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いろんな意味で紙一重 (1260文字)

 数年前に同僚とクルマで外回りをしているとき、空に昇りかけているような状態の軽自動車を見ました。
 見た次の瞬間には、(何かに乗り上げて宙を舞うことになったのだろうから)さらに空に向かって行くか、放物線を描いて地面に落下するかと思ったのですが、1秒経っても2秒経ってもそんな気配がありません。その軽自動車は地上から60度くらいの角度で射出されたかのようにフロント部を上リア部を下にして上り坂を登っているような姿勢で空中に静止しています。
 クルマの高さは、クルマの下端から地面まで3メートル位だったと思います。

 近くに行ってみると、その軽自動車は電柱を支えるワイヤーに乗り上げ、ワイヤーの途中で動きが取れなくなっているのでした。そのワイヤーは電柱から地面に斜めに伸びているので、その上に乗ったら前述のようなことになってもおかしくはありません。
 そのワイヤーは軽自動車の左のサスペンションに挟まっているらしく、かなりしっかり固定されていました。
 と、ここまでは目撃談なんですが、そういえばその軽四輪に人の姿が見えません。クルマの外装に不自然な箇所はないようなので、乗員の命に別状はなさそうですが、誰もいなさそうなのは気になります。
 クルマから飛び降りたのでしょうか。でも、クルマの運転席と地面との距離は3メートル以上あります。
 無人の軽自動車がワイヤーに乗り上げたとは思えません。
 私達が見たのは、警察車両が来る前だったのだろうと思いますが、同乗者がいなければこの話を誰も信じてくれなかったでしょう。


 別の日の夕暮れのことですが、コンビニでビールとつまみをかっての帰り道(まだ断酒する前のことです。)、信号機のある交差点を横断しようとしたところ、路肩にパトカーが何台か停止して赤燈を点滅させています。
 「事件かな。」と思いパトカーの近くを見ると、軽自動車がセンターライン付近で横転していました。その側には警察官が立っていて交通整理をしています。恐らく起こったばかりの交通事故の現場検証をしている最中なのでしょう。
 道路上にはその軽自動車以外に事故車らしいクルマはありません。「単独事故だとしたら、かなりの急ハンドルを切ったのだろうか。」と思ってパトカーの近くの歩道に目をやると、スーツを着た小柄な中高年の男性が真っ直ぐ歩けるかどうか警官にテストされていました。
 どうも、酔っ払い運転で自動車を横転させ、警官に酔いの程度を試されていたようです。事故を起こした者が無事そうなのでそのような検査をしているのでしょう。
 その小柄な中高年の男性は、真っ直ぐ歩けないどころか、1メートルくらいの振れ幅で蛇行して歩いていたので、逮捕されたかも知れません。

 最初の事故といい次の事故といい、もう数分起きるのが遅ければ私も巻き込まれていたかも知れないと思うとちょっと怖くなります。

 巻き込まれていたら、こうしてnoteに投稿できていないわけで、「人生っていろんなところで紙一重だなぁ。」って思います。

#創作対象2024 #エッセイ部門 #紙一重

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