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全て伝えるのは野暮である -占星術師に求められる情報の編集力と加工技術-

真理であるのか、諦めか。ちょっと判別つかないのですが、私の中には常に、「全てを伝えることは不可能である」という頭があります。いや、もう少し正確にいうならば「全てを伝えようとするのは野暮である」でしょうか。とにかく、一気にたくさんの情報を相手に与えることに対して、抵抗感が半端ないです。それは暴力に近いぐらいの感覚です。こちらが理解していることを相手にも同様に理解させようと、情報を羅列することは暴力である。そんな感覚があります。

これは多分、つまらない授業を受け続けてきた学生時代のトラウマです。年が幼い、というだけで、聞きたくない、なんの面白みもない人の話を延々聞かされるのが苦痛で仕方がなく、基本学校が嫌いでした。だから今、自分は学校を作っているのだと思います。自分が良いと思える学校を自分の手で作る。そんな思いで今の仕事をしています。

というのはどうでも良いのですが、とにかく、つまらないもので人の時間を奪うのは暴力に近いとまで思ってしまう性分のためか、私は本業である占いの仕事、特に鑑定文を作成する際には、いかに文字数を短縮できるか、かつ、人の心を打つものにできるかに、非常に強いこだわりを持っているのだと思います。

さて、冒頭の「全てを伝えるのは野暮である」の話に戻りますが、ホロスコープからわかる情報というのは、実は膨大です。あの、一枚の絵みたいな、図みたいな、記号しかないホロスコープ。あそこには本気を出せば、一冊の本が書けるくらいの情報量が詰まっています。自分の性質や運勢に関することだとはいえ、初めましての相手から、そんな情報量を一気にぶつけられたらどんな気持ちがするでしょうか?たくさん情報を教えてもらえるのはうれしいことではあるものの、「もう少しまとめておけよ!」と心の中でツッコミを入れるお客さんは多いはずです。

こちらがホロスコープを通してわかったことを全て伝える。これは正しいようでいて、野暮なのです。占い師の仕事は「読むこと」ですが、それ以上に「伝えること」も大切で、伝えるためには、読んでわかったことを編集する力が必要なのです。知り得た情報をどのように編集するのか。そこでこそ、実は占い師の力量が問われます。
わかったことを漏れなく羅列するだけなら、人間よりAIの方がたぶん得意です。人間である私たちは、そこから一歩踏み込まなければなりません。わかったこと・読めたことから、伝えるべき優先順位を決め、相手の頭に残る言葉、相手の心に響く言葉を使い、相手が受け止めやすく追いやすい順番に情報を構成立てる。これが占い師に求められる編集力です。

赤に気をつけてください。それから黄色にも気をつけてください。あとは青にも気をつけてください。

これでは気を付ける気が失せるのです。

赤には絶対に気をつけてください。黄色や青も気になると思いますが、赤に気をつけていればあとはなんとかなります。

こんな感じで、情報に強弱をつけ、相手の心と頭に残る構成で伝えてください。

そして、もう一つ、欠かせないのが想像力。こういう星のもとにある人には、何が起こるのか、その時どんな気持ちになるのか。何を決断し、どう行動するのか。それを想像すること。ここが欠如しているうちは、あなたの鑑定文にメッセージが宿ることはないでしょう。

星を読み解くことだけが占い師の仕事ではありません。読み解いたものから、個別の事情・状況・思いを立ち上らせ、それを編集し加工する技術こそが、占星術師に求められるものです。

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