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銀の時代の101人の女性詩人たち

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20世紀初頭のロシア文学の銀の時代――歴史に輝く詩人たち、思い出されることも少なくなった詩人たち、存在も知られていない詩人たち、ひとりひとりを紹介していきます。出典はСто од…
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2020年4月の記事一覧

埃だらけのすももを売ればよい

   埃だらけの すももを売ればよい    広場で 安値で    賢き者も 幸せな者も ことばを知らず    なによりつまらぬ才は 俗世に囚われしこと     像も流れも 黄昏ゆけばよい    富める都市人らの 空虚な庭では    異国の賜物をうけとるための    理性あることばを 私は決して見つけえぬ アデリーナ・アダーリス(1900-1969)の叙事詩『日々』のプロローグ。1920年頃に書かれた詩のようだが、ぺテルブルクで生まれたアダーリスがちょうどモスクワへ移った頃?

私はとても幸せだった、つまり、とても孤独だった

      *** 凍てついた晩に ふざけて口にしたことを 朝になって 嘘だったとは云うまい なにかの足あとが 星のように 雪のうえに つづいている さようなら 副馬たちが眠たげに ぴんと張った手綱のさきで 身を震わせる 揺れでもすれば かしいだ頸木の端を 道標が引っ掻くことだろう 黒ずんだ轅が 不規則にたわむたびに わたしは思いだすのだろう  あそこでは 友らが笑い いつもと同じ椅子や机があることを 暖かで重い扉の向こうには 湯気に 煙に 声 そうね 今日の私は最後