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2010全日本選手権~大学1年生(男子)

男子新体操は、すこし前までは始める年齢が高かったため、年齢が上=キャリアが長い=うまいという図式が強かったように思います。だから、大学生は1年生より4年生がうまい、そういうものだと思っていました。
しかし、昨今のジュニアや高校生のレベルアップを反映してでしょうか、今年の大学1年生はなかなかやります! すでに紹介済の小林翔(青森大学)も1年生ですが、彼のほかに4人も1年生がオールジャパンに駒を進めています。今回は、そんな「ゴールデンエイジ」たちをご紹介しましょう。

☆佐々木智生(国士舘大学)

佐々木

長身なせいもあり、とても大人っぽく見える選手だ。その大きな体を生かした演技は、ダイナミックで華がある。そして、ちょっとセクシーだ。
いわゆる「表現力」で見せるというタイプではまだないように見える。傍から見れば、「見せる=魅せる」にいかにもなりそうな容姿なのだが、本来は照れ屋なのではないか、というのが演技にもどことなく見えるのだ。
だから、彼の演技は、ダイナミックなタンブリングと巧みな手具操作のバランスのよさが印象に残る、極めてオーソドックスなものだ。ロープの演技は、彼の雄大さがとてもよく生かされていてほれぼれするが、クラブやリングでは、器用な手具操作も見せてくれる。1年生にしてはこにくらしいほど完成度が高い、と言っていいだろう。
さらに、この選手が、自らの容姿のアドバンテージを生かして、「どうだ、オレってかっこいいだろう!」と迫ってくるような演技をするようになったら、無敵の艶っぽさが出てくるのではないだろうか。そんな妄想をかきたててくれる選手である。
調べてみると、インハイでは、2009年が7位、2008年は3位、さらにさかのぼれば、2006年の全日本ジュニアでは2位と、すでに十分な実績をもった選手だ。大学で、この先、より大きく飛躍してくれることを期待したい。

☆菅 正樹(花園大学)

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「完成度の高い演技」では、この菅正樹も佐々木に負けていない。それもそのはず、菅は、2008、2009年と2年連続インハイ2位、佐々木が2位になっている2006年の全日本ジュニアでは優勝もしている。
なるほど、たしかにうまい!
とくに手具操作のスピードが半端ない。おまけにタンブリングや、動きにもキレがあり、爽快な演技を見せてくれる。とくにロープやクラブは圧巻だ。まさに手具を「操っている」という感じなのだ。彼の演技はとにかく「止まらない」。手具も体も動き続ける、まさにアスリート!な演技だ。1年生でここまでうまいともう唸るしかない。感服だ。
しいて贅沢を言わせてもらうならば、まだ「表現」の面では開拓の余地がありそうだ。今は、とにかく「うまい、すごい」選手だが、この十分すぎる技術の上に、どんな魅力をこれから積み上げてくれるのだろうか。期待をもって見続けたい。

☆川西雅人(青森大学)

川西

7月に青森大学で練習を見たとき、彼はほとんどまともに通せていなかった。ところどころハッとするほどよいのだが、いかんせんミスが多すぎて、どんな選手という印象をもつところまでいかない状態だった。聞けば1年生とのこと。「じゃあ、無理もない」と、そのときの私は思っていた。
ところが。インカレでは、1種目目のリングをミスなく乗り切ると、スティックでも、彼のもつノーブルな美しさを存分に見せるノーミス演技。続く2日目の2種目もノーミス。4種目目にあたったロープは、私が見た練習でまったくまともに通せていなかったのだが、本番では見事にやってのけた。いいものは持っている選手だが、1年生なのでまだ出し切れないか、と思いきや、おとなしそうな顔とは裏腹に、かなり度胸があるのだろうか。それとも「無欲」ゆえにのびのびやれたのだろうか。インカレでの彼の演技は4種目ともすばらしかった。オールジャパンでもぜひ、のびやかに演じてほしい。1年生の彼には、まだ、先は長いのだから。

☆竹内佑真(花園大学)

竹内

インカレで見るまで、この選手のことは知らなかった。最初の種目・スティックの感想は、「イケメン!」(苦笑)。少しミスはあったが、爽やかなルックスで軽やかに踊る、ちょっといい感じの選手だとは思った。そして、2種目目のリングのラストで、「おおっ!」という技を彼は見せた。後転から、背面での両腕キャッチ! これはかなり肩が柔らかくないとできないはず。男子はもちろん、女子でも難しいだろう。おまけに視野外! うーん、ただのイケメンではない、とそのとき思った。2日目の2種目も、うまくまとめてどちらも9点台。クラブでもかろやかな手具さばきを見せていた。結果、オールジャパンの出場権を獲得! 1年生としては上々のスタートを切った。
これほどの選手なら、私が知らなかっただけで、高校時代にも実績があるのだろう、と調べてみた。が、個人で「竹内佑真」の名前は見つけられなかった。さかのぼって2006年の全日本ジュニアに個人で出場しているのを発見。この年、団体優勝している半田中のメンバーにも名前があった。半田中出身! つまり小林翔と同じ中学の同級生である。しつこく調べていくうちに、2009年インハイの埼玉栄の団体に「竹内」という名前を見つけたが、2009年のインハイのプログラムが手元になくて、本人かどうか確認できない。こんなときはAさん頼み。「2009年インハイのプログラム見て、埼玉栄のメンバー教えて!」とメールするとすぐに返信があった。そこに「竹内佑真」の名前があった。
半田中も毎年、全日本ジュニアに出ているが、彼の名前があったのは中3のときだけ、埼玉栄でも団体メンバーに名前があったのは高3のときだけだ。怪我が多かったのか、遅咲きなのか、事情はわからないが。(追記:その後の調査で、選抜大会で14位という記録を発見! 同じ選抜大会に埼玉栄からは3人も出場している。埼玉栄の選手が豊富でなかなか出番がなかったのかもしれない)、「あふれるほどのチャンスをすべてものにして、常にステージの真ん中に立っていた選手」ではなさそうだ。
そんな彼が、インカレには1年生から出場する。応援せずにはいられない。 

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20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。