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潜水艦プラモデルの思い出 (1517文字)

 私が子供のころ、漫画『サブマリン707』が大人気でした。これは、日本の戦後の物語で海上自衛隊の潜水艦707号の冒険を描きます。
 このころ、プラモデルも子供達に大人気で、『サブマリン707』の潜水艦プラモデルが発売されたのは当然の成り行きだったのかも知れません。
 サブマリン707のプラモデルキットの構成は、上下に別れた船体とゴム紐とスクリューそれに若干の部品でした。
 うまく作ると、ゴム動力で前進しながら潜水し、完全に水面下に入ると潜望鏡様のものが水圧を受け(潜水艦が前進しているので前からの水の抵抗を受けます。)、その力で船体についている小さな翼のような舵の角度が変わり(若干上向きの角度がつきます。)、船体が喫水線まで浮上します。するとまた船体の小さな翼のような舵の角度が変わり(若干下向きの角度が着きます。)、また潜水を始めます。後はこの繰り返しです。

 まぁ、これは上手に組み立てられたらの話で、当時の私のような子供がどんなに頑張ってもちゃんとは動きませんでした。
 その一番の理由は、接着剤の質と量にありました。
 接着剤は、キットに入っているのですが、小さなチューブ入りで、ドロッとしていました。チューブの口の部分をペンチなどで切ると切り口が大きくなり、接着剤の出方が多くなり過ぎ、また空気室の蓋を接着するとき機密性を維持できるようにできませんでした(これを「空気室密閉問題」と呼ぶことにします。)。
 これは、マチ針を接着剤の口の部分に刺して開口することで、かなり改善できます。でも、こういう知恵というかテクニックって、模型店に集(つど)う大人の模型マニアに教えてもらうか、プラモデル専門雑誌に書かれているものを読むかしないと分かりません。(当時も液体接着剤が販売されていましたが、子供が買うには高価でしたし、人体に有害とされる物質が入っていると言われていて、親にも買うのを禁止されていました?。現在なら、比較的安価で扱いやすく安全な液体接着剤が多数販売されています。)

 それやこれやで、私の作った潜水艦モデルは、潜行したが最後二度と浮上しないものばかりで、「まぁ、安物のプラモデルだからこんなもんだな。」と諦めムードでした。

 しかし、私の友人に知恵者がいて、この空気室密閉問題を発砲スチロールで解決しました。
 当時は、贈答用カルピスの箱や電化製品を入れる段ボールの緩衝材などに発砲スチロールが多用されていたので、ほとんどの家庭には廃棄されるのをまっている発砲スチロールがありました。
 彼はその発砲スチロールを切って潜水艦の空気室に詰めそれから蓋を接着しました。
 すると空気室に水が入ったとしても発砲スチロールがあるのでそれほど入らず、また、発砲スチロールの異常ともいえる軽さと防湿性ゆえに潜水艦モデルの浮上におおいに役立ちました。
 その友人の応用力には今でも敬意を抱いています。

 ほかにも、スクリューが一個なので、そのスクリューが水中で回転するとその反トルクで潜水艦の船体がスクリューの回転方向と逆の向きに傾くという問題や、そもそもスクリューと動力源となるゴム紐を結ぶ針がねを直角に曲げられない問題、「707」の文字のデカール(当時はスライドマークといっていました。)が水で剥がれてしまう問題など、いろいろな困難が立ち塞がりましたが、今ではいい思い出です。
 つまり、今はそれらの問題全てについて対応策を持っています。

 だれか近所の子供がプラモデル作りのテクニックについて質問に来たら、細かく教えてあげるのに、誰も来ません。プラモデルよりゲームの方が楽しいのでしょうね。

#サブマリン707 #潜水艦プラモデル #発砲スチロール

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