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63  グルココルチコイド療法 Glucocorticoid therapy



キーポイント

・グルココルチコイドの作用機序は、グルココルチコイド受容体とゲノムDNAとの相互作用に基づいており、高用量では非ゲノム的機序によって作用する可能性がある。
・グルココルチコイドはその効力と生物学的半減期がかなり異なる。
・コルチゾンとプレドニゾンは生物学的に不活性で、肝臓でそれぞれ生物学的に活性なコルチゾールとプレドニゾロンに変換される。
・グルココルチコイドは、多くのリウマチ性疾患の治療の要であり続けている。グルココルチコイドの副作用のリスクは、疾患、併存疾患、投与量、治療期間、個々の患者因子によって異なる。
・グルココルチコイドの局所内注射や関節内注射は非常に効果的で、局所細菌感染を起こすリスクは非常に低い。
・妊娠中のプレドニゾロンの低用量から中用量は安全であると思われる。
・現在、選択的グルココルチコイド受容体作動薬やグルココルチコイドを含むリポソームなどの新しいアプローチが研究されている。


はじめに

・生物学的製剤がますます使用されるようになってきたとはいえ、グルココルチコイドは依然としてリウマチ患者の治療戦略の中心的薬剤である。
・1935年に初めて単離されたグルココルチコイドは内因性グルココルチコイドホルモンのコルチゾンであった。コルチゾンは1944年に合成され、その後臨床使用できるようになった。1948年、コルチゾン(当時は compound Eと呼ばれていた)は、アメリカの医師フィリップ・S・ヘンチによって、4年以上活動性の関節リウマチ(RA)を患っていた29歳の女性に投与された。このほとんど寝たきりの患者は、3日間の治療で歩けるようになった。
・ヘンチはこの劇的な改善例を1949年に発表し、2人の同僚とともに1950年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。
・その後、内因性ステロイドの化学修飾によって合成グルココルチコイドの生産が可能になり、その一部は即効性のある効果的な抗炎症・免疫抑制物質であることが証明された。
・超高用量のグルココルチコイドを投与された患者において、潜在的に重篤な副作用の数々が明らかになったとき、グルココルチコイドに対する熱意と使用は減少した。それにもかかわらず、グルココルチコイドは、全身性エリテマトーデス(SLE)、血管炎、リウマチ性多発筋痛、筋炎を含む多くのリウマチ性疾患の治療の基礎となっている。
・さらに、RA患者の治療戦略におけるグルココルチコイドの使用も一般的に受け入れられている。 米国の一般成人におけるグルココルチコイドの使用率は1.2%と推定され、この割合は主に慢性グルココルチコイドの使用を反映している。
・過去数十年の間にグルココルチコイドに関する知識は増加したが、リウマチ性自己免疫疾患におけるこれらの薬剤の作用機序については、まだ多くのことが解明されていない。これらの機序の解明が、最終的には副作用の少ない新しい治療法の開発や個別化医療につながることが期待されている


Pearl: コルチゾンやプレドニゾンのような11-ケト基を持つグルココルチコイドはプロホルモンであり、生物学的に活性になるためには、肝臓で11-ヒドロキシ体(それぞれコルチゾールとプレドニゾロン)に還元されなければならない。したがって、重度の肝疾患患者には、プレドニゾンの代わりにプレドニゾロンを処方するのが合理的である。

Reality: Glucocorticoids with an 11-keto group, such as cortisone and prednisone, are prohormones that must be reduced in the liver to their 11-hydroxy configurations—cortisol and prednisolone, respectively—to become biologically active. For patients with severe liver disease, it is thus rational to prescribe prednisolone instead of prednisone.

