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【W10周年記念コラム】 Vol.1 「リライトWって、こんな会社」

みなさん、こんにちは。リライトコンテンツ事業部(通称:リライトW)の鈴木です。

リライトWは、2022年12月12日に設立10周年を迎えました。その記念企画として、メンバーが全4回にわたって、各回異なるテーマでコラムを連載。第一弾の今回は、新卒一年目の鈴木が、Wの主要メンバー3人(籾山、井上、飯塚)に「Wの設立からこれまで」について聞いてみました。

タイトル画像&イラスト:Ruinchi
※登場人物のプロフィールは、ページの一番下を参照。

【おさらい】そもそもリライトって、どんな組織でしたっけ?

リライト」という組織は、建築のあり方を追求する建築・不動産事業部(通称:リライトD)、にぎわいを生む仕掛けやコミュニティづくりを手がけるコミュニティデザイン事業部(通称:リライトC)を中心に、異なるバックグラウンドを持った6つのチームから構成されています。そのうち、コンテンツ制作、主に編集・ライティングを担っているのが、我々「リライトW」です。

ちなみに、業務内容はこんな感じ。

編集・ライティングはもちろん、コンセプトメイクにディレクション、メディア運用など。紙やウェブ、広告、イベントまで、さまざまなコンテンツの制作を行う。硬いものでも軟らかいものでもOK、強みがないのが弱みで弱みがないのが強み。どちらかといえばカルチャー系や面白コンテンツ好き。

https://w.re-write.co.jp/about/

■ リライトWのスタートは「ラジオ好きでしょ?」から

――そもそも、Wってどんな感じで始まったんですか?

籾山 イノケンさんと出会ったのが、たしか2009年?

井上 そうだね。僕らは当時、「東京R不動産」を運営しているスピークのシェアオフィスに間借りをしていて、そこで会ったのが最初。

籾山 僕は前の会社を辞めて、すでにリライト(現在のリライトC)は立ち上げていたんだけど、特に仕事もないからスピークで業務委託で仕事をもらいながらフラフラしてた。地元の立川で「東京ウェッサイ」というラジオ番組を通じた地域の盛り上げを画策していて、そこにイノケンさんを無理やり巻き込んだんだよね。

井上 まだ会って3回目くらいなのに、急に「ラジオ好きでしょ?」って決めつけてきて、そのまま番組の企画書を見せられて(笑)。

籾山 毎週みんなで課外活動的にラジオ番組をやっていたら、たまたまルミネ立川の担当者とつながりができて、2012年に「あおぞらガーデン」という周年イベントの企画・制作をリライトに任せてもらえることになった。編集チームをつくろうと思ったのは、実はこのイベントがきっかけ。

ルミネ立川の屋上イベントと連動したライフスタイルマガジン「AOZORA GARDEN」。

――でも「あおぞらガーデン」は屋上イベントですよね? 編集関係なくないですか?

籾山 そうそう、屋上の芝生広場に地域の個人店を集めたマーケットイベント。それまで取り込めていなかった不定期購買層が訪れてくれたこともあって、クライアントも地域連携に可能性を感じてくれて、2年目以降も継続できないかという話に。イベントはもちろんだけど、マガジンを制作することで来場者と館内をつなぐことを考え始めた。

――あ、その冊子は、なんか見たことあります。

籾山 その提案に先がけて、社内で冊子制作ができる体制を整えたいと思って、当時フリーの編集者だったイノケンさんに声をかけて、2012年12月12日に、とりあえず会社だけつくったと。

井上 僕は僕で「会社つくらない?」って言われて、まだ中身は何も聞いてなかったけど「いいよ」って即答した(笑)。フリーは自由だけどさみしいな、って思い始めていたので。

■ みんなのおこぼれをいつの間にか自分たちの仕事に

籾山 会社をつくっても、最初はたいして売上もなかったから、ほとんど無報酬だったよね。

井上 うん。最初の給料として、新しいパソコンを買ってもらったくらい(笑)。

籾山 2期目まではだいたいそんな感じで、3期目くらいじゃない? ようやく本格的に稼働し始めたのは。

飯塚 そのへんから、僕も関わり始めたんでしたっけ。

――おお! ついに重要人物が登場しましたね(笑)。

井上 その頃になると「AOZORA GARDEN」に加えて、東京ミッドタウンの「六本木未来会議」も始まって。基本ひとりで書いて編集していたので、わりと忙しくなってきた。

