人に親父あり ~禁断の特別天然記念物~

父親。 
はからずとも自分も親父となる年代となり、 
自らの実子こそないが、友人達や兄弟達の子と 接する年代となった。 

オレは彼、彼女達に何を残し、 
教えてあげられるのだろうか? 
願わくば、一筋の鮮烈な記憶を届けてやりたいと切に願う。 

こんばんは、魚屋のこせがれ、Kjです。 
本日も驚くべき我が親父のエピソードを紹介します。 

あの日見た、鮮烈な記憶は、今もオレの胸に。 
何度も言うが、我が父、栄三は、 自他ともに認める 
「お人好し」である。 

彼は幼い私が、喜ぶ顔を見たいが為に、 
市場から様々なモノを、仕入れる事があった。 

マグロのカマ、という物だろうか? ほほの部分の刺身。 
今でこそグルメブームの折り、様々な珍味、 
希少な食材がもてはやされているが、この当時、 
いまだ高度成長を続けていた日本は、一億総中流階級というような 
中庸や、普通を美徳とする文化があった。 

このカマ、実にうまいのである。 
一匹からはごくわずかしか捕れないのであるが、 
カシラをバラす際に 「食ってみろ」ともらったカマの味、 
今でもオレにとって 忘れられない原点の味である。 

無論、親父のサービス精神はこのような"味覚"の面だけではなく、 
子供が持つ、"興味"の面にも及んだ。 

子供というものは様々な不思議に対して、常識を隠れ蓑にせず、 
真正面からブチ当たっていく物だ。 
この当時、オレにとって不思議だったもの、 
それは様々な生物であった。 

今でも忘れる事のできない、鮮烈な想い出。 
学校から帰ったオレに、親父は、イタズラな目でこう言った。 

「そこのボールの中身、見てみろよ」と。 

かぶせてあった、アルミホイルを開けた瞬間、 
オレの目は 釘付けになった! ダイオウイカの目玉である。。。。 

ダイオウイカ(大王烏賊、学名:Architeuthis、 
英語名:Giant Squid [wikt])は、ツツイカ目 (en)-ヤリイカ亜目 
(en)- ダイオウイカ科に分類される、 
巨大なイカの一種(1属)。 

本属の下位分類には複数種があると考えられている。 
世界各地に存在する巨大な頭足類の伝説(クラーケン)は 
ダイオウイカをモデルにしている、と考える人もいる。 

このような親父が、オレを喜ばす為に、用意した最大の獲物。。。。 
おそらく、もう時効であるから、告白する。 

その日、退屈な授業を終え、帰宅したオレに、 
親父は店の大きな水槽を指差し、「中を見てみろ」と目で促した。 

オレの家には、当時、イケスの様なガラスケース型の水槽と、 
使用しておらず、塩水を満たす為に置いておいた、 
フタ付きの水槽の 二つがあった。 

親父の目は、明らかに後者を見つめていた。 

その目は、どんな事になっても揺らがない、 
偉大な父親の目であった。 

その重さに負けそうになりながらも、オレはそのフタをずらし、 
中を確認した。 

あり得ない。。。。 

そこにいたのは、図鑑でしか見た事がない、神秘の生物であった。 
例えて言うなら、ドラゴンボールを見つけた時の 
衝撃みたいな物であろう。 

カブトガニ、しかもオス、メスのつがいである。 

カブトガニ(甲蟹、兜蟹、鱟)とは 節口綱カブトガニ目カブトガニ科 
カブトガニ属に属する節足動物である。 
学名は Tachypleus tridentatus。 

お椀のような体にとげのような尻尾を持つ。 

絶滅危惧I類(CR+EN)(環境省レッドリスト) 環境省の 
レッドデータブックでは、絶滅危惧I類に指定されている。 

カブトガニの外部寄生虫としてカブトガニウズムシがおり、 
同じく絶滅危惧I類に指定されている。 

日本では佐賀県伊万里市、岡山県笠岡市、愛媛県西条市にて、 
特別天然記念物に指定されている。 

あんた、なんて事しでかしたんだ!!! 
確かにすげえ!すごすぎるよ!! でも、ヤバすぎるだろ!!! 
特別天然記念物、飼うか?普通!!!!! 

以来、その水槽は一定期間の間、「開かずの水槽」と化した。。。。 
職業柄、釣り餌などのゴカイを入手しやすかった為、 
その二匹は、かなり長い期間、水槽の中に確かにいたと記憶している。 

絶滅危惧種、なんですけどね。。。。。。 
飼ってました、ウチ。。。。 

さすがの親父も、数十年を経た今、その事を問いただすと、 
「いや、そんな事あったっけか?」とトボケるのであるが、 

あの日見た光景は、この目に鮮烈に焼き付いており、 
忘れる事なんてできないのである。。。 

※こちらはかつて、KjのMixiに日記として掲載したモノを
一部改変し、転載したモノです。

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