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ラジオの未来を考える。

フリーランス45才限界説って知っていますか?
フリーランスで仕事をしていると、45才くらいを堺に若い世代に仕事を奪われるという説です。
自分を気に入って発注してくれていた人間も定年退職でいなくなります。
発注元の人事も動き45才前後がチーフになります。

新チーフにとっては、45才過ぎの面倒くさいベテランに仕事を頼むより、安い値段で無理を聞いてくれて、徹夜もしてくれるような自分より年下の若者に仕事を発注したほうがいいでしょう。そのような考えから「フリーランス45才限界説」というのがありました。

私も覚悟をしていました。
45才を過ぎたら、仕事が減るだろうなと。

そして現在50才。ラジオ番組のディレクターをしています。
仕事が減るどころか、ますます忙しくなっています。
でも、それは私が仕事が出来るからじゃない。
私の仕事を奪えるほどの仕事が出来る若者がいないからです。
上がって来ないからです。
それに気がついた時「仕事を奪われなくてよかった」とはまったく思わず「この業界はこれからどうなるのだろう?」と不安になりました。

実際、私はとても忙しくアシスタントが欲しいです。
でも安易にアシスタントを雇うことは出来ません。
そのアシスタントが自活できるくらいのギャランティを支払わなくてはならないから。
1本、1本のギャラが安く、これはあくまでも1人分で、そのギャラの中からアシスタントの人件費を払うと赤字になってしまいます。
そんな案件ばかりですので、アシスタントを雇わず、キツくても自分ひとりで制作仕事をします。

でもね、こんなやり方をしているようじゃ「下が上がってっこない」のが当たり前になってしまうんです。
次世代のラジオディレクターを育てる土壌が今のラジオ業界にないのです。

これ、大問題だと思いませんか?
この先、ラジオ業界はどうなって行くのでしょう?
リスナーも制作者も年齢が上がっています。
40年ほど前は、若者の最高の娯楽がラジオでしたが、今、レイティング(聴取率)を見ると、メイン層は熟年です。

もちろん、日本全体の平均年齢が上がっていますし、時代は変化するし、熟年層にラジオが支持されるのは嬉しいのですが、ラジオ業界の未来を考えた時に、もう少し裾野を広げたいと素直に思いました。
若者にラジオを聞いて欲しい、若者にラジオ番組を制作して欲しい。

そんな時に、某専門学校でラジオスタッフ専攻の講師をしてみないかとのお誘いを頂き、これは縁だと思い引き受けました。

実際には、若者と接することや、自分の常識の殻を破り他の講師や時代の流れと調和しながら指導していくのはとても難しく、本当に時間も取られるし精神的にもかなり辛いです。

でも、私が今、取り組まなくてはならないのはラジオの未来。
それは、やはり「私世代」が先頭に立たなくてはならないと思うのです。
私より先輩のラジオ業界人とはすでに話が噛み合わないこともあります。
(例えばスマホでの録音を全否定したりするのですが、実際にはスマホの録音は理論的にXLR入力よりS/Nがよかったりします。)
経験による思い込みが足を引っ張ることだってあります。

きちんと世代交代していくのも、業界を長続きさせるために必要なことなのではないでしょうか?
もちろん、依頼された番組制作はこれからも続けていきます。
でも、私の中のミッションは次世代に仕事を渡すこと。
そのためには、ギャランティアップも必要なんです。
あ、私のギャラじゃないですよ。
私はもういいんです。充分生活出来ていますから。

若者が「この業界に行きたい」と思えるギャランティという意味です。
頑張れば頑張った分だけ稼げるぞ、というのはモチベーションになると思うのですけど。
忙しいのにギャラが安い業界に行こうなんて思いますか?
えっ?お金じゃない?やりがいが大切?
それって、やりがい搾取じゃないですか?

業界全体のギャラを正当なものにするもの、我々世代のミッションなのです。だから、私はもう極端に安いギャラの仕事は引き受けません。
自分の為にじゃなくて業界のために。

と、長くなりましたが、ワリと真面目に業界のこと考えています。
失礼しました。


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