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「イメージすることの大切さ」2023年3月30日ー北広島新球場開幕戦 ファイターズは負け、田中将大は勝つ。初体験は、誰でも緊張するの巻。

2023/0330 F×E エスコンフィールド北海道 1対3 
ファイターズ0勝1敗

札幌ドームを離れ、夢の新球場、北広島の薄暮に浮かび上がる姿は、雄大で、セレモニーの花火は、門出を華やかに祝う。

2018年に新球場の構想が発表されて以来、待ちに待った開幕戦!
の、はずだったが、わたしの心は、冷めていた。
ファンクラブ会員は17年目で継続しているが、チケットの抽選には参加しなかった。キャンプ中継も見てたし、オープン戦も全試合チェックはする。生活習慣のようなものである。

ファイターズのチーム状況は、ある程度わかっていたし、相手チームの開幕投手、田中将大の様子も、キャンプからオープン戦、マー君の仕上がりは上々だった。

駒大苫小牧高校が甲子園で2連覇した時代、高校生の時から彼を見てきた野球ファンならば、想像できるはずだ。
どんだけマー君が、勝負強いか。だからこそ、メジャーから東北に戻って以来、どんだけ勝利に飢えているか。いや違う「痺れる試合に勝つこと」に飢えているか。

(マー君は、絶対に負けないつもり、絶対に勝つつもりだ)

そう見えていた。
強烈な意志と燃えるような闘志。超一流の百戦錬磨の投手の力に、わたしたちのファイターズは、対抗できるのか?

一方のファイターズは、2年目の新庄監督が路線変更
「勝つことしか考えない!」
「優勝しか目指さない!」

2月1日のキャンプ初日から紅白戦で選手を振るい落とし、妥協を許さぬ姿勢で開幕戦に向かっていた。
オープン戦に入り、「勝ち癖をつける!」と言って、それなりに勝っていたけれど、チームはだんだん元気がなくなっていった。
スワローズとの最後の試合は1対1の引き分けだったが、終了後のベンチに残る選手たちの表情は虚ろで、疲れきっているというか、なんというか…。
とにかく。これから待ちに待った新規の自前球場で、
「絶対に勝つぞ!必ず勝って見せる!」
と明るく燃えている選手たちには見えなかった。

2023年3月30日。ファイターズとイーグルスの開幕戦は、異例の前倒し、この1試合だけで始められた。こけら落とし、というやつである。

華やかな開幕セレモニー、真新しい球場の、鮮やかな芝生が目に眩しい中で、ファイターズは、どうしても勝たなければならない試合を落とす。
夢のボールパークを支配したのは、北海道から東北へ、さらにアメリカに羽ばたいていった、田中将大だった。

ファイターズの先発、加藤貴之の仕上がりは良かった。
しかし、試合前、投球練習をする彼の表情も仕草も、いつもとは違った。
なんかギクシャクしてるのだ。
(ものすごく緊張しているな)

緊張するのは、当たり前だ。マー君だって緊張してるのだ。
でも、試合終わりのインタビューで彼は、こう言った。

「ぼくは経験がありますから」

なんたる堂々とした言い草(失礼)いやいや、言葉と態度だろうか。
つまり、ファイターズは、格負けしてしまったのである。

こういう「世界の始まり」みたいな大きなゲームには、それにふさわしい器が必要になる。マー君の器は、球場全体に波及できるレベル。
ファイターズには、同格の器を持つ者は誰もいなかった。
選手は仕方ない、あえて若い経験のない者を選んでいるのだから。荷が重いのは、初めからわかっていたこと。
その役割を担えるのは、新庄さんしかいなかったはずだが、監督の表情は、やはり選手と同じようだった。

マー君には、明確な「勝つイメージ」があった。
一人一人の打者へ打ち取るためのプランを持ち、一打席ごとに配球は考えられ、ファイターズの若い打線は、対応することが出来なかった。

新庄監督は、キャンプの練習試合から一定のメンバーを選んで、打順もある程度固定させる方針を明かしていた。実際オープン戦までは、その形で進んでいた。1番五十幡、2番上川畑(石井一成)3番松本剛 4番野村祐希 5番清宮幸太郎 6番DH  7番石井一成(上川畑)…ライトとキャッチャーは、試合により入れ替わる、ような感じで。

怪我人も多く出て、当初の構想とはかなり変わったかもしれないが、開幕戦へのイメージ図は、作られていたと思う。
しかし開幕前日になって、新庄さんは、「オーダーは3パターンある」
「明日の朝の表情を見て決める」と話し出した。

ああ、不安になっちゃったんだなと、わたしは思った。
そして、あの夜のベンチでの選手たちの表情も…

いざ開幕の2時間前にオーダー変更。
1番松本剛 2番上川畑 3番石井一成 4番野村祐希 5番清宮幸太郎…9番五十幡

スターティングメンバーの選手は変わってない、打順が変わっただけだー選手はいつでも何事にも対応するのが、プロ野球選手だ。

と言ったって、それはある程度の経験を積んだ者に当てはまることである。
今のファイターズの選手たちは、皆若く、経験も少ない。松本剛は13年目だが、レギュラーの中心選手、さらに選手会長としてすべてを引っ張る立場は初めての経験だ。ことさら新球場の開幕で、いわばあらゆることが「初めての経験」なのが、実際のファイターズだと思う。

初めての経験に、初めから対応できる人間は、そういない。
自分自身がどういう状態になるのかは、やってみないとわからない。
だから緊張するんでしょ。

でもだからせめてしっかりと準備しようとしてきたのに、いきなり3番バッターから1番バッターに「イメージを変える」ことが簡単にできるのか。
そしてなによりも、その新庄監督が提示した打順の意図を理解し、打線のイメージを共有する時間が、選手たちにはあったのか?

2時間でできるとは、わたしには思えないけど。
せっかくみんなが必死で、2月から繋ぎ合わせてきた開幕へのイメージを大事にしてもらいたかったなーとは思う。

試合の後の監督会見で、「選手たちを見守ります」と新庄さんは語った。
自分がでしゃばりすぎないという意味でしょうけども。

自らの不安は、勇気を持って、みんなで共有するべきだよ。
みんな同じ気持ちー弱さを持っているんだって、心からわかるとき、監督のなすべきことも見えてくる。
やっぱり「初めての経験」に、一番緊張し迷走してるのは、初心者監督新庄剛志なのだから。

(文中敬称略)


















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