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オリジナル作品「がんばれ!テントウ虫君!」

やぁ、おいらテントウムシ。まだまだ子供で、ちょっぴりドジなナナホシテントウムシ。着陸して皆に話そうかな。
いてて・・・またこけちゃった。
改めて、おいらテントウムシ。よくこけちゃうテントウムシ。生まれた時からドジで、よく転んじゃうんだ。だから、空を飛んだ後は毎回地面にぶつかっちゃう。そのせいでいつも傷だらけ。でも、おいら、空を飛ぶのが好きなんだ。
あ!あれは、おいらが大好きなナミテントウムシさんだ。ナミさんって、綺麗なんだよなぁ。背中の赤い丸がかっこいい。太陽みたいだ。
おーいナミさん!
「あんた、また転んだの?懲りないねぇ。あんたのテントウは転倒って意味なんだねぇ。そんなんじゃ背中に背負ったお星さまが泣いてるよ」
違うよ!おいらの名前のテントウは天道、お天道様の天道だい!
「じゃあ、あんたまともに飛んでみなさいな」
それは、まだ出来ないけど、今はまだ子供だからうまく出来ないんだ!成虫になる頃には、誰よりもたかく飛んでやる!あの太陽よりも、星よりも高く飛んでやる!
「何回も聞いたよ、その話。まぁ、頑張るんだねぇ」
ナミさんの羽が羨ましいよ。その太陽みたいな模様
「これ?ありがとう。あんたの黒い丸もいいじゃないか。それは星の模様なんだよ」
星?太陽と違うの?
「太陽も星なんだけど、だいたい夜にみえるやつさ」
月のこと?
「それもちょっと違うかな」
よくわかんないや・・・・・・じゃあね、ナミさん
「今度会う時はうまく飛べるといいねぇ、一月後ぐらいには飛べるかしら。また次の満月の時に、飛べたら嬉しいわね」
おいらの夢はナミさんと一緒に飛ぶこと。だから、がんばって、あの太陽よりも高く飛んでやるんだ。
何回も、飛ぶ。何回も身体を葉っぱにぶつけて着陸。でもまだあきらめない。あの太陽に向かって何度も飛ぶ。がんばるんだ。がんばるんだ。
そうして、おいらは飛べるようになった。
その日は満月になる前日だった。
ナミさん、おいら飛べるようになったよ。
「そう、がんばったね」
次の満月までにと思って、急いだんだ
「テントウ君。あんたに言わなきゃいけないことがあるんだ」
なんだい?ナミさん
「私はもう飛べないんだよ。そろそろ寿命だからね」
そんな、嘘だ
「案外他人の月齢なんて分からないもんだろう?でも、わたしはもう限界さ」
ナミさんと一緒に飛びたかったんだ
「あんた、今飛んでおくれよ」
わかった
おいらは飛び始めた。傷で少し欠けた羽を羽ばたかせて・・・・・・
「最後のフライトだよ」
ナミさんは飛び始めた。綺麗な羽のどこか頼りない羽ばたきが見えた。
ナミさん!飛んでるよ!
「飛んでるね。あんたもうまくなったもんだ。このまま飛ぶんだよ。あんたナナホシテントウ。星を背負った天道だよ。私はこのまま星になるから」
そう言ってナミさんは力なくアスファルトに落ちていった。
僕はナミさんのもとへ向かおうと思ったけど、このまま飛ぶんだと思って飛んだ。少し離れた着陸によさそうな葉に静かに降りた。ナミさんを思い出しながら、どこかに姿を探してふいに空を見た。空に何かが光っている。あの星のどれかがナミさんなんだ。直感で分かった。おいらは初めて星の形を見た。
ナミさん!
おいらはナミさんに会いたくて、空へと向かって飛んだ、一直線に飛んで、まっすぐ飛んだんだけど、ナミさんはどんどん逃げていく。まってナミさん!
おいらは一生懸命追いかけたけど、ナミさんは見えないところに消えていった。
代わりにまた太陽が昇ってきた。いつもみたいに、静かに一人で飛び始めた。
負けない。あの夜、ナミさんは星に向かって飛んだんだ。おいらは今日もあの太陽へ飛ぶんだ。
「お兄さん。飛ぶのが上手いのね」
まぁ、努力したんだよ。君もすぐに飛べるようになるさ。一緒に飛ばないか?次の満月にでもさ

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