・本邦ではPrednisolone(プレドニゾロン)しか処方ができませんので、特に頭を悩ませる状況はないと思います。欧米諸国ではPrednisone(プレドニゾン)が使用されていることが多いことに留意しましょう。
・生物学的活性を持つグルココルチコイドを作るためには、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)1型の還元作用が必要です。この酵素は還元による活性化も、脱水素による逆反応も司りますが、11β-HSD2型は逆反応の脱水素活性しか持ちませんので、グルココルチコイドの不活性化しか行なえません。
・組織内では11β-HSDの1型・2型の局所のバランスによって細胞内のグルココルチコイド濃度が調節され、組織ごとのグルココルチコイドの感受性が調節されている可能性があります。
・これに加え、組織ごとの細胞内におけるグルココルチコイド受容体の細胞内密度の違いが、特定の組織のグルココルチコイド感受性を決定する因子となっていると考えられています。

・余談ではありますが、11β-HSDが局所でコルチコイドの生理作用を調整している例として、グリチルリチンによる偽性アルドステロン症があります。
・甘草の主成分であるグリチルリチンは腸内細菌の持つ酵素によりグリチルレチン酸に変換されます。
・グリチルレチン酸は11β-HSD2型を阻害することで、活性型のコルチゾルから不活性型のコルチゾンへの変換を妨げます。
・本来、腎尿細管局所では、11β-HSD2型の作用により、コルチゾルはミネラルコルチコイド受容体(MR)へ結合できないコルチゾンに変換されていますので、ごく少量存在するアルドステロンがMRに対して優位となり、ミネラルコルチコイド作用を発揮します。
・しかし、グリチルレチン酸により11β-HSD2型が阻害されてしまうと、腎尿細管の局所ではコルチゾルが不活化されません。
・そのため、アルドステロンに対してコルチゾルが大量に存在→MRに結合することで、ミネラルコルチコイド作用を発揮し、その結果偽性アルドステロン症を生じてしまいます。(参考文献:https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/23.pdfhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/96/4/96_805/_pdf)。


Pearl: アルブミンのような血漿タンパクの濃度が低い患者(例えば、肝疾患や慢性活動性炎症性疾患のため)は、グルココルチコイドの効果や副作用を受けやすい。

Reality: Because only unbound glucocorticoids are pharmacologically active, patients with low levels of plasma proteins, such as albumin (e.g., because of liver diseases or chronic active inflammatory diseases), are more susceptible to effects and adverse effects of glucocorticoids. Dosage adjustment should be considered in these patients. In people with liver disease, an additional argument for dosage adjustment is reduced clearance of glucocorticoids.

・非結合型グルココルチコイドのみが薬理学的に活性であるため、アルブミンなどの血漿蛋白レベルが低い患者(肝疾患や慢性炎症性疾患など)は、グルココルチコイドの作用や副作用を受けやすい。このような患者では用量の調節を考慮すべきである。肝疾患のある患者では、グルココルチコイドのクリアランスが低下しているため、用量調節が必要である。


Myth: ステロイドパルス療法の効果は時間の単位で生じる

Reality: When acting through genomic mechanisms, it takes at least 30 minutes before the clinical effects of a glucocorticoid begin to show. Only when high doses are given, such as in pulse therapy, do nongenomic mechanisms also occur, by which glucocorticoids act within minutes. The response to high-dose pulse methylprednisolone therapy may be biphasic, consisting of an early, rapid, nongenomic effect and a more delayed and more sustained genomic effect. Clinically, however, genomic and non-genomic effects cannot be separated.

・グルココルチコイドがゲノム機序によって作用する場合、その臨床効果が現れ始めるまでに少なくとも30分はかかる。パルス療法のように高用量が投与される場合にのみ、非ゲノム機序も生じ、グルココルチコイドは数分以内に作用する。メチルプレドニゾロンの高用量パルス療法に対する反応は二相性であり、早期の迅速な非ゲノム的効果と、より遅発で持続的なゲノム的効果からなる

・genomic effectは核内転写因子への結合や、DNA上のグルココルチコイド応答要素(glucocorticoid response element)に結合する必要があり、このプロセスに時間がかかるようですが、non-genomic effectは細胞膜上の受容体を介して迅速に作用するため、効果の発現は数分と言われています。
・ステロイドパルス療法自体は、このような迅速なnon-genomic effectと、遅発性かつ持続性のあるgenomic effectの総和になります。


Pearl: グルココルチコイドの作用はtransactivationとtransrepressionに分類される

・transactivation
活性化されたグルココルチコイド受容体-グルココルチコイド複合体が二量体となって核内に移動し、GREに結合し様々な標的遺伝子の転写を促進する
主に有害事象に関連すると考えられているが、NF-κBインヒビターやリポコルチン-1の遺伝子転写やタンパク質合成などの免疫抑制作用はtransactivationの産物とも考えられている

