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ゾウを飲み込んだウワバミを恐れる大人になりたかった。

星の王子さまミュージアムが2023年3月末日を持って閉園することが10月28日に発表された。今日から9日前のことだ。
なんとか都合をつけて行ってきたので、取り急ぎ思ったことを綴る。

まず、星の王子さまは私にとって初めての絵本で、星の王子さまミュージアムは博物館・美術館デビューの場所だった。
元々家族が所有している別荘のすぐそばに、星の王子さまのテーマパークができるらしいと祖母は大変喜んだそうだ。1999年のことだ。
著者のサン=テグジュペリはフランス人で、星の王子さまの原作はもちろんフランス語で書かれている。
祖母は大学でフランス語を学び(授業で星の王子さまの翻訳をしたそうだ)、フランスに留学に行った関係もあって、孫の私に贈った初めてのプレゼントは星の王子さまの絵本だった。
(岩波書店版を読んだのは小学校に上がった頃だったと思う。)

もちろん、星の王子さまミュージアムが設立されてすぐ連れて行かれた。私が3歳のころだ。
人がたくさん並んでいて、駐車場は満車、庭園には溢れるばかりのシャボン玉が飛んでいて、綺麗だったのをいまでも記憶している。
園内は暗くて、怖くてあまり好きではなかった。

それから毎年夏休みに別荘に行くたびに星の王子さまミュージアムに連れて行かれ、目を瞑っても歩けるほど慣れ親しんだ場所になったが、中学生に上がる頃には子供っぽい場所だと行かなくなり、高校生に上がる頃には家族と別荘に行くこと自体なくなって、別荘は売りに出してしまった。
最後に星の王子さまミュージアムに訪れたのは大学生の頃、当時の彼氏と立ち寄った記憶がある。
その頃には施設はすっかり寂れて、土日にも関わらず駐車場に車は疎ら、園内にも人が少なくて、なんだか寂しい気持ちになってそれから足が遠のいていた。

今日、7,8年ぶりに訪問した。
駐車場は絶えず満車状態で、園内のレストランに至っては14:00に訪問した時点で90分待ちだった。ランチタイムならもっと待った事だろう。
いつからこんな人気だったのかと、公式Twitterを見たところ、閉園を発表したその次の土日から混雑状態が続いているらしいことがわかった。
私は混雑した園内で大変後悔した。そこに居る誰もが後悔したと思う。
閉園を惜しむ人がこんなにも沢山居て、これだけの人がちょっとずつ来園していれば、星の王子さまミュージアムは潰れなくてすんだのに。
王子さまが自分の星にバラを無防備に残してきて、失ってしまうかもしれないと初めて後悔したときみたいだなぁ、なんて考えた。
ちなみに、「コロナ禍による来園者の減少や建物の老朽化」が閉園理由である。

キツネ風に言えば、我々は星の王子さまミュージアムを「飼い慣らした」のだ。
別れるときになって泣いてしまうけど、出会わなければ良かったとは思わないはず。とか、詩的なことを考えながら帰路についている。そういえば占い師が、私の手相を見てポエム線があるって言ってた。こういうところかもしれない。

取り急ぎ。 2022/11/06 20:00

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