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映画『帰ってきたヒトラー』日独の観客の感じ方の違い (960文字)

 第二次大戦でドイツの負けが確定的になったときに自殺した、はずのヒトラーが現代にタイムスリップして出現したときの悲喜劇を描いたのが『帰ってきたヒトラー』です。

 この映画では、現代のドイツ国民の不満が鬱積していて第二次対戦前(第一次大戦後でもあります。)の精神状態に酷似していることと、そのドイツ国民は強い指導者を求めていて、それがヒトラーであっても受け入れ得るのだという危険性を伝えたいのでしょう。そう日本人である私は思います。

 でも、この映画を観たドイツ人はどう感じたのでしょう。
 ヒトラーは「ドイツ第三帝国」と言いいました。これは「神聖ローマ帝国」、「ドイツ帝国(1871年から1918年」と数えて三番目という意味なんですが、このことの意味は西ローマ帝国の時代から「神聖ローマ帝国」を経て第一次大戦の敗戦至る歴史を知らないと「第三帝国」という言葉がドイツ人の心にどう響いたかが分からないように思います。
 でも、当のドイツ人の多くは、自国の歴史ですから熟知しているはずです。しかも、ドイツでは(他の国でも)自国の歴史と愛国心とは密接に結び付いているので、「第三帝国」という言葉は、「ドイツの再興」という陶酔とともに当時のドイツ人は聞いたことでしょう。

 この映画に登場するヒトラーは、説得力のある演説を行い、妙に行動力があって観の危険をかえりみず行動し、また、書籍を通じて自己の主義主張を発表していきます。
 この展開を通じて、過去の有名人の亡霊的出現にドイツ社会が振り回されれいるのか、ドイツ社会がこのような指導者を潜在的に求めているのか、その判断は観る人に委ねられています。

 私は『帰ってきたヒトラー』という映画を、ドイツを理解するための資料として興味深くみることはありますが、これコメディーとして笑うということはありませんでした。

 映画の中でヒトラーは、「老人の貧困、子供の貧困」と言います。
 この言葉を聞いて奮い立たない国民はいるでしょうか。不平等や不公正への怒りに我を忘れそうになりますが、目的が正義と信じることなのでその怒りがぶれることがありません。
 客観的に見ると恐ろしい瞬間に見えます。

 この『帰ってきたヒトラー』は、悪魔が人の心に入り込むときの手法をちゃんと描いていると思います。

#帰ってきたヒトラー
 

 

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