・transrepression
活性化されたグルココルチコイド受容体-グルココルチコイド複合体の単量体は、活性化因子タンパク質[AP]-1、インターフェロン調節因子[IRF]-3、核因子-κB[NF-κB]などの転写因子と相互作用を示し、これらの転写因子のDNAへの結合を阻害し、炎症に関連したタンパク合成のダウンレギュレーションをもたらす
主に抗炎症作用に関与していると考えられているが、易感染性やHPA軸の抑制にも関連しているようである


Myth: グルココルチコイドによる副腎不全は“二次性副腎不全”に分類される

Reality: Chronic suppression of the HPA axis by administration of exogenous glucocorticoids, as a result of negative feedback loops on CRH and ACTH (see Fig. 63.4), leads to failure of pituitary ACTH release and thus to partial functional adrenal atrophy with
loss of cortisol secretory capability. Although this adrenal insufficiency is a result of the use of glucocorticoids (and thus is secondary to glucocorticoids) and although ACTH release is also directly inhibited by glucocorticoids, this adrenal insufficiency is often referred to as tertiary adrenal insufficiency, referring to the inhibition of CRH release.

・外因性グルココルチコイドの投与によるHPA軸の慢性的な抑制は、CRHとACTHに対する負のフィードバックループの結果として、下垂体ACTH放出の不全を引き起こし、その結果、コルチゾール分泌能の喪失を伴う部分的な機能的副腎萎縮に至る。
・この副腎機能不全はグルココルチコイドの使用の結果であり(したがって、グルココルチコイドによる二次的なものである)、ACTH放出もグルココルチコイドによって直接阻害されるが、この副腎機能不全はしばしばCRH放出の阻害を指して三次性副腎機能不全と呼ばれる。

・二次性副腎機能不全は下垂体から産生されるACTHの欠乏に伴うものですが、グルココルチコイドは下垂体のみならず、CRHに対してnegative feedbackが働くため、CRHの欠乏を指して”三次性”というようです。
・ミネラルコルチコイドの生合成にはACTHは関与しません。
・三次性副腎不全では他の下垂体軸は正常に機能しているので、原発性下垂体疾患の症状とは異なります。また。RAA系によってコントロールされるアルドステロン濃度は保たれているため、原発性副腎不全よりも劇的な症状を示さないのが特徴です。



Myth: グルココルチコイドによるHPA抑制期間は薬剤によって大きな差はない

Reality: The duration of the anti-inflammatory effect of one dose of a glucocorticoid approximates the duration of HPA suppression. After a single oral dose of 250 mg of hydrocortisone or cortisone, 50 mg of prednisone or prednisolone, or 40 mg of methylpred
nisolone, suppression for 1.25 to 1.5 days has been described.Duration of suppression after 40 mg of triamcinolone or 5 mg of dexamethasone was 2.25 and 2.75 days, respectively.28 After intramuscular administration of a single dose of 40 to 80 mg of triamcinolone acetonide, the duration of HPA suppression is 2 to4 weeks; after administration of 40 to 80 mg of methylprednisolone, suppression lasts 4 to 8 days.

・グルココルチコイドの1回投与による抗炎症効果の持続時間は、HPA抑制の持続時間に近似している。
・ヒドロコルチゾンまたはコルチゾン250mg、プレドニゾンまたはプレドニゾロン50mg、メチルプレドニゾロン40mgを単回経口投与した場合、1.25~1.5日間抑制されると報告されている。
・(ただの?)トリアムシノロン40mgまたはデキサメタゾン5mgの単回投与後のHPA抑制の持続期間は、それぞれ2.25日および2.75日であった。
・トリアムシノロンアセトニド40~80mgの単回筋肉内投与後のHPA抑制の持続期間は、2~4週間であり、メチルプレドニゾロン40~80mgの投与後の抑制の持続期間は、4~8日である。

・単回投与で最もHPA抑制期間が長いのがトリアムシノロン(ケナコルト®)80mg筋肉注射で、メチルプレドニゾロン(デポ・メドロール®)40~80mg筋肉内注射より随分と長いです。確かにデポメドロールの筋注はあまり持たない気がします。ケナコルトは一回使用するとかなり長く効くので用途によっての使い分けが必要ですね。


Myth: グルココルチコイドはTh1とTh2のいずれに対しても強力な抑制作用を有している

Reality: Glucocorticoids exert potent inhibitory effects on the transcription and action of a large variety of cytokines. Most T helper (Th) type 1 pro-inflammatory cytokines are inhibited by glucocorticoids, including IL-1β, IL-2, IL-3, IL-6, TNF, and interferon-γ, along with IL-17 (associated with Th17 cells), and GM-CSF. Conversely, the production of Th2 cytokines, such as IL-4, IL-10, and IL-13, may be stimulated or not affected by glucocorticoids.

