見出し画像

夢の話「天空都市」

*この話は僕が見た夢をそれっぽく書き記しただけのものです。
【登場人物(大体の年齢)】
おじさん(45)
お兄さん(28)
少女(15)
女の子(12)
おばさん(50)
僕(20)

 ここは前科があるものだけが集う天空都市。
 晴天の大通りで、僕はおじさんとキャッチボールをしていた。スルスルと球の表面を滑っていく21という数字を手に納めて、言葉と一緒におじさんに返す。それだけを繰り返していた。

 不意に道のわきから少女が飛び出て、宙に浮かぶボールを遠くへ飛ばしてしまった。
僕「どうしてそんなことするの?ボール、取ってきてよ」
 少女は口をつぐんだまま、何も言わない。
 僕はため息をついて、仕方ないなと言わんばかりに彼女の腕を引いた。

 子供の面倒を担当するお兄さんがお菓子屋さんにいるはず。彼にこの子は預けて、おじさんのところに戻ろう。
 そう思ってお菓子屋さんへ向かっていた。
 ふと少女の顔を見ると、寂しいような、今にも崩れてしまいそうな顔をしていた。きっと彼女は、ずっと一人でいるんだろう。遊びたかったけど、伝え方を知らなかったんだろう。
 お菓子屋さんの前まで来たけど、お兄さんに引き渡すのはやめた。

僕「一緒に何か食べよ?」
 ここまで来たのだから、ただで帰るのも腑に落ちない。少しでも話を引き出そうと思った。
 お菓子屋さんの入り口の脇から、羨ましそうに覗いている女の子がいた。
僕「…君も一緒に食べよっか」

 列に並んで、きりたんぽのような、串に刺さったお団子が買える。それにお好みで甘いタレをかけるかどうかを選べるようになっている。四本買って、二人の好みがわからないから、二本だけタレをかけてもらった。
 少女はタレ付きのをひとつ、さっさと食べて出て行ってしまった。女の子は、残ったタレ付きのと付いていないのとをひとつずつほおばって、ようやく幸せそうな表情を浮かべた。
 この子には楽しさを知って欲しくて、チョコボールを買って外へ出た。

 少し歩いたところには、さっきボールが飛んで行ったであろう藪がある。
 一歩踏み入ったあたりに「21」「10」と書かれたふたつのボール。女の子は21の方を手に取って、気に入った顔を見せた。
 僕は10の方をポケットに入れて、女の子も連れておじさんの方へ向かおうとした。

 そのとき、女の子は持っていたチョコボールをたくさん零してしまった。女の子はただそれを見つめて立ち尽くしていた。
僕「一緒に片づける?」
 声を掛けたら、笑顔で頷いてせっせと集めだした。よかった。
 女の子は地面の隙間から地上にチョコボールを落として片付けた。ここでは地上にゴミを落とすことが当然のことであり、何ら悪いことではない。

すると近くで大声が上がった。
おばさん「なんてことしてるの、ここの資源がなくなるでしょ!」
すぐに間に割って入った。
僕「地上から持ってこれるので大丈夫ですよ」
そう伝えたのに、おばさんは聞く耳を持たない。
僕「話を聞いてください」
おばさん「ごめんなさいね、あたし会話できないから」

耐えきれなかった。
僕「会話できないなら話しかけてくるんじゃねえよ!」
誰よりも声を荒げてしまった。
おばさん「犯罪者なんて会話できないからね!」
だって。

僕「ここにいるのはみんな犯罪者なんだよ!お前だけ会話できなくて残念だったな!」

 ここでその件は済んだが、おじさんと女の子に見られたことがたまらなく恥ずかしかった。
 それでも二人がそばにいてくれるのはどうしてだろう。
 踏まれて地面にこびりついたチョコボール、なんだか満足感に満たされていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?