ROTER guitars ⑦

~前回までのあらすじ~

あらゆる所が無茶苦茶だった9弦は、
コントロールキャビティも無茶苦茶であった!

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色んなギター見てきたけど、鉄鋼パテでジャックを固定してるギターは
30年以上生きてきて初めて見た。ヒーヒー言いながらなんとか綺麗な状態にキャビティを仕上げ、次はブリッジ部分と、
フレットすり合わせに取り掛かる。

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フレットは前回紹介した7弦モデルより怪しい状態で、
頂点が面になってしまっている。ここまでなにもかも
規格外だとすり合わせも経験が頼りになってくる。

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慎重にすり合わせをして、同時に指板も研磨し直す。
本当はフレット全部引っこ抜いて研磨するべきなんだけど、
そこまですると労力が半端ない(もはやネックを作り直した方が早いレベル)になるので却下。
紙ヤスリとスチールウールで磨きを入れ、蜜蝋ワックスで保湿も行う。

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大分マシになった。
パドゥク指板の黒ずみも半端なかった。


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ブリッジ部分もアースを取り直す。アース線が雑に1本かませてある
だけだったので、銅テープを行きわたらせる。


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ブロックサドルも全部交換。
後加工しやすい形状のサドルにして、特に8~9弦の弦が抵触する
部分も加工した。

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この9弦、ヘッド厚がなんと13mmしかないのだ。薄すぎる。
通常、汎用的なロトマチックペグの場合、ヘッド厚は最低でも
14~15mmは欲しい。上部のナットが筐体に沈み込むクリアランスは、
自分の経験上14mmがギリ(ナットのネジ込み部分長による)
13mm厚で「普通の」ロトマチックがハマっているのは無茶しすぎ。
というのも、普通のペグポストではヘッド厚が薄いと「ヘッド垂直方向に大幅にポストが出っ張る」ので、
平行段付きネックだとテンションバー入れても弦が「く」の字になる。
ポストの背が低いロックペグや、スパーゼルなどでギリ。
ネック裏を増す加工はこれまた大変なことになるしネック作り直した方が早くなる。本末転倒は避けたい。そこで考えた。


10mm径の菊ワッシャー2枚をペグに重ねてからヘッドに取り付ける。


これで厚みを2mm稼く。ペグポストも2mm引っ込むことになる。
正直応急処置として無茶なテクなんだけど、
厚めのワッシャーかませるのはヘッド厚薄くても成立させる場合のアイディアとも言える。けどこんなことしない方が安全なのは間違いない。

ヘッド、指板、フレット、コントロール、ブリッジ、
結局諸々調整してこちらも蘇った。

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PUは7弦と同じMARLINのHELL-FIRE。
ボビンが長い長い。このギターにしか使えない。
見た目はすごく好き。

弾き心地的にはもう別の楽器と考えたほうが良い。
他メーカーの8~10弦はギターの延長線上の多弦と認識できたけど、
これは別物。ネックの握りから別物。タッチスタイルの楽器が近いかも。

この9弦を通して学んだ事は以下の通りだ。
●17mm厚以下のネック、14mm厚以下のヘッド厚は恐怖。
●トラスロッドは2本必ず入れる事。
●パテでジャックを埋めるな
●ギター寄りの多弦は27インチ以下が最適解なのでは?
(これは自分が2018年に9弦ヘッドレスギターを製作した際にも感じていた事で、あまりにスケールが長いと身体負荷が間違いなく大きい為。
ROTER9弦は25~28インチであった)



ROTER編、おわり。