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アトランタ・ドリーム⑨FA契約解禁


はじめに

前回の記事ではFA交渉の解禁とUFA,RFAに関して記載してみました。またああいう契約関係の面白い話などあれば、合間に取り入れていこうと思います。
さて、現地時間2/1に解禁となったFA市場ですが、早速ドリームにも大きな動きがあったので、今回は1日目で発表された新加入選手と再契約選手、それから現時点でのロスターを公開しながら、話を進めていきたいと思っています。

新加入選手について話す前に

今回、新加入した選手は3人。Jordin Canada選手、Aerial Powers選手、Tina Charles選手。彼女たちについて話す前に、ドリームってどんなチームだったっけ、というのを思い出していただきたいと思います。
まぁ、色々書いたのは昔の記事を読んでいただければと思いますが、特徴としては下記が挙げられますね
長所
・ペースが速く、比較的スペーシングも取れるロスター
・ブロック数が多い
・被FG%が低い
・リバウンドをよくとっている
・中外に軸となる選手がいる

一方、短所では
・FG%が悪い
・ターンオーバーが多い
・アシストが少ない
・控えからの得点力不足
・ストレッチビッグが少ない
・シンプルなP&Rが少ない

まぁ、こんなところでしょうか。では、新加入選手が入って何が変わるのかですね。
今期の補強の仕方はずばり、『短所を的確に埋める補強』だったと思います。
前回の記事でも書いた通り、市場に出てくるPGのなかで正PGはほんの一握りの狭き門でしたし、ウィング、インサイドを担える選手も市場には多く存在していましたが、その中でロスターに誰を残し、誰を残さないかの選定が必要になる的な話をしたかと思います。
では、各選手たちはどんな選手でどんなスタイルなのかを次で話していこうと思います。

新加入選手

Jordin Canada

名前・身長・ポジション
ジョーディン・カナダ。168cm。PG。
昨シーズンスタッツ
:13.3得点-6アシスト-3.1リバウンド-2.3スティール-0.2ブロック(FG%:40.4%,3pt%:33.3%)

本当に来ちゃったね。前回半ば冗談で言ってたのに、本当に来ちゃったね。

まぁ、それはさておき、一人目はジョーディン・カナダ選手。彼女はこのオフ、前所属チームのスパークスとコアリング指定されており、獲得するにはサイン&トレードしかないとかいう難しい状況でした。(コアリングと契約に関しては前の記事読んでください)
トレード内容がこちらになりまぁ~す

ということでスパークスからは12位指名権と、ジョーディン・カナダ選手、ドリームからは8位指名権とエアリ・マクドナルド選手がトレードとなりました。
エアリ……という私の気持ちはあとで書き連ねるとして、これでスパークスは24年ドラフトの1巡目指名権を2位、4位、8位指名権を持つことになり、ドリームは戦力の補強+1巡目指名権のトレードダウンに成功したということです。

当時はまだキャリアの前半でしたが、キャリアで2度の優勝を知る彼女をチームのPGに据えたことはチームの勢いをより強めることになると思っています。ハンドラーという既存のアリシャやラインとの共存が難しいのではという点はあるものの、ドリームのネジのぶっ飛勢いのあるガールたちの手綱を引きながら、自分も熱くなれる、そういう類の選手だと思います。
毎シーズン成長を続ける現在28歳のジョーディンですが、彼女の長所を上げるならば、やはりディフェンス、そしてプレーメイク力、加えて得点力、これらをあげて話していきましょう。

ひとつめのディフェンスについて。彼女は上背こそ小さいですが、ボールへの嗅覚と、一歩の加速が神出鬼没のスティールを成立させています。適切な間合いと派手なスティールの影にしっかりと織り込まれたフットワークの良さと相手へのプレッシャーのかけ方も素晴らしいものがありますね。
2度のオールディフェンシブ1stチームに選出されている他、昨シーズンはシーズンで1試合平均最多スティールとなる2.2スティールを記録している。
チームとしてのディフェンスの修正点は多いチームでもあるため、彼女のようにディフェンスの要となる選手がいるのは大きいでしょう。後述のニアの負担も少し減ると思いますし。

