ウマ娘でにわかファンになった自分が小説のようなものを書いてみた

おいっすー、ナイスネイチャでーす。

トレーナーさん、ガチャをいっぱい回してるー。
あたしがいるじゃん。あたしじゃ不満なのもわかるけど……

な、なにこれ。竜巻かなにか?


ここは…どこ? というより、このイケメンは誰?

すごーいイケメン! そしてその腕の腕時計すごい高そう!こんなん見たの初めて!

「こんにちは、ネイチャ」

?!

「あなたは…私を知ってるのですか?」

「あなたが実際走ってたのも知ってたし、ウマ娘になって人気なのも知ってますよ」

な、なんなの、このイケメン?

「あなたは、僕の少年時代に一番好きなお馬さんでした」

は? 少年時代? なんなの怖〜い!

「僕の父は、あなたを管理していた松永善晴厩舎の厩務員を当時していて、あなたの担当の厩務員さんにも良くしてもらっていましたよ。おこづかいまでもらったりして」

は、はあ?

とにかく、イケメンで金持ちなのは間違いなさそうだけど、絶対彼氏になってもらえないパターンじゃん。つうか、どんだけ年下?

「ウマ娘のあなたは僕をご存知ないようですね。僕はJRAジョッキーの和田竜二です」

ええ〜! 超有名人じゃん! 彼氏無理! つうか、既婚者だし、子煩悩で有名だし。

「多忙なあなたがなぜここに? いや、私もここがどこなのかわからないのですが」

「ここは、実際のあなたが余生を過ごしている渡辺牧場さんですよ。今僕は『和田竜二の引退競走馬を追う』というYouTubeチャンネルをやっていて、今日はたまたま実際のあなたを取材に来たのですよ」

彼の視線の先にいる、白いメンコをした馬が私?

「レースに出ないのにメンコ…?」

「目を怪我されてるようですね。柵に目をこすりつけないように片目をガードするメンコをつけています。あなたは、ここでもとても大事にされていますよ。とても良い牧場で余生を過ごされています」

「は、はあ。ところで、私って何歳なのですか?」

「人間でいうと、90、100をゆうに越えてるでしょうね。まさに『素晴らしい素質』です」

「いや、まあ… でも、なかなか勝てなかったですし」

「G1の3着は立派ですよ。しかも有馬記念の。そこまでたどり着けない子の方がずっと多いですし、どんな条件でも走ったあなたは、とてもタフな馬でしたよ」

そんなふうに褒められると照れちゃうな。

彼は、そんな私の心を見透かすように言った。

「照れる必要はないのですよ。あなたは本当に走ったし、そんなあなたのファンはとても多かったですよ。ウマ娘のあなたの、折り紙が得意なネタの元ネタはご存知ですか?」

確かに、ウマ娘の私は、折り紙が得意なことになっている。しかし、その理由は自分でもわからない。

「実際のあなたにはとてもファンが多くて、いつもファンの方からの千羽鶴が絶えなかったのですよ。それが元ネタなんじゃないですか?」

そ、そうなんだ。

と、とにかく、実際のナイスネイチャがいたから、ウマ娘のナイスネイチャがいるんだな。

和田さんは言葉少なくなり、熱心に実際の私を見つめていた。

私は、和田さんに言われた言葉を反芻してみた。
そして気づいた。口調は違うけど、オペちゃんがいいそうなセリフだったこと。

思い切って本人に言ってみた。
「和田さんが話してくれたこと、とてもオペラオ
ーが言いそうなことでした。というか、噂通りオペラオーが和田さんに似ているというか、ウマ娘の」

「僕がウマ娘のオペラオーに似てる?」
と言った後は言葉で返事せずに、本当に明るく楽しそうに笑った。その笑いはオペラオーのような、いや、もっと眩しい笑顔と笑い声だった。

「トレセン学園に戻ったら、オペラオーに、和田さんに会ったと伝えます」
「オペラオーにくれぐれもよろしく」
「ドトウちゃんにも」
「そうだな、ドトウがまだ生きてるうちに会いに行かなきゃね。人でも馬でも、会えるうちに会っとかないと」
「オペラオーはもちろん、実際のドトウはどうでしたか?」

答えは意外なものだった。

「ドトウはとても強かったよ。とても強いライバルで、ドトウにさえ勝てればそのレースは勝てると思うくらいに」
「そ、そうなんですか?」
「どんな条件でも勝ちにくるタフな馬だったし、普通勝ちにくる馬が負ける時は5着くらいに沈むんだよね。それが2着にくるんだから。
オペラオーはハナに立つ(先頭に立つ)とソラを使う(走る力を拔く)から、ゴールぎりぎりまでハナに立たせないようにしなきゃなんないんだよね。そんなときドトウの後をついて行ったら間違いなかった」

「ドトウちゃん、ネガティブだったりドジだったりするけど、それに惑わされちゃダメなんですよね」 
「ウマ娘のドトウはそういうキャラなんだ」と和田さんはまた笑った。その笑顔を見て、ウマ娘のオペラオーは和田さんそのものなんだと思った。

多忙な和田さんは、取材を終え、帰って行った。

ハッと我に帰ると、どうやったらトレセン学園に帰れるのかわからない。どうしよう?


遠くでは、実際の私がごろーんと砂浴びをしている。気持ち良さそう。

え?立てない?

ヤバいじゃん、あたしって、超高齢なんだよね。

人間が集まってくる。ロープを持ってる人も来た。ロープで引っ張るの? きゃあ!

ロープに躓いて転んだと思った。

立ち上がったら、トレセン学園に戻っていることに気がついた。どういう訳なのか全く分からないが、早くオペちゃんとドトウちゃんに、和田さんに会ったことを伝えなきゃと思った。


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拙い文章を読んでくださり、大変ありがとうございます。

ウマ娘と「和田竜二が引退競走馬を追う」YouTubeチャンネルを知らないと全くわからない内容だったと思います。

「和田竜二が引退競走馬を追う」のチャンネルが好きで、特に渡辺牧場の回が大好きで、何回も繰り返し観ています。
とても優しい声と口調に癒やされます。

メイショウドトウについても、あるインタビュー記事を見つけてから、何回も繰り返し読んでしまいます。

引退馬協会さんの、渡辺牧場だよりも読んでいます。最新の記事では、ネイチャがごろーんしたあとなかなか起き上がれないでいる様子の記事でした。とても心配です。

和田さんが取材したときにはそんなこともなく、とても元気だったようですが、最新記事の内容も勝手に反映してみました、というか、反映させずにトレセン学園に戻す方法が分からなかった自分の稚拙さですね。

とにかく、読んでくださりありがとうございました。










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