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『路地裏の捨て猫は、ラブレターを破り捨てる』トーキョー’90クロニクル vol.11

これまでの人生で、手書きのラブレターをもらったことが二回ある。二回というのが人と比べて多いのか少ないのかはわからないけれど、一通は高校時代に付き合っていた男の子からで、もう一通は同じく高校時代にデートクラブで出会ったオジサンからだった。
 
わたしがよく通っていた池袋のデートクラブはマジックミラー式で、わたしたちは指名されない限り、相手のルックスはわからず、外での待ち合わせで顔を合わせてようやく相手の外見が認識できる仕組みだった。客は客でしかないし、デートは最短30分お茶をすればいいとされていたので、どんな風貌のオジサンでもさして気にはならなかったけれど、それでも、そのラブレターオジサンは最初から、少しなんだか引っ掛かりのある雰囲気を漂わせていた。

年齢は40代後半から50代半ばくらいだっただろうか。ひょろりと細くて背は高かったけれど、髪の毛は見事に禿げ上がっていて、しかし両サイドにだけは結構な毛量が残っていた。いわゆるサザエさんの波平のちょろり部分がないスタイルで、テッペンを晒しているのは潔くはあったけれど、とにかく女子高生が「オジサンだけど、そこそこはカッコいいんじゃね?」と思うようなルックスではなかったし、なにより目も合わせてくれないし、あまりしゃべりもしない。援助交際の交渉をしてくるわけでもなくて、こっちが気を使って話しかけてもまったくろくに返事もしてくれず、何が目的なのかわからないまま、まったく盛り上がることなく別れた。これはリピートもないだろうと思っていたのに、後日どうしたことかまたも指名を受けることになった。

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