・グルココルチコイドは多種多様なサイトカインの転写と作用に対して強力な抑制作用を発揮する。IL-1β、IL-2、IL-3、IL-6、TNF、インターフェロン-γ、IL-17(Th17細胞に関連)、GM-CSFなど、ほとんどのTヘルパー(Th)1型炎症性サイトカインはグルココルチコイドによって抑制される。…・逆に、IL-4、IL-10、IL-13などのTh2サイトカインの産生は、グルココルチコイドによって刺激されることもあれば、影響を受けないこともある

・Th2細胞の活性化自体はTh1活性を抑制→単球・マクロファージのダウンレギュレートする抗炎症性サイトカイン(Il-4、Il-10)の放出→滑膜炎や関節破壊の抑制、とRAに対してはよい作用をするようです


Pearl: ごく一部の患者はグルココルチコイドに良好な反応を示さないか、あるいは高用量に反応しないことさえある。さらに、グルココルチコイドの副作用に対する感受性は大きく異なる。

Comments: A small proportion of patients does not react favorably to glucocorticoids or even fails to respond to high doses. Furthermore, the susceptibility to adverse effects of glucocorticoids varies widely. Several different factors are involved in the variability of gluco- corticoid sensitivity in patients with rheumatic diseases, and an understanding of the mechanisms involved might eventually permit their modulation.

・ごく一部の患者はグルココルチコイドに良好な反応を示さないか、あるいは高用量に反応しないことさえある。さらに、グルココルチコイドの副作用に対する感受性は大きく異なる。リウマチ患者におけるグルココルチコイド感受性の変動にはいくつかの異なる因子が関与しており、その機序を理解することにより、最終的にはそれらの調節が可能になるかもしれない。

・グルココルチコイド受容体遺伝子の特異的多型は感受性の要因の一つのようです。
グルココルチコイドと結合可能なαアイソフォームだけではなく、グルココルチコイドとは結合せずに内因性の阻害作用を持つβアイソフォームがいくつかの組織で発現していることが知られています。抵抗性はこのβアイソフォームの発現亢進と関連している可能性が指摘されていますが、多くの細胞でこのβアイソフォームの発現はごく軽微であり、関与は少ないかもしれません。


Pearl: グルココルチコイドはその免疫抑制作用のほとんどをサイトカイン産生抑制を介して発揮する。特に高濃度のサイトカイン、特にIL-2は、グルココルチコイドの抑制作用に用量依存的に拮抗する。

Comments: Glucocorticoids exert most of their immunosuppressive actions through inhibition of cytokine production; high concentrations of cytokines, especially IL-2, antagonize the suppressive effect of glucocorticoids in a dose-dependent manner.

・グルココルチコイドはその免疫抑制作用のほとんどをサイトカイン産生の阻害を通して発揮する。高濃度のサイトカイン、特にIL-2はグルココルチコイドの抑制作用に用量依存的に拮抗する。

・IL-2以外にもマクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor)などの炎症性サイトカインは局所での外因性グルココルチコイド抵抗性に関与しており、高濃度グルココルチコイドでないと阻害作用を発揮できないようです。
・ステロイド関節内注射で明らかに関節症状がよくなる症例にしばしば出会いますが、局所のグルココルチコイドの濃度を高めることが、全身のグルココルチコイドや他のDMARDsでは達成できない効果的な免疫抑制作用があるのかもしれません。

・グルココルチコイド抵抗性のその他の機序としては、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性化、転写因子AP-1の過剰な活性化、ヒストン脱アセチル化酵素2の発現低下、P-糖タンパク質を介した薬物排出の増加などが考えられています。また相互作用も念頭に入れる必要があります。


Myth: グルココルチコイドの薬物相互作用で注意するのは、リファンピシンによるグルココルチコイド作用増強のみでよい

Reality: Conversely, concomitant use of glucocorticoids with inhibitors of the drug metabolizing CYP3A4 (e.g., ketoconazole, itraconazole, diltiazem, mibefradil, and grapefruit juice) decreases glucocorticoid clearance and leads to higher concentrations and prolonged biologic half-life of glucocorticoid drugs, thus increasing the risk of adverse effects.

