ、理由を挙げよう。

 うち一つの理由は身もふたもない。お金になったからだ。魔女の財産は異端審問官の懐へ入っていった。一部は報奨金として告げ口した人に与えられた。魔女に人権はないので彼らの財産はどう扱ってもよいという理論である。
 そしてなんともひどいことに、この「証言」は子供によるものや、ただ気に入らないからというものでも認められ、そして拷問の結果の自白や共犯者の告発が認められた。こうして芋づる式に魔女が生産され、コンボがつながり続ける限り、懐に入るお金も増え続けた。

 そして最後の理由は、魔女が存在したからである。
 つまり、中世においては未知の力を用いて誰かを害する黒魔術が存在した。夜な夜なサバトを開き、子供を殺して悪魔に捧げるものがいた。自身こそが悪魔と契約した魔女であると信じて疑わない人がいた。森が人外の棲む領域で、警察など存在せず、そして科学が未発達だった時代には、魔女は実在した。あるいは、実在していると信じられていた。
 なおかつ、誰も魔女が魔女かどうかを見抜くことはできなかった。しかしある異端審問官は言った。迷ったら魔女にしとけ、なぜなら我々は正しいことをしているのだから。
 3でも述べたとおり、魔女とは社会を構成する自分とは違うものであった。それは例えば、無口な人であり、気味の悪い人であり、気に入らない人であり、恨まれている人であった。なんとなく気に食わないなーと思っていた人が、ある日突然実は魔女と認定されたよ、隠していたなんてなんとおぞましい!前から気に食わなかったんだよ!殺せ!となるわけだ。
 こうして魔女は存在を発見され、そして狩られた。

5.魔女狩りの終焉

 こうして中世から近代黎明にかけて全盛期を迎えた魔女狩りだが、徐々に終焉に向かう。
 まず裁判官などの知識人階級は魔女裁判を見直し、物証を重視するようになっていった。そして科学や技術も徐々に進歩し、生活環境も改善されていくことで、民衆の不安も解消されていく。魔女というスケープゴートが時代とともに必要とされなくなっていくと自然に魔女狩りは終焉を迎えた。

6.参考文献

「魔女狩り 西欧の三つの近代化」(講談社選書メチエ)黒川正剛著
「図説 魔女狩り」(河出書房新社)黒川正剛著

7.感想他

 罪、魔女狩りについてまとめてみたが、これ多分罪は罪、魔女狩りは魔女狩りで別々にした方がそれぞれの話の流れがすっきりすると思う。実は最初異端狩りで魔女狩りではなかったとか、魔女のイメージの変遷とか、いかに魔女裁判が終わっていったかとか、面白そうなことはあるけど罪からはなんかずれるので省略した。
 まあそれはともかく、私は「この世界には素晴らしいものがたくさんあって、それを知ることって面白い」と考えているので、それを教えてくれた千歳ゆうりさんをよろしくお願いする次第である。

https://twitter.com/Chitose_utatane

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