2つ目にプレーメイク力。現状のドリームはアリシャ、ライン、シャイエンの3人を軸にしていますが、このなかに純粋なプレーメーカーはいないと思っています。今期のドリームの平均アシスト数トップはラインの3.5アシストですが、他チームとの比較をしてみると、トップが3.5アシスト超えてるチームのオンパレードでした。もう一度言いましょう。1試合中における平均アシスト数ではドベです。
今回トレードしたエアリやダニエルがそれぞれ3アシスト、3.3アシストとちょっと大人しかったかなという印象はありますね。昨シーズンはエースの火力で押し勝つチームでしたが、もう少しそれ以外の選手が絡んでもいいのかなと思いました。チームとしてシンプルなP&Rが少ないので、そういうのも増やしていきたいですね。
チームは違うので単純な比較はよくないものの、昨シーズン6アシストを記録しているジョーディンはプレーメーカーとしてチームを牽引できる存在と思います。そもそものパスが上手なので、そういう姿を期待したいです。

ついで、得点力。昨シーズンのジョーディンは13.3得点とライン、アリシャに次ぐ得点(シャイエンは13得点なので同等)は挙げています。ハイライト見ていただくとよくわかるんですが、中に切り込んで点を取る形が多いということがわかるかと思います。スリーに関しては、実は昨シーズンがキャリアで初めて50本撃った年でして、それ以前の彼女は年間10本も撃てば撃ったという、ホゼ・アルバラード曲線なのか、ジェイレン・ジョンソンの法則なのか知りませんが、急激に外の攻撃を加えてきております。
本来は動画のようにペネトレイトする形が彼女の一番の武器であり、私が彼女を獲得できたらいいなぁと思った要因の一つにもこのペネトレイトがあります。
昨シーズンのドリームの形はペース&スペースという縦の速さと、横のスペーシングによって3本柱が点の取りやすい形をとっていましたが、ここに加わる斜めの動きとでもいったらよいかわかりませんが、そういう変化を加えられる選手だと思います。スペースは開いているけれども、中に切り込む選手がアリシャ、ラインくらいというのが昨シーズンの悩みの一つでもありました。中に待ち構えている味方もシャイエンなので彼女がどうにかしてくれるわけですが、とはいえ、勿体ないスペースでした。
彼女のように鋭いドライブが持ち味であれば、スペーシングによって空いたスペースを更に有効活用できますね。加えて彼女の強み2番目であげたプレーメイク力がここに拍車をかけてくれます。他の味方の警戒が彼女に向けば、彼女が空いた選手を見つけてくれることでしょう。
実は彼女が昨シーズン成し遂げた、10得点以上、6アシスト以上、2スティール以上というのはWNBAの歴史上初めての快挙となるようですね。こうした攻守にたけた1番がいるのは非常に頼もしいものですね。

まぁ、強みというと変かなと思ったので最後のほうに付け加えておくと、彼女のタイムラインもチームと抜群にあいますよね。まだこれから全盛期を迎えるであろう彼女とライン筆頭にここから強くなっていくチームにうってつけの存在です。フロントも長い目で見て獲得に踏み切ったのは間違いないでしょうし、トレードするなら諦めていた1巡目指名権をもぎ取ってきたのも大きいですね(25年の1巡目指名権はアリシャ獲得時にトレードしてしまっていたため)
今はオーストラリアリーグでブーマーズというチームに所属しており、1試合平均7.9アシストと絶好調のようです。ちなみにこのチームにはドリームの選手であるナズが所属しております。……『ナズって誰?』って?おいおい、彼女ですよ、彼女

まことしやかにリクルートしてきたなといわれていますが、まぁ、どうなんでしょうね。全然関係ないと思いますけど、つい先日動物園にも行っていたようですね。全然関係ないと思いますけど

WNBL(オーストラリアリーグ)での彼女の華麗なパスと共に一旦終わりとしましょう。オーストラリアではジョーディンは0番、ナズは7番を着用しております。


Aerial Powers

名前・身長・ポジション
エアリアル・パワーズ。180㎝。SG/SF
昨シーズンスタッツ
:5.2得点-0.8アシスト-1.8リバウンド-0.2スティール-0.1ブロック(FG%:41.3%,3pt%:31.6%)

……え?引用ミスってる?いや、合ってます。オコメ・パワーとして、パワーの同志を歓迎いたしまs……あ、苗字がパワー?しかも複数形のパワーズ……?