・逆に、グルココルチコイドと薬物代謝CYP3A4の阻害剤(ケトコナゾール、イトラコナゾール、ジルチアゼム、ミベフラジル、グレープフルーツジュースなど)との併用は、グルココルチコイドのクリアランスを低下させ、グルココルチコイド薬の高濃度化と生物学的半減期の延長をもたらし、副作用のリスクを増大させる。

・相互作用の話では、CYP3A4を強力に誘導するリファンピシンが有名です。リファンピシン併用時にはグルココルチコイドを2培程度にすることが多いです。メチルプレドニゾロンやデキサメサゾンではその相互作用がより強力になることに留意してください。
・一方、グルココルチコイドの血中濃度が高まる相互作用もあります。一般的には強力なCYP3A4阻害薬でもプレドニゾロンはそこまで影響を受けないようです。
・紛らわしい話なのですが、ケトコナゾールは内因性グルココルチコイドの合成を阻害するようで、高コルチゾル血症の治療に使用することもあるようで、奥が深いです。

・それ以外にも、プレドニゾロンとシクロスポリンではプレドニゾロンの血漿中濃度上昇、
メチルプレドニゾロンとシクロスポリンではシクロスポリンの血中濃度が上昇することがあるようです。あまり意識したことがなかったです。


Myth: ステロイドパルス療法は高用量ステロイド療法と比較して、自己免疫性疾患の寛解導入療法として有用である

Reality: Glucocorticoid pulse therapy is used in rheumatology, especially for remission induction, treatment of flares of inflammatory rheumatic disorders and vasculitis, and severe complications of rheumatic diseases, such as visual loss in people with giant cell arteritis.
Nevertheless, in 144 patients with biopsy-confirmed giant cell arteritis—91 with vision loss upon being seen initially and without vision loss—no evidence was found that intravenous glucocorticoid pulse therapy (usually 150 mg dexamethasone sodium phosphate every 8 hours for 1 to 3 days) was more effective than high and very high doses of oral (80 to 120 mg) prednisone daily in preventing deterioration of vision.

・ グルココルチコイドパルス療法は、特に寛解導入、炎症性リウマチ性疾患や血管炎の再燃の治療、リウマチ性疾患の重症合併症、例えば巨細胞性動脈炎患者の視力低下などに使用されている。しかし、生検で巨細胞性動脈炎が確認された患者144人(初診時に視力低下のあった患者91人と視力低下のなかった患者)において、グルココルチコイドのパルス療法(通常、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム150mgを8時間ごとに1~3日間)の静脈内投与が、プレドニゾンの高用量および超高用量(80~120mg)を毎日経口投与するよりも、視力低下の予防に有効であるというエビデンスは認められなかった(Ophthalmology. 2003 Jun;110(6):1204-15.)。

・非常に古い検討ではありますが、RAに対するステロイドパルス療法の有効性を検討した研究では、ステロイドパルス療法の効果が4~10週は継続するようです(Semin Arthritis Rheum. 1993 Dec;23(3):183-92.)。


Pearl: グルココルチコイドの減量方法には画一的な方法はない。

Comments: There is no best scheme for tapering glucocorticoids based on controlled, comparative studies. Tapering depends on the specific disease being treated; it also depends on the clinical response, current disease activity, and doses and duration of
glucocorticoid therapy, which are all influenced by the individual patient’s glucocorticoid sensitivity. Only generic guidelines can be offered.

