見出し画像

キャッシュ・アウト スクイーズ・アウト (1734文字)

 キャッシュ・アウト(cash out)もスクイーズ・アウト(squeeze out)も、
株式会社から少数株主を締め出すことです。
 「締め出す」といってもただ追い出すというわけではなく、彼ら(少数株主)の持っている株を買い取り、彼らを株主でなくすることによって会社に関与させなくさせるわけです。

 こういうやり方は、「会社は従業員のものだ。」という見解の人には受け入れにくいでしょうが、法律は「株式会社は株主のもの」という考えで作られているのでどうしようもありません。よく、会社と社長(代表取締役)とを同視して、会社財産を社長の財産と区別しない人がいますが、社長というのは法律的には経営者であって株主に依頼されて会社経営している取締役の代表でしかありまえん。日本の株式会社は小規模の場合が多く、大株主が同時に社長(代表取締役)となっていることがほとんどなので、このような誤解が生じるのだろうと思います。

 ところで、会社の経営方針などについて考え方が異なる株主は両立できませんから、力の弱い法(持ち株の少ない方)が会社を追い出されることになります。また、株主が多いとその管理費用もバカになりません。
 株式会社は、最初は大勢から資金を集めますが、途中から多くの株を持つ少数の株主(つまり金持ちってことでしょうか)がその株式会社を支配するようになるように思えます。
 また、企業内での権力闘争もあるでしょうし、企業買収とか子会社化など生臭いこともあるでしょう。だから、この辺のことは会社法と企業会計に詳しい作家が小説にしたり、その小説を原作にしてドラマ化されたりします。映画監督故黒澤明さんの『天国と地獄』でも、物語の背景には取締役である工場担当重役とその他の取締役達との権力闘争がありました(この映画では、主人公は過半数の株を取得して、次の株主総会で自分の経営方針を通そうとしていていることしか描かれていません。この映画は誘拐事件を描いているので、会社法(この時代は商法でした)のことも具体的に描くと分かりにくくなるという判断なのだろうと思います。)

 さて、その少数株主の締めだしを上記のとおりキャッシュ・アウトとかスクイーズ・アウトと言います(ここではキャッシュ・アウトという名称を使っていきます。)。

 キャッシュ・アウトには次の三つの方法が一般的のようです。
  1 全部取得条項付種類株式を使う方法
  2 株式の併合を使う方法
  3 特別支配株主の株式等売渡請求を使う方法


1 全部取得条項付種類株式

 定款で全部取得条項付種類株式の発行を定めると、株主総会の特別決議で会社はその全部取得条項付種類株式を強制的に全部取得することができます。この制度を使いキャッシュ・アウトをすることが多いといいます。

2 株式併合

 複数個の株式を合わせて、それよりも少数の株式とすることです。
 例えば、2株を1株にする(併合割合は1/2)とか、5株を3株にする(併合割合3/5)などです。株式の数が減るだけですので、会社財産は無変動です。
 仮に、2株を1株にする場合、1株だけしか持っていなかった株主は併合後は持ち株数が1株に満たないため株主の地位を失います。(端数となった株式は金銭処理されます。)
 

3 特別支配株主の株式等売渡請求

 最後は、特別支配株主ですが、これは議決権の9/10(十分の九)以上の議決権を持つ株主で、この特別支配株主は他の株主にその株式を売り渡すことを請求することができます。その結果、特別支配株主は一定の日にその株式全部を強制的に取得します。
 特別支配株主は、「特別支配」の名に相応しい強い力を持っています。まさに、数は力という感じです。

 こうして見てくると、2005年にライブドアがフジテレビの支配を狙って、ニッポン放送株の敵対的買収を開始したこを思い出す人も追いのではないでしょうか。これだけでも、「会社は従業員のもの」という考え法律の世界では通用しないことが分かります。

 上記に書いたことは、キャッシュ・アウトのことだけで、企業買収の方法とは別なので詳しく知りたい方は専門の本なり資料を見る必要があります。

#キャッシュ・アウト #スクイーズ・アウト #締めだし

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?