意味を探して、独り、生きていく 「おらおらでひとりいぐも」を読みました

タイトル:おらおらでひとりいぐも
著者:若竹千佐子
出版社:河出書房新社
出版年:2017.11

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。
結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――
青春小説の対極、玄冬小説の誕生!
*玄冬小説とは……歳をとるのも悪くない、と思えるような小説のこと。
新たな老いの境地を描いた感動作。第54回文藝賞受賞作。
主婦から小説家へーー63歳、史上最年長受賞。
河出書房新社HPより

ネタバレ感想文

東北弁丸出しで喋りまくる桃子さんの心の内側の人格たち、この時点で面白い。というか、自分に近いものを感じた。何か考え続けている自分、自分じゃない自分が心の中に存在する感覚、やたら多い独り言......。自分は桃子さんの半分も生きてはいないのだけれど、すごく「分かる」感覚があった。何十年か後の自分は桃子さんのような感じになっているんだろうな、と。
そう感じたのは、自分も「独りで生きたい」(というか自分本位にしか生きれないだろと思ってる)人間で、こんな生き方を選ぶ意味を探さずにはいられない人間だからだろう。心の内側のみんなも、独り言も、全部、自分の生き方に納得するために生み出された装置なのだ。
そんなことをつらつらと感じたのだが、自分は桃子さんと比べて人生経験値が圧倒的に少ない。桃子さんが経験したような大きな喪失や別れの経験もない。桃子さんは「日々を重ねてはじめて手に入れられる感情がある。それが何よりも尊い」ことを、それこそ生きていく中で手に入れたのだろう。自分は、これからどんな経験をしていくんだろうか。悲観的になってしまうこともあるだろうが、それも受け止めて生きていこうと思う。自分の知らない世界へ、独り、足を踏み出していこうと思う。生きていくことが、老いていくことが、楽しみになった。

東北にルーツがあるとなお楽しめただろうな。すごくよかったです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?