……

……

……そう。

さて、お次はエアリアル・パワーズさんです。
彼女も優勝経験があるウィングの選手で、堂々としたプレーがすごく好きですね。
さて、彼女が補強されるという噂が上がったときに、いい補強だなと思いました。というのは、とりあえず映像見てもらえれば分かると思います。

今期は10分出場というかなり短めの出場でしたが、ドリームでは30分とは言わずとも20分近い出場にはなるんじゃないかなと思っています。理由としては非常にシンプルで、ドリームのローテーションタイム問題、ミッドレンジからの得点力、パッションです。メタいところから先やっつけましょう。

まぁ、まずはこいつを見てもらいましょう。これは昨シーズンのドリームでのスタッツですが、今回見てもらいたいのは出場時間のところ。
昨シーズンのドリームではライン、アリシャがそれぞれ32分台、ついでシャイエンが26分台の出場となっており、ウィングプレーヤーがこの名簿に出てくるのは実は登録上SFのヘイリー・ジョーンズが出てくる8番目、14.6分まで下がります。
さて、今年はというとPGにジョーディンを加えたこと、エアリが抜け、ダニエルが恐らくロスター枠的に再契約が厳しい現状では、ヘイリーが大学時代のポジションであるPGに戻る可能性がかなり高いわけです。(つってもほぼPGみたいな起用法とハンドラーのプレーをしてたので、すごく違和感がある話ですが)
一方ジョーディンも昨シーズンは32分台出場していますから、そういうところではジョーディンのバックアップにヘイリーが入ることで、ウィングとしてのヘイリーの時間は減るでしょうから、それなりの時間がエアリアルに流
れていくことでしょう。サイズとしても十分なものがありますし、そもそもの経験値の高い選手ですからね
(こうしてみるとサイズのあるヘイリーが便利にウィングとガードを行き来していたんだなと思います)

さて、彼女の特徴といえばミッドレンジからの得点力ですね。

ハイライト映像のほうになりますけど、スクリーンを使って、ワンドリブルしてミッドレンジに入りながらの得点は惚れ惚れしちゃいますね。小さなワンドリからのミッドレンジは彼女の得意なエリアとでも言いましょうか。そのままスリーを撃つパターンももちろんあるんですけど、ミッドレンジのシュートフォームが一番きれいに見える不思議です。
控えからの得点力、これもなかなかに少なかったところですな。ジョーディンのところでもいっぱい書きましたけど、空いたスペースの活用法に関してはまだまだ改善の余地ありかなと思います。ミッドレンジのスペースと、前警戒して出てきたところにパス合わせる視野の広さもありますし、ミッドレンジが警戒されても、スリーや中に切り込むこともできるので、チームとしてはありがたい存在となるでしょう。

ウィングのローテーションとしても、アリシャやラインのサイズをそこまで落とさずにコートに出せるという点も大きいですし、軽いケガなんかで二人のうちどちらかが抜けるときにもコートに送り出せる存在だと思います。わかりやすくいえば、デジャントレイに対するボギーのような使い方ができればチームとしてもぐっと強くなるポイントかなと思いますね。

あと、彼女自体がすごくエネルギッシュなプレーをしますし、熱い人だと思うので、そこはドリームに最高に合うところだと思います。チームとしては結構大盛り上がりしますが、アリーナが盛り上がるイメージが強いです。昨シーズンも満員御礼を出していますから、きっと今年のアリーナを盛り上げる一人として活躍すると思います。きっと近いうち、アトランタ・ドリームのtiktokアカウントから新しいダンサーとして登場してくれることでしょう。その日を今から楽しみにしております。


Tina Charles

名前・身長・背番号・ポジション
ティナ・チャールズ。194cm。C
昨シーズンスタッツ(2022年)
:12.6得点-1.8アシスト-7.4リバウンド-0.6スティール-0.6ブロック(FG%:47.7%,3pt%:34.1%)

はい、3人目になりました。皆さんもやっとかと思っていると思いますが、私もようやくここまで来たなと思っています。
3人目はティナさんです。まぁ、隠しても仕方がないので、彼女の輝かしい受賞欄を出してみましょう。こちらです。

オリンピック3連覇、MVP受賞、8回のオールスターに5回のオールNBAファーストチーム。同じ人間とは思えないようなとんでもないキャリアをたたき出しております。現在リーグ歴代4位の7115得点と、さらに、3640リバウンドで歴代2位のリバウンダーという最早どう形容していいのかわからないような、素晴らしい方です。
彼女は今年35歳のベテラン選手でして、2010年にドラフト1位指名されて現在に至ります。昨シーズンのスタッツのところに2022年とついておりますが、この1年間自分の意志でWNBAから離れておりました。それでも当時33歳前後であのスタッツですから、本物も本物だということがわかると思います。余談ですが、HCのタニーシャさんともニューヨーク・リバティでプレーしています。文字通りの生ける伝説です。
彼女の獲得理由を推察するならば、メンターとしての役割と1戦力としての2つがあると思います。
メンターとしてはこれほどの逸材はいないと言わしめる次元でして、私がこれ以上とやかく言うものでもないかなと思います。説得力の次元が違いますからね。
次は戦力として。イリアナ・ルパートが今期はフランスでの活動に専念したい(フランスリーグで戦い、オリンピックに代表として臨む)という形で空いていた控えCのスポットに彼女が入ったわけです。折角ですんで、彼女のスタイルを少しでも紹介させてもらいたいと思います。

