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バンギャのクローゼット

“バンギャは普段着を持っていない”という話をよく聞くが、わたしも例に漏れずである。

普段仕事で着るのは黒のパンツ、カットソーやブラウス。全身黒で何着かを着回ししている。

ライブで着る服はここ数年でゴスに偏ってしまった。こちらも黒で長袖、もしくは変わったデザインをしている。

黒は好きだし、今までお出かけ=ライブだったし、それ以外でもバンギャとしか会わないので特に問題が無かった。

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ここ最近、仕事とライブ以外で出かける事が増えた。たいへん喜ばしいことだが、着ていく服がない。「そんな大袈裟な」と思うかもしれないが、本当にない。

これが冬なら、まだどうにかなった。
真っ黒のゴスワンピースでも、革のスカートでも行けなくはない…… かもしれない。
しかし、季節は夏。黒の長袖はさすがに暑い。
見ているだけでイヤになりそう。

昔々、激痩せしていた頃に愛用していた古のギャル服を出してみたり、普段着ているブランドであまり暑苦しくないワンピースを買ってみたりした。

真夜中の通販はex.ロリィタの血が騒いで気が狂った柄ばかり買ってしまう。また最近太ってしまい、望まぬバストアップをしたため、サイズ選びも難しかった。
連勤中の真夜中に買った猫の総柄ワンピースは、結局日の目を見ずにいる。
可愛いんだけどね。すごく。

今は亡きブランドのギャル服は意外にも大丈夫なのだが、そればかり着るわけにもいかない。
今着ても可愛いんだから、絶滅を悲しむばかりである。

結局のところ、明るいお日様の下でデート(仮)する時に着るような服がない。

いったい、世の中の女子はなにを着ているのか?
困って調べてみても、好みではない。
フリルとリボンとレースを愛しているため、「普通の服」を買うのは気乗りしない。

デザインとサイズ選びの難しさに辟易して、結局大手のリーズナブルなお店の、お手頃価格のワンピースを買った。

ワンピースが好きなのは、一枚で着れるからである。あまり好きではないロング丈だったが、スリットが入っているし胸元も開いているからよしとした。試着した甲斐がありサイズもぴったりで良かったし、なによりお安いので気兼ねせずにジャブジャブ洗える。

お出かけは楽しく、「ちょっと飲み過ぎたな」と思って駅に向かっていたら久々に知らない男性から声をかけられた。

「とても素敵なワンピースなので声をかけました」

わたしは心の中で爆笑した。
たしかに可愛いんだけど、めちゃくちゃたくさん売っていて、きっとたくさんの人が着ているワンピースである。
言葉は悪いが、どこにでもいそうな感じ。
この親しみのある服装が、なんかいけそうだと思わせてしまったらしい。

「その声のかけ方、いまいちですよ」とのご意見は心にしまって、酔っ払いのフリをして無事に帰宅した。

なお、好きな人からはなにを褒められても嬉しいため、軽率に褒めていただきたい。



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