星になれたらいいな

ネット時代は便利だ。
あの人どうしているだろう、と思って名前検索すると出てくる。
高校時代の部活仲間のピプとS先輩。

ピプは、超難関大学に入ってサークル仲間と国際結婚、
盛大な結婚式には私含め部活仲間全員も参加した。
世界中を夫婦で飛び回って活躍していると聞いていた。

翌年からの年賀状は送っても送っても彼女からは1度もこなかった。
その後の同期の結婚式にも彼女は一度も来なかった。
私の結婚式にも当日に彼女から体調不良で欠席の連絡が来たりした。

今どうしているのだろう。

多忙にご夫婦で活躍しているのだろうか。

ピプの本名を打って検索ボタンを押したら、身体中に衝撃が走った。

それは雑誌の取材記事だった。

読むと、ピプは欧州でジュエリーデザイナーをやっていた。
堂々として、仕事で生きてきた女性の強さが滲み出ているような、
美しい姿の大きな写真が掲載されていた。

年月を重ねていたが、間違いなくピプであった。

さらにピプの画像検索をしてみた。

するとピプと恋人同士らしき仲睦まじい写真が出てきた。
だがどう見てもその恋人は私が見た結婚式の人ではない。


それが全てを語っていた。


多くの人にとって年賀状や結婚式は、普段会えなくなってしまった友人の近況を知ることのできる嬉しいイベントである。

しかしつらい経験をした人にとっては、それらは凶器となって胸を鋭く深く抉る。

結婚すると結婚式の写真、子供が産まれると赤ちゃんの写真と、年々子供の成長の節目や家族の笑顔が年賀状で送られてくる。
それらは普通の人にとってはなんてことない平凡な幸せの一コマだ。

しかし独身、離婚、伴侶や子供の闘病中や死別などの状況にある場合、他人の結婚式や年賀状を見させられるのはただただ辛いものとなる。

返事をすることすらできないくらいに。

若い頃の私にはそれが全く想像ができなかった。
自分自身も離婚や死別を経験して初めて、年賀状が鋭利なナイフになることを知った。

年月を重ねて私は今、ピプの当時の心境を傷みなく共感できる。


雑誌記事の写真のピプは、堂々としてとても美しい。


ピプ、すごい綺麗になったね。
めちゃめちゃ素敵だよ。そしてとても誇りに思う。


今の時代は、こうやって大切な人の消息を知ることができるのだな。


ならどうしても知りたい人がいる。


高校時代、狂おしいほど好きだったS先輩。

妹のように接してくれた。妹にしかみれないと言っていた。
こっそりハチマキや第二ボタンをくれたりした。
カメラマンになりたいと言っていた。
専門学校に通ったはずだった。

検索ボタンを押して激震が走った。


!!!!!!


ええええええええええええっっ!?

ええええええええええええっっ!?


!!!!!俳優やん!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!


しかも異国の!


んでもってそこそこメジャーじゃん!!!!!!


ボソッ (日本では全く無名だけど)


さらに画像検索をした。


目の保養になった。
目の保養になった。
目の保養になった。

しばし時代トリップ。

・・・。

ーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーー


・・・はい、戻ってきました。

どの写真もどの動画も、忘れもしない、大好きなS先輩だった。

S先輩、英語ペラペラになっちゃって!
高校時代は空手やってなかったけど、道場やってるやん!

めちゃめちゃ苦労したのだろう。
苦労を重ねて来た人が放つ、独特な内側から滲み出る良い雰囲気があった。
オッサンになったのに、若い頃よりもずっとカッコよくなっていた。



私は決めた。


今の新たなプロジェクトを必ず成功させて、
ピプとS先輩に『報告』しよう。

ピプとS先輩が、私に『報告』してくれたように。

そして、

できればピプのジュエリーをオーダーして、
できればピプやS先輩がいつか来日して九州を訪れた時に、

気がつかなくてもいい、私のプロジェクト商品を食べて頂こう。
そこまでプロジェクトを成功させよう。


まずはピプとS先輩の写真をカラーコピーして壁に貼ろうかな。
ふたりは私の輝く大スターだ。

私も、私の進むべき道を、勇気を持って怯むことなく歩んでいこう。
いつか誰かが同じように私を探してくれるその日のために。


フェイスブックも始めようかしら、と他の仲間も検索してみると、
みんな2013年や2015年を最後に更新がとまっていた。

フェイスブックが全盛期だった2011年〜2015年という時代には、私は移住と起業と父の死と離婚を抱えて、古くからの友人と繋がりたいなんていう精神状況ではなかった。

いつも遠回りしていて、乗り遅れちゃうなあ。

これもまた何かの縁や運命なのだろう。


このままでいいや。
フェイスブックはまた今度。


新たな挑戦をしようとしているわりに、自分自身の内なるエネルギーの噴出量が少ないなあ、と感じていた今日この頃だった。

しかしこの2人の現在の写真が私の勇気と覚悟のスイッチを押してくれた。

気がついたら、ミスチルの【星になれたらいいな】をくちずさんでいた。

『長く助走をとったほうが
より遠くに飛べるって聞いた
そのうちきっと大きな声で笑える日が来るはず

動き出した僕の夢 高い山越えて
星になれたらいいな』


槇原敬之の『遠く遠く』も浮かんできたぞ。


さあ今日も頑張っていこう。


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