2013〜2017年、ウェブマガジン「六本木未来会議」のコンテンツ制作を担当。

飯塚 リライト以外の仕事もやっていたんですもんね。

井上 むしろそっちがメインで、本の編集とかライティングをやりながら。

――お金ももらえないのに、ひどい……。

籾山 先行投資だね、箱をつくるための。

井上 でも、このまま仕事量が増えたら本当にやばいなって思って、前職で一緒だった飯塚くんに声をかけたんだよね。都合がいいことにビラ配りのバイトをしながらプラプラしてたから、別にリライトに興味のなかった飯塚くんを、あの手この手で巻き込んで。

飯塚 僕はちょうどその頃、前にいた会社の経営が傾いて、「給料出ないけど残ってくれる?」って言われたのを断って(笑)。フリーランスになりたてで、「これからバイトでもしながらやっていこうかな」って思っていたから、声をかけてもらってありがたかった。

井上 その後いろいろあって、飯塚くんが編集していた東京メトロの社内報もWでやることになって。

籾山 そのあたりから、徐々に「コンテンツを制作してください」っていう依頼が来るようになったかな。「LIXIL Technology Report」とか「日建設計」もそうだけど、他の事業部の仕事をコバンザメ的に拾っていったら、それが継続的な仕事につながっていった。

井上 そうそう、本当にWは今も、みんなのおこぼれで仕事をもらってるんですよ(笑)。いつの間にか、デザイナーのRuinchiが移籍したり、新卒の鈴木くんが入ったり、リライトの中でも最大派閥になったけど。

LIXILの研究と技術の方向性を考えることを目的に編纂された「LIXIL Technology Report」。2017年より担当。

■ 「W」は「Writing」という意味ではない

――ちなみに、リライトWの「W」ってどういう意味なんですか?

籾山 もともと「リライトw」が正式名称で、社名に小さい「w(笑い)」が入ってたら面白くない? って感じでノリでつけたんだけど。

飯塚 Writing & Editing の「W」という説は?

井上 それは後付け。実際、クライアントには誤植だと思われて、赤字で「wトル」って書かれたこともあったよね(笑)。

――2016年には「リライトコンテンツ事業部」に社名変更しています。

籾山 そもそもリライトは、事業部ごとにすべて別の会社で、それぞれが独立採算性の「カンパニー制」。そうしているのは、会社ごとのフェーズに合わせて成長させたかったから。一方で、ただ会社がたくさんあるようには見られたくなかったから、「〇〇事業部」って付ければひとつの会社に見えるんじゃないって。

――会社名に「事業部」って付けるのアリなんですね(笑)。

籾山 日大でアメフト部の事件が起きたとき、「日本大学事業部」っていう会社があることを知って思いついたんだけど。

飯塚 ちなみに、請求書をもらうときには必ず「『コンテンツ事業部』までが会社名です」って注釈を入れてます。初見だと絶対に社名だって思われないから。

井上 これほんと、說明するのめんどくさいんだよ(笑)。

■ ついついイベントをコンテンツフルにしちゃう

籾山 「Wでもイベントができる体制をつくろうぜ!」って言って、2018年に初めて企画をしたのが「ラクーア シネマゴーランド」。せっかく「コンテンツ事業部」を名乗っているなら紙以外のこともやったほうがいいし、地域連携っぽい案件でもなかったので、CよりW向きかなと思って。

井上 事前練習として、Cのメンバーと一緒に小さいマルシェはやっていたけど、多くの人が集まるイベントは初めて。でも、やってみると意外とできたんだよね。

飯塚 「ただ映画を流すだけじゃ、お客さんが来ないかも?」って心配して、アーティストを呼んでライブしたり、無料でポップコーンを配ったり。そしたら、めちゃくちゃ人が来てくれて。

