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人魚ちゃんは私の死因じゃない

 『人魚ちゃんは私の死因じゃない』という事に気付いたのはつい先程だった。終末の時に何をする?という質問を聞いた折だった。私は私が人魚ちゃんに食われて死ぬ事は出来ないという当然のことを発見した。
これは思っていたより強い衝撃を私にもたらした。
考えてみずとも当たり前のことだ。"人魚ちゃん"は私が2022年の8月頃に描き出した架空の創作キャラクターで、一次創作を始めたばかりの頃、私の手慣らしの一環で生み出された。
設定は後から私の都合の良いように肉付けされた。妄想の産物で、私の死因にはならない。
 こんな単純な事を忘れていた。私はある種の冗談として、不可能な事だと分かっていて「人魚ちゃんに食べられたい」「人魚ちゃんを食べたい」と言っていたつもりだった筈が、言い続けている内に信じ込んでいたらしい。2年も経てばそんなものだろうか。

 終末、私の死ぬ時に私は人魚ちゃんに食われて死ねないと知って私は困惑した。それ以外に出来ること、好きな事と言ったら食べること。は駄目なら絵を描く事だ。私は彼女を描こう。
でも私はどうやって死んだら良いんだろう?溺死か?発狂した隣人に殴り殺されるか?それとも隕石でも降ってきて呆気なく死ぬのか?
なんだか分からないガスとかでじわじわと死ぬのは嫌だな…
彼女が殺してくれるのなら良いのだけど、人魚ちゃんのいない死というのは悲しい。

 そもそも死ぬ前に…という話で人魚ちゃんに食われることを真っ先に思い浮かぶ辺り、人魚ちゃんに食われるということは私にとって死因以上の意味があるのだろうか。
 人魚ちゃんに食われるということは人魚ちゃんの一部になるということだ。人魚ちゃんを食べた場合でも内側から食われて結局人魚ちゃんになる訳で、私は人魚ちゃんと同化したいのかもしれない。
人魚ちゃんは、私の好きなものが詰め込まれたいきものだ。可愛らしい少女のような姿だとして私の認識を改変し、私が和やかに談笑していると錯覚している間にも私の血肉を啜る獰猛な野生動物で、かわいくて、歪で、不老不死!不滅の生命だ。分裂し、再生して血脈を繋いでいくのだ。
人魚ちゃんは動物で、純粋に自身の生命の維持と、繁殖の為に人間の悲鳴を模倣した鳴き声をあげる。かわいいし…それこそ認識改変能力のお陰で私は自分が食われていることに気付けない。最高の安楽死なのではないだろうか?
おそらく確実に息の根が止まる程一人の人間を食べることを人魚ちゃんがあまりしないし、もし瀕死の状態まで行っても認識改変で頭をぐちゃぐちゃにされた私はそこそこそのまま生活を送るだろうが、多分時間の問題だろうし。
知らぬ間に取り返しの付かないことになってるのって恐ろしくてゾクゾクしますよねぇ!…何の話してたっけ?
 そもそもこういう恐ろしいものに惹かれるのはなんなんだ?私は実は死にたいのか?てっきり希死念慮なんかとは無縁の人間だとばかり自分のことを思っていたのだけど?
考えてみても、私が死にたがっているとは思えない。むしろ死、めちゃくちゃ怖い!まだ死にたくない!!
じゃあやっぱりその恐ろしい死からの逃げ場として人魚ちゃんに縋っているのかもしれない。未来は不確定で恐ろしいものだ。そんな不確定な未来、死因への不安を人魚ちゃんは解消してくれる!
人魚ちゃんに食べられて死ぬなら安心だ。かわいいかわいい人魚ちゃんの糧になれるというのは私の中ではとても素晴らしいことなのだ。まだちょっと嫌だけど。
 書いていて思ったのだけど、色々並べ立てても結局私は人魚ちゃんの事が大好きだから、人魚ちゃんが存在しないということを改めて直視して衝撃を受けたのでは無いだろうか。だって人魚ちゃんってかわいいから…
 私は人魚ちゃんに恋でもしているのだろうか?恋でも執着でもなんでもいいけど、願わくば数十年後も人魚ちゃんを好きで居たい!好きだったものに無関心になるというのは悲しいものだ。この熱量でずっと燃え続けていたいと思っても、好きで無くなってしまったものは沢山あって、その度私の薄情さには失望する。
薄情さ以外にも私には醜い部分が余りにもたくさんあって、どうにかしなければと漠然と思うことはあってもどうにもなっていない。
私の性情がどうしようもなく醜いものだから、人間性を持たない人魚ちゃんが愛しいのかもしれない。
どんなに醜悪な人間性を持っていようと人魚ちゃんにとってはただの肉塊、獲物だから、等しく捕食して消化して生命の糧にしてくれる。人魚ちゃんは救いなのかもしれない。
でも私の死因は人魚ちゃんじゃない。
悲しいけど仕方の無いことだ。私の幻覚は現実になることは出来ない。

 私の死因は人魚ちゃんじゃないけど、じゃあ老衰とか…溺死とか…樹木葬とか?を目指して絵描いたりしながらぼちぼちやっていこうと思う。適当なタイミングで人魚ちゃんに食べられてHAPPY END‼️が出来ないならそれなりに生きていくしかないだろう。あっ鳥葬もいいな…これは死後か。ダイヤモンドにもなってみたい!死後も夢広がりますね。

それではまた。

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