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シーズン5:第9話 怪物と英雄 Monsters and Heroes

フレイザーズ・リッジでの一騒動を描いたエピソード、主要人物のキャラクターが深堀されるなかなか良いお話でした。

朝から娘夫婦の家の扉をドンドン叩いて娘を狩りに連れ出そうとするジェイミー。夫婦の時間を邪魔された夫婦のぎこちない対応と、娘には弱い父の様子がどこの婿養子家庭にもありそうな様子で微笑ましい。

バッファローの群れを発見したものの(あんな盆地にいるの?)、毒蛇に脚を噛まれ負傷したジェイミーはロジャーの手当にもかかわらず、様態は悪化していく。死も覚悟したジェイミーが万一のときは、ロジャーが代わりにボネットを殺せと託す。リバーランの遺産を受け継ぐジェミーをボネットが狙っていると聞いて愕然とするロジャー。こんな時ではあるけれど、婿と舅の距離が縮まって良かったよ。「怪物と英雄の差は紙一重だ」と殺人にとまどうロジャーにジェイミーが掛けた言葉がエピソードタイトルなのね。

そして万一のときは、ロジャーが家族をクレアも含めて連れて元の世界に帰るようにと託すジェイミー。ジェイミーの保護がなくなればこの世界は危険だからと。そうだよねぇ、クレアも含めて全員がジェイミーの為にこの世界に居るわけだもの。このあたりから、クレアかジェイミーのどちらかが死んだ場合相手はどうなるのか、というのが気になってきます。

ロジャーが聖書の引用をしたシーンでは速攻で「それはマタイによる福音書第18章6項だ」と訂正するジェイミー。シーズン1の結婚式前に神父との聖書引用合戦シーンもあったけど、スコットランドの敬虔なクリスチャンは聖書を諳んじているものなのね。

ロジャーがジェイミーを枝で創ったソリに乗せて運ぶシーンで、ジェイミーがソリを「プロクルステスの寝台か」と嫌味を言うのですが、教養不足で聞いたことがなかったので調べてみました。

プロクルステスとは、ギリシャ神話に出てくる強盗で、彼は捕えた旅人を寝台に寝かせ、その体が寝台よりも大きければ、はみ出した部分を切り落とし、逆に、寝台よりも小さければ、サイズが合うまでその体を無理やり引き伸ばした拷問殺人鬼。そこから、ある基準に無理やり人を従わせようとすることの意味で使われているそうな。

ここでのジェイミーは単に自分の背丈に合わない小さすぎるソリの大きさを揶揄したんでしょうね。毒が体内をまわっている状態でよくこんなインテリジョークが言えたもんだ。そこでロジャーが「カロンの船かもね」と返します。ギリシャ神話に登場する、冥界のステュクス河の渡し守の船ことで、死に瀕しているかも知れない舅に、あの世へ向かう乗り物かもよ、と言い返すロジャーもさすがインテリ大学教授。

リッジまで連れ帰られたジェイミーはクレアの診察を受けるが、治療手段が無く、できることは壊死した脚の肉をウジ虫に食べさせることだった。クレアの顔色を見ていたジェイミーが「俺は死ぬのか?君が叱るときは大丈夫ってわかる、でも帰ってからずっと優しい」と。可愛い、さすがの観察眼、というか夫婦らしいセリフだよねぇ。確かに今までのクレアのジェイミー手当シーンはそうだった。(笑)そして絶対に勝手に脚を切らせないとクレアに約束させるジェイミー。

死期を予感したジェイミーは診察室を出て自分のベッドへ行きたいとロジャーに頼む。治療のため脚を切られたら役立たずになると恐怖心から言葉にするジェイミーに移動を手伝ったイアンが怒りをぶつけるシーンは良かった。ずっとジェイミーに憧れていたイアンにとって、地味ながら片脚で家族を守ってきた実父イアンの偉大さや勇気に気付く良い機会でした。ジェイミーにもこれはかなり心に響いたと思う。

ファーガスを気遣って、今は伯父に会わせないようにしようとするイアンから事情を聞き出し、「失ったものではなく、今あるものが大切だ」と言うファーガス。ジェイミーに必要とされるときのため、側についていようとするファーガスは本当に立派な大人になったもんだ。

ベッドの上で意識もうろうとするジェイミーがクレアに触ってくれと求めるシーンはこのエピソードの見所。脈拍が下がり、命が身体から消えゆこうとする瞬間をクレアが体温と肌で必死につなぎ留めます。息を吹き返すジェイミーにほっとしました。

前言を撤回して脚の切断を受入れたジェイミー。手術直前にブリアナが毒蛇の牙で作った注射器を持って走り込みます。傷口にペニシリンを注入するクレア。これで切断直前までいった脚が回復するのか?するらしい。

その後のフレイザー夫婦の会話で「君ならあのとき俺を連れ戻せるとわかっていた」という迷いなき信頼感、これぞ理想の夫婦だねぇ。〆に “I will always love you.” とか言って、最高やん。ホイットニー・ヒューストンの歌声が聴こえてきそうですわ。


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