ROTER guitars ⑥
前回のあらすじ
やはり問題児だったROTER FF7、各所に手入れを施し、
そこそこいい感じにはなった。
MERLIN PUのスラント具合を調整。セラミックマグネットが3本。
直流抵抗値21k超えのハイパワー。片側のボビン固定穴をわずかに拡張し、
ポールピースのセンターに弦が乗る位置にずらす。
無論、破片化した無駄なポッティング(蝋)のカスは綺麗にしておく。
↑全体に蜜蝋ワックス掛けをして綺麗に。いい感じに赤茶色、
僕のギタークラフト専門学生時代、「導管はフィラーで必ず埋める」
のが原則と教わったんだけど、ここ最近は敢えて埋めずに導管のスジを目立たせる手法が主流なように感じる。
表面に木目の導管が残る事で「木材使ってる感」が増すのだ。
ペグ位置再加工、ヘッド研磨、ワックス、ブリッジ周辺大規模修整、
フレットエッジバリ取り、サドル改造、フレット磨き、指板磨き、ナット溝調整、電装系新品交換、PUのスラント具合微調整、ロッド調整、弦高…etcetc.
ここまでしてようやくスムーズに弾ける状態になった。
直したら結構いい感じの7弦なんだこれが。メタルしか弾けない。
出音がもうわかりやすくそっち系。しかし妙に使い勝手が良く、
リア1ハムだけなのにリフもリードも行ける出音。
硬質材+硬質材+出力デカいセラミックマグネットのPUがブリッジぎりぎりの位置にダイレクトマウント=「答え」かもしれない。
(2021年2月現在、すでに僕の手元から離れている。)
数日後。
シリアルナンバー#00019、ROTER FF9がいよいよ到着。
2011年2月、数分だけ触れた時のあの衝撃が蘇る。
うわぁもうほんと無茶苦茶だあ(賞賛)
海外個人ビルダー製という観点から見ても
あまりにもいろんなとこが攻めてる。
「規格外」とはこういうものを言うのだと。薄い。本当に薄い。
アイバニーズのSシリーズがぶ厚く感じるレベル。
9弦30フレット
マルチスケール
1ハム
1ボリューム
可動域めっちゃぎりぎりのお馴染みROTERお手製ブリッジ。
しかし低音弦はサドル上で曲線を描いており、
スケールエンドの接地が非常に曖昧→弦ブレブレ→ピッチがずれまくる原因
ブリッジの駒も構造上の欠陥によりこれ以上下げられない。
FF7はプレスサドルだったけど、ブロックサドルだ。
幸いネック幅から見るにピッチ幅はある程度合っている。
ただ7~9弦のサドルは加工が必要。
ネック形状…かまぼこ板?Dシェイプ?いや、フローリングの板。
1×4材握ってる感じ。建材。
ネックの薄さが理解と通説を超えている。
測ったら最厚部で実測値なんと約16.8mm。指板Rが400~500R程ついているので、端は約16.5mmほど。指板のパドゥク材の厚みが5~6mm…
薄いタイプの両利きトラスロッドでも仕込みで最低9~10mmの高さが必要なのはビルダーであれば理解できる。
ロッド底面からネック裏側までのクリアランス、おそらく2mmを切っている。超ギリギリのはず。
なのにそこまで反りがない、むしろ安定してるってのが恐ろしい。
2本仕込んであるみたいだけど、ロストテクノロジー感すら。
自分がこの構造を仮に真似したとしたら、弦張った途端目に見えてシビアなロッド調整地獄に陥るのは容易に予想できる。
おお、バックパネルもパネルもウェンジか、お洒落だなと思っていたら
盛大に面食らった。
?
???
これ、練って固まる系の金属パテでジャック固定してる。
交換は不可前提の作り。
ダクトテープの方がまだマシだぜ!
パテ部分を切削して除去し、配線もやり直さなければ、
「使い捨て9弦」みたいな事になる。
ということで大規模リペアに発展。
ノミ、鉄鋼ヤスリ、色々駆使してパテを除去、同時にザグリ内部形状も
アフターケアを考えて内部面積を拡張する。
ようやくジャックの根元まで掘れた。
ジャック除去完了。しかしこれではバックパネルが付けれない。
ネジ穴土台部分を端材で製作、貼り付け。
斜めのジャック部分も掘り具合が足りていなかったので
少し深く掘り、紙やすりで再研磨。
新品のポットとジャックに交換。
ようやくアクセスが容易な構造になった…
といってもクリアランスは超ギリギリ。
正直、2021年9月~10月はROTERに捧げていたと言っても
過言ではない。多弦に於いての構造的限界値、許容値、無茶が効くバランス、かなりの情報が得られた。
続く。