18.「わたし」と母と、金柑の空。

夕暮れの空が
ぽやんと明るい。
ふっと頭に浮かんだのは
「金柑の空」。

ちょっとだけ体調が優れなくて
本当になんでもないくらい、
ちょっとだけだったんだけど…

田舎から母が遊びに来てくれた。

ご飯を作ってくれて
一緒に食べる。
一緒にテレビを見る。おしゃべりする。

夜はなんとなく、
わたしが生まれた日の話を聞いた。

わたしの母は優しい。
それに、かわいい人。
二重の目はわたしと違うけど
でも、友達に似てるねと言われて嬉しかった。

ふと思う。

いつまで、
この人と一緒にいられるのだろうか。
いつまで、
わたしの両親は生きていてくれるのだろう。

わたしは遅くできた子どもだから。
本当はもう2人とも、孫がいてもおかしくないんだ。
おじいちゃんとおばあちゃんでも、おかしくないんだ。

そのいつかが、ふと怖くなる。
一緒にいながらにして
愛しくて悲しくなる。

夕方、母を送るため
一緒に駅まで歩く。
ずっといてほしくなるけど
父のそばにもいてほしい人なんだ。

オレンジ色の夕焼け。
ぽやんと明るくて
ちょっとまぶしいくらい。

"金柑の空"
言葉だけが浮かんできたから、
「金柑ってどんな味だっけ?」
と、母にたずねる。

"甘酸っぱさと、ほろ苦さと…"

あぁ、まさに今の気持ちにぴったりだわ。

その中で母に手を振った。
ありがとうね。元気でね。

オレンジ色を連れて電車が走っていく。

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