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「歴代誌」


「内容」

 歴代誌はアダムに始まる系図で始まり、人類の始まりから著者の時代(捕囚後の時代)に至るまでの歴史を提示している。列王記はイスラエルの過去についての否定的な物語を選んでいるが、歴代誌は肯定的な物語を多く語っている。
 この書の第1の部分は、系図に関する長い記述で始まる(11~9)。捕囚後の世代に対して過去の世代とのつながりを示している。北の部族の系図も含めることで歴代誌の重要なテーマである「全イスラエル」という自覚を神の民が失っていないことも示している
 第2の部分は、統一王国時代が描かれている(Ⅰ10~Ⅱ9)。歴代誌は、サウルの治世の記述は省かれ、サウルに関してはサウルの死だけ書かれている。ダビデとソロモンの治世を記述する上で、王から王への移行の複雑さやその否定的な側面を省略している。
 ダビデがバテ・シェバにした罪、アブサロムの反乱、ダビデからソロモンの移行の混乱は省略されている。ただし、ダビデの人口調査に関する罪は、否定的な内容であるが、書かれている。また、第1神殿の建設に関する内容は、重点的に書かれている。
 残りの部分は、分裂王国時代から捕囚までの出来事を記録している(Ⅱ10~36)。
あまり否定的な出来事は強調されていない。列王記は、捕囚が起きたことを説明するため報い(偶像を崇拝するという神に反逆した罪を犯した結果)の遅延を強調したが、歴代誌は、将来神のさばきにつながる罪を防止するため、即時の報いが強調されている。

「著者と年代」

 著者は不明であり、前539年以降に書かれている。捕囚期より後の時代に追加された内容もある。書かれた目的は、「我々と過去とのつながりは何か」「今どのように行動するのか」という問いに答えるためである。

「文学ジャンル」

歴史物語

「つながり」

 神が自らの民を回復させるために、どのように働かれるかを物語っている。列王記はこの王たちの失敗を強調し、より優れた方、つまり真の油注がれた王であるイエスを指し示す。一方、歴代誌は王たちをもっと肯定的に評価している。特に、ダビデとソロモンはメシア的な輝きを放つ者として描き、ダビデの大いなる子孫である御子の栄光を先取りしている。

「適用」

歴代誌は、統一王国から分裂王国の物語を、別の視点(どちらかというとプラス)から見れるので、幅広い角度で聖書物語をとらえることができる。
古代においては、列王記が過去の失敗を繰り返さないための教訓として、歴代誌が、これからの未来の希望やどう行動するかの指針として読まれいたように思える。

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