・対照比較研究に基づくグルココルチコイドの漸減に最良の方法はない。漸減は治療中の特定の疾患によって異なり、また臨床反応、現在の疾患活動性、グルココルチコイドの投与量と投与期間によっても異なる。これらはすべて個々の患者のグルココルチコイド感受性に影響される。一般的なガイドラインしか提供できない。

・10mg未満の維持量の減量についてはKelleyに以下のような記載があります。
”For tapering steps over 7 weeks or a multiple number of 7 weeks, a printed schedule can be given to the patient, such as the one shown in Table 63.4, on which the doses and period of tapering should be filled out”
”1ヵ月ごとに1mgずつ、または7週間ごとに2.5mg(プレドニゾロン5mg錠の半分)ずつ漸減する方法もある。7週間以上または7週間の倍数で漸減する場合は、 表63.4に示すような、用量と漸減期間を記入したスケジュール表を印刷したものを患者に渡すことができる”
・要は8mgから7mgに減量したいときに、第1週は金曜日だけ7mgで他は8mg、第2週は火曜と土曜だけ7mgでほかは8mg、…とやっていき、最後の週に7mgになる、というやり方ですね。減量できずに困ったケースでは有効な方法だと思いますが、処方箋の記載が面倒です。とりあえずPSL8mgで処方しておいて、ご自身で減量してもらえばよいでしょうか。



Pearl: ステロイド関節内注射の際は、①関節穿刺を行う②注射後安静にする、ことで抗炎症作用を最大限に発揮できる

Reality:  Arthrocentesis before injecting the glucocorticoid preparation reduces the risk for relapse of arthritis. Triamcinolone hexacetonide, which among the injectable glucocorticoids is the least soluble preparation, demonstrates the longest effect. Theoretically, rest of the injected joint minimizes leakage of the injected glucocorticoid preparation to the systemic circulation(via the hyperemic, inflamed synovium by enhanced pressure in the joint during activity), minimizes the risk of cartilage damage, and optimizes the condition for repair of inflammatory tissue damage. Advice and procedures for the postinjection period in
terms of activity vary from no restrictions to minimal activity of the injected joint for a couple of days to bed rest for 24 hours after injection of a knee joint or splinting of injected joints. Based on the literature, no definite evidence-based recommendation can be made, but it seems prudent to rest and not to overuse the injected joint for several days, even if pain is relieved.

・グルココルチコイド製剤を注射する前に関節穿刺を行うと、関節炎の再発リスクが減少する。
・理論的には、注射した関節を安静にすることで、注射したグルココルチコイド製剤の全身循環への漏出を最小限に抑え(活動中の関節内圧の上昇により充血し炎症を起こした滑膜を介して)、軟骨損傷のリスクを最小限に抑え、炎症組織損傷の修復条件を最適化することができる。
・膝関節の注射後24時間の安静や、注射した関節のスプリントなど、活動制限なしから2~3日の注射関節の最小限の活動まで様々である。
・痛みが緩和されたとしても、数日間は安静にし、注射した関節を酷使しないことが賢明と思われる。

・水はできるだけ抜く、注射後は酷使しない、が大切です。
・またKelleyには”グルココルチコイドによる関節損傷を最小限に抑えるため、関節内グルココルチコイド注射は3週間に1回までとし、体重のかかる関節(膝など)には1年に3回を超えない頻度で行うことが推奨されている”と記載がありますが、明確なエビデンスはない、ともされています。


Pearl: 妊娠中は胎児から外因性グルココルチコイドを守るメカニズムがある。

Reality:  In pregnancy, two mechanisms protect the fetus from exogenous glucocorticoids. First, glucocorticoids bound to transport proteins cannot pass the placenta, in contrast to unbound glucocorticoids. Second, the enzyme 11β-HSD in the placenta, which catalyzes the conversion of active cortisol, corticosterone, and prednisolone into the inactive 11-dehydro-prohormones (cortisone, 11-dehydrocorticosterone, and prednisone), protects
the fetus from glucocorticoids in the blood of the mother.

・妊娠中、胎児を外因性グルココルチコイドから守る2つのメカニズムがある。
・第一に、輸送タンパク質に結合したグルココルチコイドは胎盤を通過できない。
・第二に、胎盤に存在する酵素11β-HSDは、活性型コルチゾール、コルチコステロン、プレドニゾロンから不活性型11-デヒドロプロホルモン(コルチゾン、11-デヒドロコルチコステロン、プレドニゾン)への変換を触媒し、胎児をグルココルチコイドから保護する。

・11-βHSDはこんなところにも登場するのですね。ステロイドから身を守る手段を体は金揃えているのですね…。


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