塀の前で立っていた

おまえの足の指が
気づくと一本だけになっていても
おまえの下半身は
泥に潜っていて どうでもいいという

陽射しの当たる場所で
おまえは踊っていた
忘れてしまったのかもしれない
忘れたふりをすれば 紛れられる

おまえは踊っていた
おまえは笑っていた

おまえの五秒すれば忘れる今の笑いとは違い
おまえの五分してから沸き立つ今の怒りとは違い
おまえは笑っていた
おまえは怒っていた

おまえの心の中の足の指は
増えることを減ることを感じた
おまえの今の足の指は
増えても減ってもわからない

おまえは塀の前で立っていた


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?