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タロットカードと会話する女

「ねぇ、あの子最近の雰囲気なんだかおかしいけど、どう思う?」

私はタロットカードにある女性についてお伺いをたてた。

もっぱら噂話や悪口は他人にはせず、最近の私のお友達はタロットカードと結果を記録するノートとペンのみとなった。

人の噂話はカドが立つ。

軽い気持ちで話した噂話も、本当に良くない循環を繰り返して回り回って私自身にショックな大変な出来事が起こるようなことがあった。

30代半ば、どんぐりの背比べをするもの同士で落としあったり色々やらかしてきたのだ。

あらかじめ人に話すことはしないと決めておいた方がまだマシだという結論に最近至った。


悪口中毒になってる自覚ない時点で正直ヤバい。崩壊の合図だ。


私の問いにタロットはこう答えた

カップ7 R (彼女、気がついちゃったの)

カップペイジ R (愛が貰えないって、だからちょっと悪意を持ってる)

ペンタクルキング R(本当は自分がお金儲けや影響力つけたかったけど、それができないってわかっちゃったの)

※R=逆位置



「ふーん。そうかぁ、

でも突然どうして、彼女そういう考えに至ったのかな?」



ソード3(傷ついたんだよ)


「そうなのか…」


何に傷ついたのかはタロットには聞かなかった。
傷ついた理由は寂しさかもしれない、嫉妬心かもしれない、幼少期からのトラウマかもしれない。

人が傷つく理由なんて無限にありすぎて、いちいち目の前にいない他人の心のヒダまで詮索する気にはなれなかった。


タロットカードの結果は不思議とは物事の本質をつく、人に例えるなら本質的で時に辛辣なことを伝えてくる人だ。

何事も甘ったるいだけじゃ、身体も心もブヨブヨにものになる。

だから世界には良質なお塩がいる、タロットの辛口さは人々には必要な辛さなんだ。


私には独身で同居人も居ないし、身近に住む家族もいない、このご時世で気軽に会える友達もいない。

すっかりタロットがお友達で、大切な家族なんだ。


何より子どもの頃から不思議なものや神秘的なものが好きで、いつもそういった世界が私の側にあった。


まずは祖母。
夢の中で観音様や死んだ人が現れてメッセージを受け取ったと言っていたり

まるで白昼夢のように、現実の世界から近未来のビジョンを見いだして、周りの人々の小さな手助けをしていた。


私は幼少期にすっかりそういった世界に心酔して、幽霊、UFO、宇宙人、占い、スピリチュアル、都市伝説、夢、ドラッグにより体験など、ありとあらゆる不思議なものを書籍や映像で調べては熱が冷めるまでは、そのことで頭がいっぱいになった。


私は祖母のような特殊な能力はひとつもない。


タロットカードとそこそこ会話ができる女というより、タロットカードを使った自己対話の時間がひたすら長くて得意な女ってだけなのかもしれない。


あとはタロットカードとの対話が好きだからといっても、占い師になりたいか?と問われれば、答えはNOだ。

他人のお悩みを解決、ましてや悩む人の話を聞くなんてまっぴらごめんだ。


ただただ神秘的な世界に一人で浸かっていたい。

出来ればお勤めや家事、子育て、ビジネスなど、現世的に人々がやらなきゃいけない、成し遂げなきゃいけないとされること全てを放棄して、長時間ぷかぷかと湖に浮かんでいたいかのように。

不思議で神秘的な世界の事ばかり考えて、日常生活でも感じられるように生きるのが私の願いである。


なるべく長時間、集中してそういった世界に浸り続けたい動機があり、お恥ずかしいながら30半ばで自分が作家志望だということに気がついた。

好きが高じれば30代半ばでも新しい夢はわくのだ。


さて話は、私に莫大な影響を与えた祖母の話に戻る

祖母は一昨年の夏に亡くなっている。83歳の大往生だった。

葬儀・告別式後の出棺、車での移動はまるで黄泉の国にドライブしにきたかのような不思議な感覚に包まれた。

少し怖いと同時に爽快感があった、明らかに私たちが普段住む世界とは違う空気感を醸し出していたが居心地は不思議とよかった。


昔、オカルト記事で読んだ「サマーランド」という場所みたいだと思った、サマーランドは私たちの住む世界と似ているけど非なる場所。

サマーランドは日が沈まない、そしてなにより成仏していない死者達が姿形を持ちながら普通に生活をしているという特徴を持っているらしい。


そのサマーランドに葬儀の参加者全員でドライブしているような気分だ。

さすが祖母のお葬式だ!と私はえらく感激した。


祖母の葬式が一通り終わり。

お疲れと労いの意味をかねて母にタロットカードを一枚ひいてあげた。


その時にひいたタロットカードは「トート・タロット」という種類のタロットで、作り出した人間が魔術的なものに精通しており、トート・タロットが発表されたのは1940年代(カードとして発行されたのはもう少し先)だから

80年近くたった今でも、非常に根強く人気のあるタロットカードだ。

引いたカードはディスク1


(全てのまた始まり)


私にはそういったメッセージのように感じた。それをストレートに伝えたら母はなぜか涙を流していた。

祖母の肉体が死を迎えた時、悲しみと同時に私たちに強烈な癒しをもたらしてくれた。

生きている私たちをサマーランドにまで誘って、魂を転生(リボーン)をさせてくれた。


やっぱり私たちの魂のルーツは母なる不思議な世界そのものだ。


その世界と現世をどこか架け橋で繋げてくれるアイテムのひとつがタロットカード。


これからも不思議な世界に心酔し続けたい私の大切な相棒である。


川ばたりえ

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