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『歎異抄』 13

またあるとき、唯円房はわがいふことをば信ずるかとおほせのさふらいひしあひだ、さんさふらふとまうしさふらひしかば、さらばいはんこと、たがうまじきかと、かさねておほせのさふらひしあひだ、つゝしんで領状まうしてさふらひしかば、たとえばひとを千人ころしてんや、しからば往生は一定すべしとおほせさふらひしとき、おほせにてはさふらへども、一人もこの身の器量にては、ころしつべしともおぼへずさふらふと、まうしてさふらひしかば、さてはいかに親鸞がいふことを、たがふまじきとはいふぞと。これにてしるべし、なにごとも、こゝろにまかせたることならば、往生のために千人ころせといはんに、すなはちころすべし。しかれども一人にてもかなひぬべき業縁なきによりて害せざるなり。わがこゝろのよくてころさぬにはあらず。また害せじとおもふとも、百人千人をころすこともあるべしと…

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