井上 正直、プロデュースしてくれたキノ・イグルーのお2人と、ラクーアの集客力に助けられました。

W初企画・運営の「ラクーア シネマゴーランド」。2日間で800名以上が来場した。

飯塚 コンテンツへのこだわり、という意味では、そのあとに浦和パルコでやった「浦和パンと地元パン」も印象的でした。

籾山 W企画の2つ目のイベントだね。

井上 前の年にも、Cが浦和のパン屋さんを集めてマルシェをやっていたんだけど、「前回と同じじゃつまんない」と思って、パンラボの池田浩明さんや甲斐みのりさんに協力してもらって、浦和のパンと全国の「地元パン」が買えるっていう立てつけにして。

飯塚 50万円分くらいのパンを自分たちで仕入れたので、毎日、大量のパンが自宅やイベント会場に次々運ばれてくるっていう(笑)。

――自腹を切ってまでやったんですか(笑)。

井上 ほかにも甲斐さんと「日本全国地元パンMAP」をつくったり、池田さんに「自由研究がしたいんですけど……」って無茶ぶりして、アンパンを分類してもらったり。誰にもそこまでやれって言われてないし、予算も潤沢じゃないのに、ついついこだわっちゃう。

飯塚 すごいコンテンツフルにしちゃう。

「浦和パンと地元パン」で展示したパネル。甲斐みのりさんと「地元パンMAP」を、池田浩明さんと「アンパン分類図」を制作。

籾山 結果的に赤字のイベントもあったけど、自由な提案をさせてもらえたことで、ただの制作会社としてではない仕事のやり方を育てられたという意味では大きかったと思う。

飯塚 どのクライアントもみんな理解があってやさしい、っていうのもポイントですよね。

■ Edit is Everything?の精神

飯塚 僕も最初はイベントをやるなんて思ってなかったけど、やれば楽しいし、テンションも上がる。Wにとってイベントは、課外活動みたいな感じ。

井上 でもイベントをやり始めてから、Wはより“エディット化”していったと思うんだよね。アトレ川崎の「食べられない!? CURRY MUSEUM」ときは、「実際にカレーは提供できないんですけど、何かカレーでイベントをやりたいんです」って依頼されて。

籾山 そうだったっけ?

飯塚 全国のレトルトカレーを販売したり、カレーを分析したパネルも展示したり、食品サンプルつくるワークショップをやったり。会場BGMにはカレーにちなんだ曲を集めて、スパイス・ガールズの「Wannabe」とかも無理やり入れて(笑)。クライアントの要望や縛りを取っ掛かりに、コンテンツ化できるようになりましたね。

カレーにまつわるグッズ販売やワークショップ、音楽ライブを実施したスパイシーな展覧会。

井上 「本のイベントができないか」と相談されて提案したのが、日本全国のステキな本屋さんを集めた「ラクーア図書館 本の森」。最初に本棚さえ設置してしまえば、あとは置いておくだけで成り立つシステムを発明した(笑)。これも編集的な視点でのコンテンツづくりだよね。

「ラクーア図書館 本の森」。2019年から2021年までの3年間、毎年セレクトを変えて開催。

飯塚 編集者の菅付雅信さんに取材をしたときに「Edit is Everything (エディット・イズ・エブリシング)」と言っていて、それを引用して、いつも半分冗談で「編集ができればなんでもできる」とか言ってるんですけど。

井上 イベントの企画も、基本的には本とか雑誌をつくるのと考え方は一緒で、全体のテーマやボリュームにあわせて「特集」や「コラム」に当たるコンテンツを配置していく。ひとつの雑誌をつくるように、イベント全体を編集する感じで考えてます。

籾山 ただ制作物をつくるだけじゃなくて、イベントとセットでできるっていうところが、まさに”コンテンツ事業部”らしさみたいなものになった気がするよね。

井上 こうやって振り返るみると、なんか編集からイベントにシフトしていったみたいに見えるけど、その後も『ブレーン』(宣伝会議)の青山デザイン会議とか、『変わり続ける! シブヤ系まちづくり』(工作舎)とか、今も編集とかライティングがメインなのは変わらないよね。

『変わり続ける! シブヤ系まちづくり』(渋谷未来デザイン/工作舎)。日建設計が進めている渋谷再開発プロジェクトを多角的に考察。
2019年4月号から「青山デザイン会議」、2021年11月号から「STAND THE FLAG」の編集・ライティングを担当。

■ 10年目を迎え、ついに自社プロジェクトが始動!?

――最後に、この10年を振り返ってみてどうですか?

