『ニキ・ラウダF1の世界』
『ニキ・ラウダF1の世界』(ニキ・ラウダ著 武田秀夫訳 株式会社二玄社)は、私が十代後半の頃購入しました。
金額は2800円で、当時としてはかなり高価な本でした。
ラウダがまだフェラーリにいた頃、312Tに乗っていた頃に書かれた本です。
この本を書店で見つけたとき、それほど魅力を感じませんでした。値段も値段でしたし、F1自体にそれほど関心がなかったからです。
しかし、本を手に取り、パラパラとページをめくってみると「1.F1ドライバーの条件 2.F1の基礎知識 3.F1の構造と取扱い方 4.F1の操縦法 5.走行テスト 6.レース 7.健康管理 8.全快を祝って」など、この本が単なるレーサー本でないことが分かりました。
スポーツ選手の書いた(と言われる)本は、当該スポーツに迫るというよりアイドル本に近い感じのものが多く、がっかりさせられることが多いものですが(数少ない例外は、テニスのビヨン・ボルグの本でした。)、このラウダの本はF1というか自動車レースとレースカーに関する深い知識と洞察に満ちているように思われました。
そして、前後の見境なく買ってしまいました。その後どんな生活苦が待っているか想像していたら、そんなに簡単には買わなかったと思います。
とにかく、帰ってすぐ読みはじめました。
夢中で読みました。
読後感は、「明晰な頭脳を持つ人が書いた本は、その著者の職業に関係なくとてつもなく分析的でかつ理論的で面白い。」でした。
この本の165ページに、京大式カードが挟まれています。
そのカードには私の、F1を正面から見た場合の前輪のキャンバー角を誇張した図が描かれています。図は三つで、キャンバー角が「正」、「負」、「0」の図と添え書きされています。
普段なら、このような図は本のページに直接描くのですが、この本を余程大事にしていたのか、直接描き込まずにカードに描いていたとは、自分ながら驚きです。
この本を読んだとき、ニキ・ラウダというF1レーサーのレースという仕事への本気度を感じました。
仕事をするなら、こういう流儀で行きたいと思いました。
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