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【民主盛岡文学】五十号発刊を記念して

              柏朔司

遂に『五十』号の峰に達したかと思うと感慨深いものがあります。年二回の発刊だから四半世紀に及びました。この間、本誌に執筆してくださった方々や雑誌を購読して支えて戴いた皆様に感謝を申し上げます。
よく同人誌などでは、三号雑誌と揶揄される事も珍しくありません。実際、私達も七十年代、旗揚げした時は二号で挫折しました。こうした苦い体験から『九十年代』に三人が集まって復刊三号を発行した時には、各人は毎号必ず作品を書く事。財政的基盤を確立する事。という盟約を結んで再出発しました。今年も、年頭の盛岡支部総会の『方針と課題』の冒頭には、『現実を直視すれば書かなくてはならない事は無数にある。こうした立場で【民主盛岡文学】年二回の発行を堅持する』と明記しました。初心忘るべからずの決意であります。
さて、【民主盛岡文学】は日本民主主義文学会:盛岡支部の『機関誌』ですから、支部活動とは車の両輪とも言うべき関係で歩んできました。そうした意味で忘れ難いのは、【民主盛岡文学】四十四号の『東日本大震災:緊急特集』の発行です。
私達が大震災に見舞われたのは、ちょうど支部誌の原稿〆切りの十日前の事でした。あまり暖のとれない置きストーブと、節電で薄暗い公会堂での編集会議の結果、未曾有の震災体験を書き残そうという事になり、『大震災:特集号』を企画しました。早速、三陸沿岸に飛んで記録写真も撮り『特集号』はメーデーの日に発売する事ができました。
この特集号は、『地域における文学力』として、吉田格編集長の巻頭文とともに、各方面から注目され、同誌に載った中村恵美『ふるさとに生きて』は『海と人と』に改題されて『民主文学』に掲載され、ついで【民主盛岡文学】四十五号の小笠原栄治『響けこの音』も『民主文学』に転載されました。また『民主文学』の特集『東日本大震災一年と文学エッセイ』には熊谷眞夫『故郷・鎮魂』と鈴木満『盛岡から鵜住居へ』が掲載されました。これらは、地道な支部活動が生み出した成果だと自負しております。
私達は『若い世代』を念頭に、支部活動の裾野を広げるために『文章入門講座〜あなたも書いてみませんか』を二度開催(2009年7月と2010年12月)し、それぞれ二十人前後の参加を得て成功してきましたが、この運動の中から望月笑子『無機質な腐敗』(新人賞佳作)も生み出されました。
一昨年、啄木没後百年を記念して碓田のぼる氏を講師に講演会を開催して成功させ、また【民主盛岡文学】四十七号では特集号を組みました。私達は、啄木の文学における批評精神を継承して前進したいと念じています。
               《以上》

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