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「だいじょうぶだぁ」のだいじょう仏教

「every thing's gonna be alright」

少し前の話になりますが、終わりの見えないコロナ自粛に日本中が消沈している中で、秋田県のお坊さんがアップした動画が話題になりました。
僧侶のお仕事のかたわらで仏教レゲエバンド活動をされている方で、本堂にある法具を華麗に演奏し、一人で歌いきっている様子は、見ているだけで元気になってきます。この人すごい!

歌っているのは、ボブ・マーリーの77年の作品「Three Little Birds」。
マルーン5もカバーしている名曲です。

歌詞は

Don't worry about a thing,
'Cause every little thing's gonna be alright.
(心配ないよ だいじょうぶ
 どんな小さなことだって うまくいくからね)

というもの。

動画に合わせてツイートされた「だいじょう仏教!」という言葉に目が引き寄せられました。

般若心経

そういえば、以前トレンドにもなった『般若心経の現代語訳』の最後は

「心配すんな。大丈夫だ。」

でまとめられています。
この言葉を示す具体的な箇所はありませんが、お経全体のまとめとしてきちんと意味が通っています。

般若心経は大乗仏教のひとつ。そう考えると、

だいじょう仏教!は大乗仏教

なんですね。

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「大丈夫」

大丈夫だと私たちを安心させてくれる、仏教。
確かに、仏やお坊さんのことを考えると、なんだか心が落ち着きます。

「大丈夫」という言葉にも、人を思いやる気持ちが表れていますね。
「あなたにまかせておけば大丈夫です」
というように、大丈夫とは間違いも心配もない様子を意味します。

ところでこの「大丈夫」、仏教用語だということはご存じでしょうか?
言葉の成り立ちを追ってみましょう。

①「丈」
「丈」は、長さの単位を表す言葉です。

②「丈夫」
「丈夫(じょうふ)」とは古代中国で「成人に達した男性」のこと。
「健康で頑丈な立派な男子」を表す言葉としても使われます。

③「ますらを」
「益荒男(ますらを)」とは日本のやまとことばで「立派で堂々とした成人男性」「勇気があって強い男性」のこと。

「ますらを」=「益荒男」=「丈夫」

「丈夫」という言葉が仏法と共に日本に伝えられると、「ますらを」と意味が重なるため、「丈夫」と書いて「ますらを」と読むようになりました。

「ますらお」とキーボード入力すると「益荒男」も「丈夫」も変換候補に挙がります。

「大丈夫」
「大丈夫」とは「ますらを」の中でも、より立派な男性のこと。心身ともに健康堅固で、学識や人徳の備わった存在を指します。

⑥「大丈夫」=「菩薩」=「仏様」
やがて「丈夫」と「菩薩」のイメージが重なって、菩薩のことを「大丈夫」と呼ぶようになりました。

(ちなみに「菩薩」は、インドから中国に仏教が伝わる時に、古代サンスクリット語の「マハー・プルシャ(偉大な男性)」を語源とした呼び名です。)

『調御丈夫(じょうごじょうぶ)』とは仏の十号(「仏」を意味する十種の呼び名)の一つ。
「優れた馬の調教師のように、どんな救いを求める人のことも上手に仏道へ導き救済できる者」という意味です。

このように「大丈夫」は、元々は「偉大な人」を指す、人々を救う万能な「仏様」の別名のひとつでした。

意味の変遷

時代がたつにつれて、「大丈夫」【名詞】の意味が変わっていきます。

〇 奈良・平安・鎌倉期
「大丈夫」とは仏の異名、また高徳の師に対する尊称でした。
    ⇩
〇 中世後半期(室町期)
❝立派な人(仏様/大丈夫)がそばにいれば「安心だ」❞から生じた「大丈夫なり」【形容動詞】という使われ方が主流になりました。
    ⇩
〇 明治期~現在
今使われているのと同じように
  「丈夫」・・・健やかな状態や堅固な様子
  「大丈夫」・・・あぶなげのない様子
と意味の区別が明確になり、今に至ります。

「安心して」という意味が込もっている「大丈夫」 。
元は「大きな丈夫(ますらお)」 つまり”立派な人、頼りになる人”という意味で、仏様を指す言葉でした。
だから、仏様の事を信じていれば、大丈夫なんです。

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「だいじょうぶだぁ」

そう思うと、故・志村けんさんの「だいじょうぶだぁ」は、大乗仏教からきているのかもしれません。
「だいじょうぶだぁ」=「大丈夫・ブッダ」?
確かにブッダは大丈夫。
実はとっても奥が深いことを彼は教えてくれていたのかもしれませんね。

新型コロナウイルスとの長い闘いは、ワクチンができるまでずっと続きます。
先が見えない不安な時だからこそ、
大乗仏教だいじょう仏教大丈夫教)
を支えに乗り切っていきましょう。それではボジソワカ。

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