飯塚 世の中では、創業して3年で半分くらいの会社が潰れるとか言われているじゃないですか。Wはどうして生き残れてるんですかね?

籾山 う〜ん、それは……定期的に仕事が入るようになるまで、役員報酬をゼロにしてたから(笑)。とりあえずノリで会社をつくったこともあって、資本金は100円だったし、そもそも報酬を設定するとすぐキャッシュアウトしちゃうからなんだけど。あとは強いていえば、基本的にはどんな案件でも断らないっていうのもあるかもしれない

飯塚 確かに、HPにも「硬いものでも軟らかいものでもOK、強みがないのが弱みで弱みがないのが強み」って書いてあるように、本でも雑誌でもフリペでもウェブでも、最近はイベントでもいける。まさに「Edit is Everything」を体現してるつもりです。

井上 めちゃくちゃバカバカしいとか、めちゃくちゃ社会的に意味があるとか、ある意味キャッチーさというか、そういう会社としての“色”はないから、「何でもできて、ちょうどいい」ってところを評価してもらってるんですかね……。実際クライアントからどう思われているのかは、正直よくわかんないけど。

飯塚 それだけ聞くと、なんだかやる気がないみたいな感じもするけど、コンテンツ愛だけは、人一倍ありますから(笑)。

「東京ドームシティ CHRISTMAS PARK 2022」。回を重ねるごとにコンテンツが増加。

――さて、Wはこれからどうなっていくんですかねぇ。

井上 基本的には5年くらいで飽きがくる傾向にあるので、そろそろ編集→イベントに続く、次の“ドーピング”は必要だよね。

籾山 それは、たぶん自社プロジェクトなんじゃないかな。リライトは「まちづくり」をキーワードに、各事業部が専門分野を持ち寄る組織なわけで、自分たちのソリューションをアップデートしていくうえでは、クライアントワークだけでなくリスクを負って新しい事業をつくっていく必要があると思うので。

飯塚 10年目にして、いよいよ自社プロジェクトが!

井上 出版事業なのかメディア運営なのかわからないけれど、我々のコンテンツ愛を生かす方向で。

飯塚 なんといっても、リライトWの社是は「ぬくもり」ですからね。

――なんですか「ぬくもり」って。

籾山 Wに社是があること自体、初めて聞いたんだけど(笑)。

プロフィール

井上健太郎(いのうえ・けんたろう)
1976年東京生まれ。大学卒業後、石黒謙吾氏のもとで編集を学び、6年で100冊以上の書籍に関わる。その後フリーランスを経て、リライトwを共同で設立。紙やウェブからイベントまで、「編集ができればだいたいできる」をキーワードに仕事の領域を広げている。役職はCEO(Chief Editorial Officer)。

飯塚陽介(いいづか・ようすけ)
1978年埼玉県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒業。編集プロダクションを経てなぜかインテリアショップで家具修理に勤しんだのち、デザイン会社でコピーライターに。2012年からフリーランスとして活動。雑誌、書籍、WEB、商業施設の販促ツールから会社案内、学校案内、占いまで、さまざまな分野で企画・編集・ライティングを手がける。役職はなぜかGM。


籾山真人(もみやま・まさと)
博士(工学)、1976年東京都立川市生まれ。2000年東京工業大学社会工学科卒業、2002年同大学院修了。2002年アクセンチュア株式会社入社。経営コンサルティング業務に従事。マネージャーとしてクライアント企業の新規事業立ち上げ、マーケティング戦略の立案などに携わる。2012年リライト_Wを創業、代表取締役に就任(現任)。

鈴木駿(すずき・しゅん)
1998年福島県生まれ。立命館大学産業社会学部を卒業後、リライト_Wに2022年新卒で入社。学生時代はバックパッカーとして国内外を旅し、本をきっかけに「異なるものをつなぎ合わせ、新たな価値を生み出せる」編集に興味を持つ。駆け出しの編集者2年目として日々奮闘中。


大平瑠衣(おおひら・るい)
Ruinchi/るいんち。工作とデザイン。不要になった紙や、拾ってきた端材などを使って偶然・ひらめきで作品を制作している。Ruinchi活動と並行して、2014年リライトにデザイナーとして参加、2022年からW所属に。https://www.ruinchi.net/


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