13年の終止符

13年付き合った人と別れた。
別れたというよりも私から一方的に終わらせた。

付き合った当初、私は21歳。
彼の全てが大人でかっこよく見えた。
私にとって彼の言うことがすることが世界の基準になって、何でも言うことは聞いた。
彼が言うのなら間違いはないと。

若い時はそれでも良かった。
実際、彼は私にたくさんのことをしてくれた。
父親と疎遠の私には父親代わりとして彼が必要で、そういう存在を私も欲していたから。

女の影は常にあった。
問い詰めても謝りもしない。
そんなのはいつものことすぎて、別れる理由にはならなかった。
私は自分を簡単に好きになる人は嫌いだし、簡単に自分のものになる人も嫌い。
私の歪んだ思考のおかげで、女癖の悪さは関係継続のスパイスにはなっていた。

何故、離れたのか。
それはいざとなったらこの人はあっさり私を切り捨てると確信したから。
「俺がこうしたのは、娘と女房を悲しませないため」
確かに彼はそう言った。
悲しませたくないのなら、そもそも私を引き合わせなければよかった。
不義理を始めたのは自分なのに身勝手ばかり言っていた。
もしバレた時、彼は私を他人のように捨てるだろう。
自分のことしか考えられない。
年老いた頭では思考も鈍るのか。
もう終わりだと思った。

彼は私を家族だと言い、恋愛感情以上のものだとよく言っていた。
私が自分をちゃんと好きでいてくれるから、安心して遊べると。
何をしても、何があっても絶対に離れていかない。
ずっと自分を好きでい続ける。
私はただの都合のいい存在でしかなかった。

最後に会った日、その時もいつもの言い訳をしていた。
女と旅行なのは明白なのに、ひとりで行くと言い張った。
彼が嘘をつく時の顔は分かる。
そうまでしても私を繋ぎ止めておきたい小狡さに腹が立った。
私の家の鍵を返させた。
あっさり渡してきた。ばつの悪そうな顔をしながら。
きっと、まだ私が謝って戻って来ると思っているだろう。
残念ながら、そんな日は一生こない。

13年。
長い時間が私を束縛していた。
彼と関わり続ける生き方や人生設計を無意識にくんでいた。
それはとてつもなく夢のない、未来のない生き方だった。
離れてよかった、心からそう思う。
今やっと、私は私の人生を生きている。

長く付き合った男よりもワンナイトで会った男に魅力を覚える。
それくらいには私の気持ちは冷え切っていた。
それが分かったから別れを選択するのはさほど難しいことでは無かった。

始まりは、彼とも肉体関係からだった。
身体ではじまった恋が身体が原因で終わるのは自然なこと。
まだ私は女でい続けたい。



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