人に親父あり 〜あの日見た偉大な背中〜

古くからある男性のチャームポイントの一つに 「大きな背中」がある。 
やはり女性だけでなく、頼りがいのある背中に惹かれる人は 
意外に多いのではなかろうか? 

こんばんわ、魚屋のこせがれ、Kjです。 
今夜も我が自慢の親父の、痛烈なエピソードを語らせて頂くとしよう。 

オレにはそれぞれ7つ、6つ離れた姉と、兄がいる。 

ガキの頃の6、7歳差は、それはもう天国と地獄のような物で、 
その影響をモロに受けてきたオレは、周りの同世代よりも 
大人と接する機会が多く、客商売の関係上、大人の出入りも多かった 
我が家では、一番下っ端だった。 

その影響で、ウチの親父は周りの父親よりも年長であったはず 
なのだが、 しかし、誰よりも若く見えた。 

それは、彼の強靭な肉体がそう見せるからなのだ。 
外伝でも書いたが、親父は一年中、真っ黒に日焼けしていた。 

もちろん、日サロなんてない時代である。。。。 

それだけで他の親父よりも強そうに見えるんだ、これが。 
商店街の友達と、一緒に川へバーベキューをしにいった事があった。 
もちろん、両家の家族も一緒にだ。 

友達のお父さんも、それなりに筋骨はあったのだが、 
親父の迫力は、群を抜いていた。。。。 

親父は「晩飯」をどうするか、考えていた。 
持ってきた食料は育ち盛りの子供達が全部平らげてしまい、 
買い出しにいかなければならなかったからだ。 

普通なら、町まで戻るか、帰って食べるかであろう。 
しかし、親父はそんな事はみじんも考えてはいなかった。 

ウチの店に正体不明の竹竿の様な棒があった。 
先端は家具に隠れており、根元には太いゴム紐が装着されていた竿。 

幼心に、いぶかしげに思っていた。 
オレが触ろうとすると、親父はやや語気を荒め、 
危ないからと諭すのである。 

親父は意を決すると、持ってきていたその竿を取り出し、 
おもむろに先端の鞘を取った。 
銛、である。 
それも、かなり年季の入った、愛用の物であろう事は、 
修繕の痕からもうかがえた。 
いわば親父にとっての、ロトの剣。。。。 

先端のスパイク部分は、親父によって丹念に研がれていた。 
誰がどう見ても、武器にしか見えない。。。。 

親父は2、3度、ゴムの具合を確かめると、ゴーグルも付けずに 
川の一番深い所へ、飛び込んでいった。 

ずいぶん長い時間が過ぎたような静寂が、辺りを包み、 
固唾をのんで、俺たちが見守っていると、 
川面から、魚が背びれを出した。。。。 
その体は、銛により、一撃で貫通していたのである。 

親父、それはもはや漁だろ。。。。 

その後も、次から次に、一匹一匹確実に、川魚をしとめる我が親父。 
いつの間にか、辺りには知らない顔のギャラリーが溢れていた。 
その日の晩飯は、ギャラリーのご家族達も交えた、 
まさに宴と呼ぶべき、大きな物となった。 

無類のお人好しである親父は、周りの人たちの分も漁を続け、 
その見返りに、ギャラリー達からは、肉や、野菜、お酒などが 
振る舞われた。 

もちろん、調理や火起こしにも、一家言ある親父である。 
たまの休みに、バーベキューをするお父さんとは、 
サバイバル技術の レベルが違う。 
(調理は、プロだしな。。。。) 

あの時の親父の背中は、忘れられない。 
きっとアマゾン川でも、通用するよ、アンタ。。。。 

川へ続く、駐車場の入り口に書かれていた注意書きにオレが 
気がついたのは、帰路についた時だった。 

「禁漁区」 
危ないのでモリなどを使って、魚を捕らないでください。。。。 

黙っておこう、この事は。。。。 

あれから数十年、未だにオレはこの看板の存在を、 
親父には告げていない。 

そんな、ちょっぴりアウトローな親父は、 
最高にロックだと思うから。

※こちらはかつて、KjのMixiに日記として掲載したモノを
一部改変し、転載したモノです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?