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この気持ちは断じて

―――やったね!マリエッティ。レベルアップしたじゃん?よかったね。


今年3月から私はwebデザイナーとして働き始めた。

そこで会った人達は緊張していたこちらが拍子抜けするほど優しく丁寧で、
かつ必要以上にこちらの私情に入ってくることもなく
さらに福利厚生面や給与・交通面・それ以外のところでも待遇は大幅に改善した。

正直のところ最初は
(訓練校&失業保険が終了する)3月まで決めなきゃという気持ちが強く
とりあえず現職が決まったから行ったという職場ではあったが
予想よりも居心地がよかったこともあって
少しずつ愛着に近いものを見出し始めていた。

そしてそんなこんなで新しい職場に勤め始めて
1か月少々が経過したときのこと、
私は社長と面談することになった。

そもそもたかだか社歴1か月程度で他の皆と同じように面談することは想定していなかったので少々驚いた。
さらに決算までの短い期間なので満額ではないが賞与が出ることも驚いた。

私は思っていたよりも待遇が良かったことに驚きつつ、
(今までが異様だったとも言えるのだが)
有難い気持ちをかみしめていたのだが、
本当の幸運はそれだけではなかった。

朝【おはようございます】と挨拶をすると
ちゃんと全員から挨拶が帰ってくる。

皆の分までゴミを捨てようとすると
手伝ってくれて御礼を言ってくれる。

事務用品を買っても誰からも咎められることもなければ

もう気を抜けば気が遠くなりそうな冬の寒さや
冷却シートを貼らなければ集中力が保てないほどの夏の暑さにも
脅かされることもない。

でも、何よりも、幸運だったのは・・・


ある日電話対応にて誤った対応をした。
正確に言えば誤りというよりも
【受注生産品の返品を受けてしまった】
そこで電話を聞いていた社長に指摘されて誤りに気づいてはっとなった。

余談だが、電話も何もせずにいきなり受注生産品を返品してくる人もいるし
返品を受ける以外どうにもならない場合もある。
ただこの【受注生産品】を作る際の苦労を聞いていた自分はここで限りなく落ち込んだ。

きっと自分はさぞかし失望されただろう。
どうして自分はこうも馬鹿なのか。
何処へ行っても何をしても、それは変わることはない……

しかし、社長の言葉は自分が予想していたのと違った。

「そもそもお客様を神様だと思いすぎてはいけない。
ちゃんとサイト上に返品不可って書いてあるんだから、堂々とそれを伝えてもいいんだよ」
「他人に必要以上に気を使いすぎたり、謝りすぎることはないから」

そして、全部が一応解決したときの言葉が、冒頭に書いたそれである。

私は今までそんなことを言われたことがなかった。

もしかつての職場だったら・・・
誰も助けてくれる人はなく、
「お客様の言葉には(たとえ筋が通ってなくても)すべて従え」であり
そのうえで対応の駄目だった点をひたすら叱責されていただろうから。

現職の社長は比較的若い方で、皆は誰も社長と呼ばず、名前で呼んでいて、
本人もそれを是としている。
そのために皆も気軽に話しかけるし威圧感というものを全く感じたことがない。

また社長自身も割と軽い感じ・・・といっては失礼だが、あえてなのだろうか、そういう話し方をするし
割とフランクに誰にでも話しに行く人である。

でも、私は今回のことで、気付いてしまった。

あくまで想像にすぎないけれど
きっとこれまで上手く行かないこと、ままならないことの連続だったのだろう。
営業などで頭を下げ続けることも、屈辱的な対応を取られ続けるということも当然あっただろう。
人知れず闘ってきた回数は数知れずなのかもしれない。

だからこその振る舞い。
痛みも苦労も覚悟も誇りもなにもかもすべて、
軽く見える言葉と気安く見える態度で包み隠して。
そしてそうでなければ、こんな言葉は出てこない。

私は涙が出そうになったが辛うじて「はい」と言うのがやっとだった。



正直、就職を決めた当初は自分の事ばかり考えていた。
「正直どれくらい続くだろうか」とか「前職より良ければいいな」とか
そればかり思っていた。

でも、今はこの会社に自分ができることはしたいと心から思っているし
そしていつか(私を採用した)あの時の選択は間違いではなかったと思ってもらいたい。

もちろん今思っていることはこの先変わっていくかもしれないし
今の会社と社長に抱いている印象や認識がすべて正しいかどうかもわからないけれど

今感じているこの気持ちは断じて、
一時の思い込みとか一過性のものではない。

この人役に立ちたい
明確にそう思ったことは初めてだった。


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