柔らかいシュートタッチにあふれんばかりのパワー。そして高い技術。彼女が何故リーグを生き抜いてきたかがよくわかります(31番がティナさんです)

流石にスピードはめちゃくちゃに速いなんてことはないですが、ただ、走らないなんてことはなく、バランスをきっちりとったプレーが印象的ですね。実はキャリアで平均得点で最多記録を出したのが2021年のシーズンで、そのとき23.4得点をたたき出し、リーグトップに君臨しました。フックシュートもお上手でこんな動画もあったので、是非見てください。

ペースが速いチームに彼女を入れるのは一見ミスマッチのように思えますが、ハーフコートで攻める手段が一つ増えたとも考えられます。毎回全力疾走してくれとはとても言えないまでも、ハーフコートのオフェンスの引き出しが少ないのも今のチームかなと思っていますので、そうした起用法ができればまた面白くなっていくでしょう。
あと、インサイドプレーヤーたちにいい刺激になればいいですよね。このきれいなシュートフォームや空いたら撃つを徹底しているところなんかは、本当に素晴らしいの一言に尽きますね。ドリームと対戦したときのフィルムもつけてみました。ナズやシャイエン相手にも一切ひるみなし……。改めてとんでもない人です

最後の余談になりますが、実はラインとティナさんがオンコートで並ぶとしたらドリームとしてのチーム記録で1巡目1位選手が並んだのは実に2011-2012年以来の記録になるんだそうです。これもひそかに楽しみにしているポイントです。

再契約選手

Nia Coffey

名前・身長・背番号・ポジション
ニア・コフィー。185cm。12番。PF。
昨シーズンスタッツ
:6.9得点-1.5アシスト-4.8リバウンド-0.5スティール-1.2ブロック(FG%:43.2%,3pt%:40.2%)

ということでケガも無事に治り、ニアが戻ってきました。
本当にひやひやしていましたよ。
まぁ、ちょくちょく?練習に来てたし?チームの練習場使ってたんで?
そりゃあ戻ってくると思ってましたけども?

いや、本当に戻ってきてくれてよかった。あれでグッバイされてたら流石に持たなかったですね。このクラスのディフェンダー探してくるのはそうですけど、契約まで行くまでには相当の苦労があるでしょうからね

帰ってきてくれてよかったです。スターではないけど、ロールプレーヤーの中では非常にありがたい存在ですね。ディフェンダーとしても計算できるし、フロアのスペーシングもできる。ドライブ、ミッドレンジ、スリー、一通りの得点はできますし、昨シーズンは中継点もやっていましたが、今期はスクリーナーとしてP&Rなり、P&Pなり活かされる場面がまた増えるんじゃないかなと思っています。ドリームのディフェンスの柱としては間違いなく数えられている存在ですし、彼女がしっかり機能すれば7連勝の後押しもできることは昨シーズンよくわかったので。
今期は怪我無くシーズン乗り切ってプレーオフに出ていってもらいたいなと思いますね。本当に。

現在のロスターについて

さて。もうここに至るまでで7000字突き抜けてますが、続けて現在のロスターについて、こんな状況です。

こんな具合で現在ロスター12枠に対して10枠が決まっております。ADの契約でQO出しているので戻ってくるとは思いますが、もし戻らないことがあれば、最大2枠空きが出るような状況ですね。チームとしては昨シーズン数年ぶりのプレーオフ出場をしたので今期も出場、そしてその先に向けてチームを作っていくことになると思っております。
とはいえ、25年の1巡目はないので、24年のドラフトは12位指名とはいえルーキーを誰かしら入れるんじゃないかなと思っています。入れないんだったらそもそも指名権出しちゃってると思うんで。実質1枠はルーキー用なのかなとは思ったりもします。上位指名勢がインサイドプレーヤーが多い年ですが、そうなるとチーム状況的と指名順的には1,2番あたりかなぁというところですかね。

そして退団選手回は別で開くことにしましょう。とりとめもなく書きすぎたので非常に体がダル重です。

それでは、また次回。おこめでした
Do It For The Dream!!!!

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